傑作のなり損ねに思える。テーマ的には難しいだろうがもう少し清涼感のあるEDならば『はつゆきさくら』なんかにも並ぶような作品になっていたように思える。発売一ヶ月後ボイスは必聴。
魔女こいにっきを読むありす=高齢者となって桜井たくみを忘れ、自分を学園生だと思い込んでいる。
桜井たくみが夜な夜なナンパを繰り返す=時系列的には高齢者ありすと同じ。
姉妹に虐められるありす=若かったころのありす。桜井たくみに出会う。
過去の話も混じるせいでかなり時系列的には複雑な気もする。絵が可愛いのと、桜井たくみの「物語」を重視する強烈なキャラクターが相まって読み進めることができたが、個々のストーリーはやや平凡に感じてしまう。
TRUE END1は恋「物語」がハッピーエンドで終わったとしてもその先に待つのは、老いとともに次第に色あせていく日常。「物語」はどこに行ってしまったのか。それは遠くに行ってしまっただけでそこにあるという話だろうか。現実においては、エロゲープレイヤーはどんどんと高齢化してくわけだが、その老いというものは悲しいものだが、かつてあった輝く物語が失われたわけではない。メタ的に見るとそういう話にも思える。
新島作品に通底する「現実を受け入れることで、前に進む」というテーマがよく現れたエンドという印象。
TRUE END2は「魔女こいにっき」の真の作者であるアリスの話。アリスは朽ちていく現実を受け入れたありすとは対照的に、物語の読み手として永遠を求める。しかし、アリスが最後には永遠を求める自分自身を語りだしたことによって、物語の語り手となる、ジャバウォックはそのような書き手アリスとしての態度を称揚する。
なんとも哲学的なエンドにも思えるが、これはある種ライター新島の感情が投影されているキャラクターなのだろうか。エロゲーという輝く物語を自ら紡ぐことによって、永遠を求める心情が少しでも昇華される。新島はそんなことを思ってエロゲーを作っているのかもしれない(それゆえに、新島はどこか「永遠」を信じきれないという作品を作っているようにも思える。)
Vita版ではもう少しわかりやすく「物語の終わり」を作っているようだ。
発売一ヶ月後ボイスはメタ的に次々と新しい女の子を「攻略」するプレイヤーをアリスが揶揄するという内容。この作品のメタ性を強化する面白い試みだなと思った。
桜井たくみの性格に色々とケチがついているが、あの態度はまさにエロゲプレイヤーそのものであるともいえるだろう。「永遠に愛する死んでも離さない 君を」「一生一度の恋だ ブラボー!君のいない世界なんて ありえない」などといった次の月にはまた新しい物語を求めているのだ。その点でこの性格についてはかえって面白く読むことができた。
まあこの絵で萌えゲーを期待したのにもかかわらず、がっつりメタをやられては、期待外れというのはわからなくはない。逆に狗神煌先生の可愛い絵がなければプレイするモチベが保てない内容ではあると思う。
永遠の魔法使いはこの作品のテーマが現れた名曲だと思うのだが、なんかしょうもない部分のEDに使われていて残念だった。