かにしのとは別の意味で、PULLTOPを代表する作品になったと思う。本作の凄いところは「部活・恋愛・勉強」と、我々からすると過ぎ去りし過去である「青春」をこの一本で全て体験出来ることである。
ここ数年、PULLTOPは製作スタッフの退職・移動が目立っていました。
そんな中で、いちPULLTOPユーザとして、今後PULLTOPはどうなってしまうのか冷や冷やしていましたが、ある意味ではそういったことが新たな起爆剤になったんでしょうかね。
本作は、本当にプレイしていて面白かった。
というよりも、かにしの以来、良くて良作レベル止まりだった作品に、ようやっとかにしのと肩を並べて歩けるような作品が出てきたなといった印象です。
ホント、こんな隠し玉よく出してくれたよって感じですw
なんと言ってもシナリオが素晴らしいんですが、それを抱擁する形で、「作品全体の雰囲気」がとても素晴らしいんです。
この「作品全体の雰囲気」というのがとどのつまり、「青春」なんです。
最初は廃部寸前の弱小ソアリング部を立て直すために、様々な困難に立ち向かっていくんですが、
そこから超留年生の天音先輩のソアリングにかける思いを主人公やヒロイン達が知ることで
「自分達で作った翼でモーニンググローリーを飛んでみせる!」という夢に向かって一生懸命足掻いて、もがいていく。
ただこれだけなら、「部活の楽しさが分かる作品」で終わっていたんですが、
そこに恋愛描写が上手い具合にマッチングしていきます。
同じ共通の目標を持った部活の仲間同士が互いに引かれていき、恋愛に発展する。
まぁ、エロゲなのでこれがメインの一つでもあるんですが、「部活と恋愛」だけではまだ印象が薄い。
ここに、「勉強」が入ってくるんですよ本作では。
学生の本分は勉学に励むことなので、中間テストのためにテスト勉強を皆でする訳ですが、こんなのは他のエロゲでもありがちな描写です。
ただ、ソアリング部のメンバーは、先の目標の為にテスト期間中で部活動が禁止になっても
こっそりと部室であるガレージに集まって、グライダーの作成を続けるんですね。
この3つが重なることで、本作の登場人物たちは物凄い「青春」を謳歌しているんです。
私も、高校の頃に3年間テニス部に所属していましたが、テスト前の部活禁止期間になると、何故だか無性に打ちたくなって
部活の仲間と近くの公園のコートを借りて打ちに行ってたりしたので、このうずうずした気持ちが物凄く分かるんですよね。
それに、色々と主人公達はソアリング部のために停学ギリギリのことをやっちゃったりするんですが(シナリオによっては実際に停学になったりも)
そういった、若いうちだけ出来る、危ない橋を渡るような描写もあったりで、そういったのも余計に「青春」してるなぁと思えてくるんですよね。
中にはかなりご都合主義な展開があったり、終わり良ければ全て良しといった内容もありましたが(そういった展開が嫌いなユーザは注意が必要です)
まぁ、これを言い始めると全てのエロゲが出来なくなってしまうので(汗)
私としては、こういったハッピー展開、読後感が素晴らしく良い雰囲気で終わるといった作品が大好物ですのでこの点数にしました。
それと、評価の項目として、一点、「演出」を私は挙げたいと思います。
ストーリーのメインがグライダーで飛ぶことなんですが、初め、これどうやって表現しているんだろうと思っていたのですが
この、「グライダー」の演出がとても素晴らしかったです。(これは実際に見て見ないと分からないと思いますが。。。)
また、空の差分だけでもかなりの枚数があり、モーニンググローリーが出現する早朝から日の出にかけての
光の演出も、実際にはそれを見ることが出来なくても、あたかもそれを見たような気にさせるレベルの演出がとても素晴らしかった。
ただ、シナリオにはそこまで不満点は無いんですが、CGには少々ありまして
多少デッサンがおかしいものがあったなぁ。というのと、
結構CGを拡大表示するシーンが多かったため気付いたというか目に入ったのが
基井さんのCGの方は輪郭線の線が微妙にはみ出てる箇所が多々あったなぁと。
ただ、これは拡大した時かつ、普通にゲームしてる分には目に入らないでしょうから、私がちょっと気になったといっただけなんですがね。
(塗りはそこまで変わってはないかなと思いましたが、やはりグラフィック担当が退職したのが響いてるのかもしれません)
