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violinsさんの闇を奔る刃の煌きの長文感想

ユーザー
violins
ゲーム
闇を奔る刃の煌き
ブランド
影法師
得点
81
参照数
231

一言コメント

前作「流れ落ちる調べに乗せて」の前日譚(ニ世代前)。前作同様魅力あるキャラから 平易且つ和を匂わすテキスト、キャラを生かすシナリオ運びまで「良さ」をしっかり残しながら、明治維新という時代の波が非常にうまく組み込まれている。その波に抗う者から躱す者、立ち止まる者から乗りこなす者まで前作以上に「その時代こそ」の色が出ている。そしてプレイ時間10hに込められたシナリオの密度がまたいいですね。まぁあとがきにあるようにいちゃラブその他(特に弥生!めっちゃかわいいのに恋愛話がサクッと…)で物足りなさもあるんですが、それでも素直に面白かった!と言える作品です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

1:34/第一話
2:38/第二話
2:09/第三話
3:43/第四話

計:10時間4分

BGM数:17曲(前作からの流用)+4曲(新規)
CG数(差分含まず、おまけ画像含む):96枚
ボイスなし。選択肢なしの一本道
前作はキャラに色が付いていなかったが、今作は彩色。
前作は主人公が4人+α(一人称の集まり)だったが、今作は基本的に三人称視点(神の目)
であり且つマルチサイトは多め。
 (※地の文で各キャラの内面に踏み込んでいるって意味です。例えば地の文で「蛍は~」
 「私は~」の両方が出てくるため、厳密には神の目とは言えないようですが)
 (しかしノベルゲー、つまり絵があるぶん視点の混乱は少ないのではないでしょうか)
パッチver1.2はセーブデータの互換性がないので注意。



今作は単体でも楽しめるようになってますが、前日譚とはいえ「流れ落ちる~(以下、流落)」が
基板としてあることを前提に作られたものなので、やはりそちらからやったほうが楽しめるかと。
単純にプレイ時間で比較すればコスパ的に「流落」の方が上ですし。
(前作は1500円26h、今作は1000円10h。Amazonでも買えます)
・・・と、他の人の感想を漁った所、意見はわかれますね
謎の残り具合では「流落」の方が少ないが、今作の方が評価が高いのはどんでん返しがある故でしょう。
嘘偽りなく「単体でも楽しめる」つくりになってはいるので、気になった方からどうぞ。



剛気で人情厚く、人を見る目があり、その気になれば俯瞰的に物事を考えられ、
更に剣技に秀でた師範代である、という稀に見る熱い「漢」重蔵が主人公。
頭脳面でその人望厚い彼ををサポートするのは、重蔵に負けず劣らずの妻:蛍。
この二人がメインとなるのですが、両者の「強さ」が気持ちいい。
「身分」を越えて、駆け足どころじゃない数段飛びで成り上がってくれますし。

シナリオは、明治維新という荒波に彼らはじめ主要キャラたちが直接間接問わず何らかの
形で巻き込まれる。バトルあり、友情あり、恋愛あり、涙ありの物語。
その維新の波に加え、舞台である「町」特有の「呪い」(超常現象・異能あり)が忍び寄る。
(この「呪い」の由来などの根本に関しては「流落」で描かれています。)


どこにでもいる「ふつー」の人が物語を大きく波打たせるってのは難しいことで、やはり
ひと癖もふた癖もある(魅力的な)キャラ達が活躍するが、「記号」っぽさは感じないんですよね。
定型句を言わないからっていうのもひとつでしょうが、「記号」を感じる時は「萌えさせよう^2」
というのが気に障るのでしょうか。「かわええ」と「うざっ」の境目ってどこだろう。
閑話休題。
特徴あるキャラ達がその時代なりの行動を起こすということに加え、どんでん返しも控えています。
ギャアァァァァ━━━━━━(゚Д゚|||)━━━━━━!!!!!!
この顔文字はそんなに誇張でもないんですよ、はい。
衝撃度で言えば、間違いなく今作>>前作だと思います。
ほんと、ぼくたちは人間だよなぁ‥‥。


また、両作こなしても謎として残された部分・語られなかった部分はあります。
例えば今作で名前に傍点が振られていたあのお方。今作だけやった方にはなぜ傍点が付いて
いるのか全くわからないはずです。
そして「流落」をプレイするとあのお方に傍点が付いている理由はわかるが、「なにをして」
「この状態」にあるのかは(ある程度予想はつくが)不明のまま(のはず)。
設定資料集で明かされるのかもしれません。



以下、だべり。
プロットまで作ったのに陽の目を見ないであろう(マスターメインの!!!)「流落」の
幻の後日談(あとがき参照)といい、今作の弥生たちといい、好みのキャラが多いから是非
キャラ萌えエロゲ作ってくれればなぁなんて叶わぬ希望を抱いています。
蛍はじめ「強さ」的にシナリオでの牽引・相乗が薄くなりがちなキャラゲーとなると魅力が
減りそうな気もしますが、それでも。それでも!
下手なキャラゲーよりずっと「好き」って言えるキャラが多いこと多いこと。
弥生とひょろ旦那さまとの初々しい馴れ初めとか超見たいのに‥‥。

次回以降はは設定資料集・完全新作(1年後?そのつなぎとして小説)との流れになるようですが、
とりあえず追いかけていくサークルに出会えました。次が楽しみです。