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yatomaさんの夢現Re:Masterの長文感想

ユーザー
yatoma
ゲーム
夢現Re:Master
ブランド
工画堂スタジオ
得点
45
参照数
374

一言コメント

共通ルートのライターの力不足で大人を書けていないのと、職場を舞台にしているはずなのに仕事をしているのは全ルートで一人だけ。今後このライターがメインであるなら、学園物でキャラゲー以外駄作になるのが目に見える。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前作は専門的だったので話を詰めるのが難しかったという言い訳が可能だったし、なおが最高に可愛いのでキャラゲーと言い張ることは可能だったのでまだ許せた。が、今回自分の土俵に引き込んだくせに、前作同様テーマとシナリオ展開が関係ないものになるのは何がしたかったのか分からない。


共通ルートの出来が、今までプレイしたゲームの中で上位に入るほどの駄目さ。仕事の描写の無さ、変人キャラを書こうとして単なる屑人間になったさき、納期が迫っている職場の更に新人の主人公なのに全キャラ紹介し終えたら日数経過が飛び飛びになる、言葉が足りなくての誤解が多々あったり、部活動と言っても過言では無い日常。
 中でもさきの屑人間さが酷過ぎる。正しい事を言っている風に中身のない暴言を吐きまくり、知った風なことを言って自分だけ我儘を貫いたり、好きになる要素が皆無。作るものは凄い人、と言われてもプレイヤーは見ていない訳でフォローにもなっていない。ライターがさきルート担当のライターが嫌いで嫌がらせをしたとしか思えない出来。


ただ、さきルートで挽回した。
ただの暴言が、厳しいが相手の成長を想っての言葉となり、我儘がライターとしての意地となり、一般人や管理職には理解が難しいこだわり等があったが、それを含めても魅力的な頑固職人になった。
 シナリオも仕事の話が進み、新人ディレクターと変人ライターとの激しい衝突、それに伴い周りの人間含め全員が成長していく様は見ていて非常に面白いものになった。
何より、別のキャラクターの影が薄くならずに存在感を増した事は驚いた。それぞれの思惑で動いているが「ゲームを完成させる」という共通の目標はしっかりとあり、それに向かって着実に進んでいるのを感じられる非常に良いシナリオだった。このライターがメインであれば違った作品になったと思うのに非常に惜しい。


さき以外の個別は仕事はしていない


マリールート
テーマが飛び過ぎてある意味清々しい。
全てを捨てる恋。ニエ魔女になぞり、あいがマリーに名前を与えて運命を変える。
ほのかさんが万能キャラになり過ぎてはいたが、特に不満点も無く記憶に残る点も無いが普通に面白かった。
バッドエンドは演出で驚かされた。


ななルート
自分に自信のないななが、あいに好かれていることが誇れる事だと言ったシーンは感動したが、余韻に浸る間もなく急展開で薄れた。山場も借金苦の人間が銃を出し、みかげの姉への想いの描写が無いので茶番劇だった。
それと、買春を思わせるシーンが多かったが結局していなかったのは、ライターがそれを書くことから逃げたように思えた。
ただ、名前も売れていない声優の苦労は少し感じられた。なので、ニエ以外にも魔女とバナ子は新人でよかったと思うし、今後もそういうサブキャラは新人さんを積極的に起用しても良いと思う。今井麻美さん好きすぎでは?同じく好きだけど。


さきルート
 あいは、風邪の時などこころの心配をしていて、この会社に入った本当の意味を忘れずに持ち、軸がしっかりしていたので言動を理解しやすく感情移入しやすかった。
 こころとの関係も、必要以上に色んなものを背負い自分の前しか見えていなかったこころが、さきに言われ荷を下ろし、周りを見渡す余裕ができた時に、不意にお茶を渡され無意識に「ありがとう」と言いてしまうかの様な自然な流れで関係が修復していていて美しかった。
 さきとの恋愛は儚いではなく淡い?落ち着いた印象を受けた。
あいはさきのことを意識しているのにさきからは意識されていないことに不満、不安を抱いていたり初々しい面も良かったし、あいからの積極的な欲求にさきが過剰に反応しない所も大人を感じた。
告白シーンは、互いに知っていたというのはこそばゆいというか、ニヤニヤしか出来ない。素晴らしい。
 その他にも、新しいキャラの声を誰にするかという話でななになるのは解っていたが、直前にニエ役のオーディションに落ちたという点を思い出させ、どうしてもななじゃなければいけない理由が無ければ申し訳が立たないと考えるのは、あい自身アシスタントディレクターという役職が自分でなければならない理由を未だ見つけられていない為の視点からで意思が存在しているかのように思わされた。

こころは、自分は頑張って完璧なものを作ろうとしているのに、さきの様な真面目に見えない態度にヤキモキして罵倒する事しか出来ずに、結果最悪な展開になりかけてしまってそこで自分の行いに気付くが、一人じゃどうする事も出来なかったが、下っ端であるあいの元にさきが居る事をいいことに相談を持ち掛け、そこで相手の言葉の聞くべき所と流す所を学び、自分の成長に使える所だけ盗んで成長していく。新人が故の真っ直ぐさと変人の捻くれ具合が重なって、常時戦場だったので心休まるシーンが少なかったが、それでも最後に成長しているのを見るとスッキリできた。

悪い点は、ナレーションがギャグ、選択肢が意味不明、SEが古いという事。
が、これはキャラクターに関係せずに全てプレイヤーからの視点の話であり、そう考えると余計この世界観が完成されたものに感じる。
余りに書きたいことが多すぎて纏まらないが素晴らしいシナリオであることは間違いない。


こころルート
自分で共通ルート書いているのだから伏線を張ればいいのにそれをせず、今までの積み重ねを無視して勝手に別の設定を持ち出してきてそれで〆ているのだから呆れる。
あいがニエっぽいのはまだ解る。が、こころは?ニエっぽいのも第三者からの視点で、それぞれのルートで一回あった程度でしかない。
 あいとこころの関係も、罵詈雑言を浴びさせられながら認められて、ちょっとずつ距離を詰めて行くのかと思ったら、ニエ魔女で一気に昔のように元通り。何もない。
そして、このルートのさきは見るに堪えない。さきルートを先にやっているのだから尚更。
ただ、ハッピーエンドは嫌いじゃないので、終わり良ければ総て良し的展開は、後から展開を思い返したりしないような浅いものなら許せる。


総評は、共通で駄作だったがさきルートだけで点数を叩き出せた作品。職場がテーマに惹かれるなら、このルートだけを目当てに買ってもいいレベル。
何故か今までで一番メモ書きが多かった作品で、ライター的に言えば49k。
2週目以降一回も共通ルートを見ていないが、見なくてもいい程度の酷さ。
本当にライターが逆だったら良作になっていたと思うのだけれど。
共通ルートのライターは、学園物のキャラゲーだけ書いていて欲しい。それならきっと良作を書けると思う。