言語化するのが難しいけれど、読み手に強い読後感を残す物語であることは間違いありません
物語の山場の中では特に印象に残ったのは、序盤から何度も死ぬ少女、中盤明らかになる主人公の正体、終盤再開する少女と主人公の3つです。最初はドン引きするくらい悍ましいものを感じた少女の死も、読み進めていく中で「慣れていく」というのは、後味の悪さを残します。そして、途中からプレイヤーにほのめかされていた主人公の正体が明らかになる瞬間、「ああやはり」と苦いものを感じさせ、これまた後味の悪さを残します。
しかし物語全体は、淡々と少女との日々を描いていきます。そうして行く中で作られた主人公との思い出が後半に生きていくのです。最後の最後、少女が自分の大切なものを自ら断ち切らねばならないシーンは、とても痛ましく読んでいて辛いものでした。
この作品は、なぜそうなったのかという部分を徹底的に削ぎ落としています。神様の存在、少女がなぜそのような境遇に陥ったのか、というのは明らかにされません。読み手として、この作品の神様は随分とフザケた野郎だと思いましたが、それを云々するのはこの物語の本質ではありません。プレイする上でユーザーが当然感じるであろうそうした感情と、主人公たちの間には明確なズレがあります。しかしそのズレがあったとしても、主人公の思い、少女の思いにプレイヤーが共感することはまた可能です。
物語のラスト、目覚めた彼にかけられた声は誰のものか。世界はまた蘇ったのか。結局全ては何だったのか。何の意味があったのか。
それらに答えが返ってくることはありません。プレイヤーとしては、こういった点が非常に気になるのですが、それを描くのは蛇足であり、彼らの物語には不要なのでしょう。それは理解できるけれども、しかし、非常にもどかしく思う気持ちを抱くのもまた事実。
(関係ない話だけど、この作品はこれ単体である意味完結しているという意味で、「Planetarian ちいさなほしのゆめ」と似ているな、と感じます。関連小説が存在しつつも、向こうがあれだけで完成しているな、と思う辺り、この作品もこれだけに止めておくのはある意味正解なのかもしれません)
いずれにせよ、この物語がプレイヤーに強い印象を与えるのは間違いありません。