ErogameScape -エロゲー批評空間-

throughputさんの金色ラブリッチェの長文感想

ユーザー
throughput
ゲーム
金色ラブリッチェ
ブランド
SAGA PLANETS
得点
79
参照数
368

一言コメント

ヒロイン達から見て主人公の「かっこいい」ポイントは何処だったのか・・・

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作でひときわ出番の多いワードのひとつに「かっこいい」があります。
どのヒロイン達のシナリオにも、この「かっこいい」という単語が一種のキーワードとして出てきます。

「かっこいいとは?」

この問いは作中でもたびたび登場します。
というのも、主人公の央路くんは過去にしでかした野球部のいざこざで自分のことを「かっこ悪い」思っています。
この時点で私はピンときて、一種の少年ジ〇ンプ的な王道パターンを予想しました。

「かっこいい主人公にヒロインが惚れてしまう」

例えばですが、普段はかっこ悪い(もしくはかっこ悪いと思い込んでる)主人公が
無意識ないし意識的にかっこいい行動を起こして、その姿にヒロインが惚れてしまう。
ギャルゲではほぼ鉄則といえる恋愛パターンですよね。

では、本作はどうだったか。いざ振り返ってみると、私の目にはこう映りました。

「主人公はかっこいい・・・のか・・・これ??」でした。


本作の主人公である央路くんの行動パターンを振り返ります。

ヒロインが蜂からさされそうになるところを手のひらでガード。
社交ダンスを踊れるように陰で練習していた。
病院からお姫様だっこで担いで学校の屋上まで連れていってくれた。

あげるとキリがありませんが、ではこれらの行動がヒロイン達から見てかっこいいポイントだったのか。

否。そうではないように感じました。

というのも、どのヒロイン達に共通で言える「主人公のかっこいいポイント」というのが
”昔野球部でやらかしたいざこざのことが「かっこいい」”
”少年時代の主人公との思いでが「かっこいい」”
のどちらかなんですよ。

何が言いたいかというと、先にも言った通り
主人公はヒロインから「このひと、かっこいいわ・・・ポッ///」と思われてなんぼなんですよ。
この工程がないとヒロインが何故惚れて、何故恋に落ちたのかが見えなくなる。
それと同時に、プレイヤーが主人公もしくはヒロインに対しての「思い入れ」だったり「感情移入」が出来なくなると思うんです。

なので、この手のギャルゲは必ずと言っていいほど主人公の「かっこいいポイント」が
攻略途中にひとつは入ってるものなんです。
そしてそれは、ヒロインと仲良くなる途中の行動である。つまり、ゲームの中では現在進行形である必要があるんですね。

では、先ほどの””で囲った主人公のかっこいいポイントはどうだったか。

すべては「過去」の出来事なんですよ。
つまり、央路くんの過去が「かっこいい」。

ヒロイン達はことあるごとに「央路は悪くない。かっこよかったよ」と励ますセリフが随所に出てきます。つまりは過去のこと。
私も「あれ?」と疑問を持たなければ、このことに気づかずに普通にスルーしてたと思います。
ヒロイン達の央路くんをよいしょして持ちあげるテキストが多すぎて、違和感を感じずにはいられませんでした。

そして、その後に何かしら現在進行形の「かっこいい」ポイントが出てくるのかと期待していたのですがそれが出て来ず。。。
確かに、蜂からかばってくれて「きゃあかっこいい!」と思ったかもしれませんよ。
ただ、ヒロイン達は何故か主人公とのキャンプ時代の思い出を振り返って「あの時の央路はかっこよかった」だとか
野球部の件も「央路が悪いことをしたとは思わない。結果はどうであれ央路はかっこいいことをしたよ」だとかばかりで
少々お腹いっぱいになってしまったのも事実。
そして現在進行形でかっこいい行動をとらなかった央路くんはとにかくマイナスです。
せっかくの神シナリオだった理亜ルートにも悪影響を与えているように思えました。




主人公の評価はこのような感じでしたが、
では、本作におけるかっこいいと思えるポイントは一切なかったのか。

それもまた否です。
本作ではとにかくヒロイン達が「かっこいい」のです。

ここまで書いといて自分も何が言いたいのか混乱してきましたが、最後までクリアした方ならわかってくれると信じています。
とにかくヒロインがかっこいい。

理亜はもちろん言わずともがな。そのセリフひとつひとつがE.YAZAWAの生きる伝説のようなカリスマ性にあふれた文章です。
シルヴィも一度こう!と決めたら即断即決。行動力のかたまりのような人間です。
玲奈はコミュ力に優れていて、とにかく場を和ませたり、あいだを取り持ってくれたりという面でとてもかっこいい。
エルも騎士やフェンシングというアドバンテージがあってとにかくかっこいい。

何故ヒロイン達は主人公の事を好きになれたのかの議論は堂々巡りになるため、いったん置いておくとして、
個々の性格、キャラ付け設定、ヒロイン説明文章において、何かしらヒロイン達にはかっこいいところがありました。

あとは、意外と笑えるシーンもあったりしたので、バランスは取れてた作品だと思います。
もちろん、声優さんの演技については文句なしの高クオリティ。

なので、もう少し主人公がかっこよければ、更なる高評価を狙えたのになぁとある意味残念に思い、
作品に対する愛の鞭を入れるべく、主人公についてはこういった評価を書かせていただきました。
#少々辛口だったかな??