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violinsさんの流れ落ちる調べに乗せての長文感想

ユーザー
violins
ゲーム
流れ落ちる調べに乗せて
ブランド
影法師
得点
81
参照数
236

一言コメント

ときは(おそらく)日露戦争から4年後、ところは啓蒙の光と洋式が徐に根づきつつある地方都市。服装・行動・思考など「西欧・合理性」が広がるなか、ふと目を凝らすと闇に陰には異形・悪霊・妖・異能・・・が蠢く世界。単に憧憬と畏怖を感じさせる和の世界と侮るなかれ。四人+一人の視点で紡がれる絡みほどきの物語は彼らを巻き込みはせよ 決して操りはせず、各々の心情・思考に沿ったかたちで語られ、点が線を、線が綾なしていく。精神的強さに頼りすぎなきらいはあるしド派手で目を引く戦闘にはなっていないが、個々の能力の相性と特性を活かした異能バトルもまた見所のひとつとなっている‥か。それはともかくキャラが良い。属性先取な二次元キャラに嫌気がさしてるときほど、人間味あるキャラに惹かれていくものですね。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

0:53/一章一幕 0:55/二幕 1:21/三幕 1:30/四幕
1:07/二章一幕 1:17/二幕 1:25/三幕 1:40/四幕
1:24/三章一幕 1:13/二幕 1:17/三幕 1:06/四幕
1:10/四章一幕 1:16/二幕 1:10/三幕 2:05/四幕
0:04/零章一幕 0:04/二幕 0:10/三幕 0:03/四幕 0:12/五幕
4:07/終章

計:25時間29分

CG数(差分含まず):41枚
BGM数:18曲(おそらく全曲オリジナル)
ボイスなし


一応基礎情報も軽く書きますが、詳しいのがOHPに全部載っています。
http://www.kagehoushi.org/1st/index.html

各章ごとに主人公が異なり(4人、男女二人ずつ)、
零章の二幕以降は一~四章の◯幕を全て終えることで開放される。(零章一幕は序章)

ニ章をずら~とやって他の章・・・も可能だし、各章のひと幕ごとにやるなども可。
選択肢なしの実質一本道構造。
もちろん「終章」はほか全て終えてからの〆です。


立ち絵の代わりに、花札のような縦長の長方形に顔・身体を描いたサムネ表示。
差分込で各キャラ5~10種強ほど。
サムネあるキャラは主人公たち含め10以上。
これがコロコロ動くことにより躍動感も出ているのが良いですね。



粗筋は、どの主人公も何らかの形で「異能」と関わりを持っており、ある者は異能者集団に
組みするひとりとして日常的にそれを駆使し、またある者はいつの間にか使えるようになった
「それ」を訝しみつつ学校生活を送る。
物語が始まると、自ら「敵」と接触・対峙する者もあれば、知らず知らずにどっぷりと
巻き込まれて否応なく立ち向かわざるをえない者もいる。

一幕から三幕までは(「異能」と関わりの低い「日常」を除き)基本的にバラバラの「点・線」
として物語が進むが、四幕で「綾」としての繋がりが強くなり、終幕では皆が同じ土俵に立つ。
この「線」となり「蜘蛛の巣」となる過程で、各キャラが無理をしていないことが本作の
大きな魅力となっている。
つまり物語に動かされていない(いるように感じられない)し、キャラの集いがわりかし自然。
プロットがしっかり練られていたんでしょう。
後半になると(バトルよりも)キャラの掛け合い・論破し合いについて「できすぎ感」って
いうのは一部覚えたりしましたが、それでもキャラのブレが少ない。そしてキャラの魅力が落ちない。
the日本男子の兄貴は最後まで妹のために「兄貴」してますし。かっけぇ。


それでも疑問・矛盾・「意志の強さ」押しという、弱いご都合主義があったりもします。
(ぼかして書くと、疑問は、知悉の彼女の「目覚め」は何を通してか。
矛盾は、依代に意識を向けながらわんこの相手ができたのか。くらいかな)
「意志の強さ」に関しては、意図的な状況の追い込みと「火事場」があるので大分許容しやすい。


バトルについては効果音と剣・拳などの軌跡(?)の絵が中心。
要所で一枚絵はあるが、必殺技といった大技は少なめ。
この手の作品に触れた機会が少ないのであまり説得力がないですが、想像力に乏しい自分でも動作が
よくわかるテキストになっている。
偶に「よくわからんが、なんかすげー戦いしてんだな」って作品があるけど、本作は読んでて
イメージしやすいですね。だからのめり込む。
特に自身の「異能」の使い方がまだよく分からない・手探りなりの戦いというのもあって、
一章四幕のアレは非常に熱かった。
こういう異能バトルもので、応用性のある能力ってすごく良いですね。ヒソカ(H×H)然り。