盲を啓く男が、盲目的に女を求める。理性と情動の超速メリーゴーランドに君はついてこれるか!?
タイトルはド直球にアホアホビッチもの抜きゲを思わせるが、それだけじゃないんだなこれが…
それ「だけ」じゃない、というのがミソだ。本作は啓蒙の話だ。(デブ気味だが)秀才で理性的な主人公がアホアホな女の子の成績を伸ばす傍らでムフフ…という筋書きだ。だがムフフ的展開に劣らず、基礎から学習手引きしていき成績が向上していく様、端的にいえば『ドラゴン桜』的な成長物語としても丁寧に描かれている。
それ自体はいいんですよ。感心するような学習戦略とひたむきな勉学姿勢が結果を実らせるストーリーは熱かった。でもねぇ…凄まじい愛欲が爆発するエロシーンが合間という合間に欠かさず入れこまれていて、読む側としてはもう目がくらむばかり。切り替わり多すぎんか早すぎんかと。キリっとした態度で勉学に打ち込んだ直後にドロドロに肉体を絡ませる、そして事が済めばまた勉学へ打ち込む二人を観て「いやひと息つかせてくれや…」と思ったのが正直なところだ。しかし何故か高速でめくりめく展開についていけなくはないのが不思議であり、これは性欲過多ビッチというヒロイン設定があるからだろう、多分。
理性と情動、相反するところが奇妙にもストーリー的に両立共存している様は一見の価値がある。また、Hシーン自体もクッソエロいので“活用”にも事欠かないでしょう。行為中用のBGMが印象的で、気味よいビートがアホアホビッチ娘のセックス姿勢とマッチしている。
要するに、まあまあオススメですよ。
だが、気になる点もいくつか。最も、難癖に近いのでさっと読み流してもらえれば。
・ストーリーが重いんだよ!
ド直球なタイトル通りに自分もバカになって致したい…という期待は終盤に裏切られる。
主人公とヒロインの悲しい過去が明かされ互いが救い手となる、というのはエロゲのシナリオ的には常道も常道なのだが、プレイヤーはそんな泣きゲシナリオを望んでいますか?と。しかもこのタイトルで!
こんな重いシナリオじゃあ気分は覚めますわチンは萎みますわ、と言いたい。シナリオ批判、というよりはプレイ検討者への注意分として受け取ってほしい。
・そんなに上手くいきますか…?
人間心理は非合理である。これが啓蒙主義がぶつかった限界であった。「過去は変えられない」と合理的に切り捨てることは出来ず、一度心寄せた相手の所業が如何に疑わしくとも期待してしまう。
だが啓蒙化されたちーちゃんは一気に心変わり出来てしまった。ここがどうしても引っかかる。
これはもう完全に難癖だ。確かに物語的には齟齬なく展開しているよ。プレイヤー的にも、気持ちがいいよ。バカな女の子を改心させてやりたいという、風俗嬢説教おじさんマインドが報われて、気分がいいよ。
でも、実際そんな上手く行くか…?
フィクションに現実らしさを求めるのは時にナンセンスなのは承知しているが、どうしてもこのもどかしさを伝えておきたかったです。
それともう一点。ちーちゃん改心の流れで二人の家族問題の解決も描いていたが、これは良くないな。それとこれとは全くの別問題でしょう。
特に主人公サイドの描写が良くない。かつて狡猾な策略で自分を陥れた義母と、主人公は自ら仲を修復しエンディング、という展開はちょっと都合良すぎでしょう矛盾があるでしょう。だって、危険な義母のいる家族と身を離すという決断は、理性的推論の結果下したものであり、この理性こそが主人公の依って立つところなのでしょう? この理性があったから、ちーちゃんを改心させられたのでしょう? 本作のシナリオの根幹には主人公の頼れる理性が欠かせなかったのであって、これを損なってはいけないのでは。
では何故ラストで損なった? どうして、家族として信じるに足りない義母とよりを戻した? キミの理性は「こいつはイカン」と囁いたのでしょう? そしてキミはその理性を大切にして生きてきたのでしょう? この理性の囁きに反した行動は、ちーちゃんの改心並みの大事だ。もう少し描写を入れるべきだったのでは。