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waravimさんの冬のポラリスの長文感想

ユーザー
waravim
ゲーム
冬のポラリス
ブランド
ステージ☆なな
得点
82
参照数
119

一言コメント

一見関係ない二つの世界の物語を交互に読み進めていく形式。魅力的な世界観が好印象。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

WinterPolarisは謎の奇病により人類が滅びた世界の物語。
奇病発生のくだりがコロナウイルスを少し彷彿とさせた。とはいえ、奇病は「人が消える」というものでファンタジー色が強い。主人公やヒロインのツバキは不死者であったために、この奇病を乗り越える。

不死者は基本的には老いず、死なないものの死んだときに記憶の混乱が起こることがあるという設定。
主人公はかつてヒエロニムスという名前で、ツバキと共に旅をしていたが、途中でツバキと決別し、何らかの理由で記憶を失い現代に至った模様。

不死者は不死者であることを忘れてしまった場合、「試しに死んでみる」ことは普通しないため、数十年もの時を無為に過ごすことになってしまうことがある。ヒエロニムスは記憶の混乱を避けるために、保険として記憶を書き残し、不死者のパートナーを探す中でかつてツバキに出会っていたのであった。

ツバキとヒエロニムスは互いを愛していたものの、それを言葉にすることができず、最終的には不死者の中の考えのひとつである、過去に囚われることを良しとしない考えからヒエロニムスの方からツバキと決別をする。

舞台は現代に戻り、ツバキはヒエロニムスの残したメッセージを同一人物である主人公に読みとかせ、ヒエロニムスがツバキを愛していたことを知るも、ヒエロニムスであった記憶を失った主人公からツバキは去っていく。

Sweeper Swimmerは現代文明が滅びた後の世界のお話。海で拾った女の子と海に漂うコーラの瓶の中に入っている手紙の場所を目指すお話。最初は関連が分からないが、このお話は、winter polarisにおいて人類が滅び、世界が不死者のみの世界になった後のお話であることが終盤に明らかになる。

そして瓶を流していたのは、主人公を想うツバキであるが、実は主人公もWinter Polarisの後に瓶を流していた。Sweeper Swimmerの主人公二人の手によってその手紙が届けられ、二人が再会することで物語は終わる。


星を便りに自らの記憶を残し数100年のスケールで描かれる世界観は魅力的で思わず入り込んでしまう内容であった。ねこの伝統であるアセットの使いまわしも、この価格帯では考えられない演出の充実を助けている。

そういえば赤いペンキで描かれた「ここまで」の意味がよく分からなかったように思える。