1280円(税込)で買える。それはつまり…
短い・浅い・物足りない。そんな批判を1280円(税込)にするのも阿呆らしいが……
「くっ殺」だけ言えばいいわけじゃあないんだよ。
「くっ殺」に込められたものとは、貞淑と高潔心への執着と、その汚辱と、そのために拗らせた性欲のチラ見えである。
敗北とその後の屈辱体験を確信した折に発せられる言葉でしかありえないのであり、かつそれだからこそ良い。絶望的状況でも我が身の清らかさに縋り付こうとする様の愛らしさ。それが穢される瞬間に来る強烈なシャーデンフロイデ。「何ちょっと性体験期待しちゃってん可愛いじゃん」という感じ。それが「くっ殺」の魅力じゃないかと宣う僕は原理主義的でしょうか。
ではとりあえず上にあげたものが「くっ殺」のキモであるとして、本作はそれを描いていたか。…冒頭だけ。
…だって「くっ殺」を言わされる状況が毎日あっちゃ「くっ殺」の良さもへったくれもないでしょう? 「くっ殺」が口から零れる瞬間とは後にも先にも一度きり(誤解ならその限りでないが)であるはず。つまり『くっころでいず』とは、『「くっ殺」的日々』とは相容れない言葉の組み合わせなのだ。
そして本作はこの矛盾したシチュエーションを無理やりに描こうとして、うまくいっていない。なんで「くっ殺」が女騎士の口癖になっちゃってんだよ。「くっ殺」は一度きりのセリフだからこそ光るんだよ。しかも何度も口にする浅はかな様は、女騎士というクソ真面目・貞淑・高潔の体現者と明らかに相性が悪いはずである。
現世界転生モノとしても物足りない。元居た世界と現世界との違いに可愛らしくあたふたしながら健気に真面目に適応していこうとする様、そしてそんな女騎士を手助けする主人公に惹かれていく過程についてはもっとちゃんと描いてほしかった。秋葉原が生活の中心地だから甲冑着てても目立たん、ってそんなんで適応の過程を省略しないでほしい。
良かった点は美麗なイラストでしかも立ち絵がゆらゆら動くところ。冒頭がちゃんと「くっ殺」してるけどそれは最低限のノルマでしょう。