あとは、PULLTOPでは御馴染みの立ち絵がない魅力的なモブキャラが居なくなったことでしょうか。
寮のメンバーや生徒会長、幼馴染メンバー、飛岡など、立ち絵があるキャラの中だけでストーリーが終わっていました。
しろくまベルスターズのスタッフコメント等を見ると、立ち絵の無いモブキャラはどうやら朝妻Dが好きで
色々調整していたそうですが、こちらもやはり朝妻Dの退職が関係あるのかもしれません。
そこが「PULLTOPらしさ」という点では寂しくなったなと思いました。
でも、「新生PULLTOP」という意味ではホント良いスタートをきれたのかなと思います。
少しでも本作に興味を持たれた方はまず体験版をプレイしてみることをオススメします。
~~~以下、キャラ感想(ネタバレありのためクリアした方向けです)~~~
■小鳥
事故により、車椅子になった少女がグライダーに乗り飛ぶことで、一度は失った夢を見つける物語。
小鳥を乗せての初フライトは感動的だったし、何より告白シーンも印象強いです。
そもそも、小鳥ルートの力の入れようがハンパ無いですw
ここはPULLTOPらしくてある意味安心しましたね~。
ラストにかけての大ピンチ(グライダー隠されるわ、お袋さん倒れて小鳥は実家に帰るわ、ウインチ壊されるわw)
これを一つ一つ乗り越えてモーニンググローリーを飛ぶという目的を達成するのが読んでいて爽快でしたね。
また小鳥シナリオのクリア後は、「目的を達成する」という、いわゆる達成感が凄いシナリオでした。
これが青春、これぞ青春!といった感じでしょうか。回りの手助け感も感動的でした。
最後は若干ご都合主義でもあったと思いますが、先にも書いた通り、読後感が素晴らしく良かったので私はそこまで気になりませんでしたね。
小鳥シナリオ=さわやか青春ストーリーかつ熱血部活ものといった印象ですか。
先に書いた演出についても、小鳥シナリオはすごかったです。
グライダーが飛び立つシーンやモーニンググローリー、光の演出などキラリと光るものがあってそれらがとても印象に残っています。
これは、モーニンググローリーを見た小鳥と碧の「一生忘れることが出来ない・・・」と言ったセリフと同じモノをユーザにも見せたいという
スタッフの心から来てるのかなと思ったりしてます。
■あげは
あげはは、以外に初々しい部分があり、また幼馴染のリアル感がでてる良いキャラでした。
(あげはのフランク具合は賛否両論あると思いますが、私はこれくらいの方がリアルな幼馴染って感じがして丁度良かったです)
3回目のHシーンで、誰もいない部室の中、グライダーの話をしていたつもりが、グライダーの周りをぐるぐるまわっていって
自然と距離が近づいていく描写が、何かドラマチックで印象に残ってます。
あげはのトラウマについては、シナリオを読み進めるうちに薄々感づいてましたが
でも、碧を避けたり、何故グライダーの完成に固執していたかというあげはの気持ちも分かるので、私としてはあげはシナリオも良かったです。
あげはに好きと言ってもらえないのも、「これからも2人の物語は続く。To Be Continued・・・」という感じで工夫されていて面白かったですね。
湖の中から妖怪のごとくザパァっと出てくるシーンには大笑いしましたw
というのも、ほたるの誘惑。これ、ほたるシナリオが無いって若干発狂しかけましたよw
新生PULLTOPということで、FD出してくれないですかね~。
■亜沙&依瑠
個人的に、この二人は完全におまけシナリオなんだろうな~とくくってましたが
意外と双子シナリオについては尺が長く、作りもしっかりしてたことに驚きましたね。
亜沙シナリオでは、やはり入れ替わっての告白シーンが印象深いです。
それにしても、あそこまで自信ないキャラも珍しいですよねw
まぁ、周りが天才だったりお金持ちだったりしたら、比較され続ける側からするとそう思ってしまうのも仕方ないですか・・・
亜沙シナリオは依瑠シナリオと違い、理事長のからみが少なかったですが、これはもうちょっとあっても良かったのかなと思います。
例えば、理事長が「亜沙とのお付き合いは認めん~」みたいな(でも、理事長は優しい感じの人なのでそれは無いかw)
依瑠は逆に、自分で自分のことを天才と言ってしまう自信家で、まぁ、そこがとっても良かったんですが。
依瑠シナリオはそういった良いことは良い、悪いことは悪い、つまり無駄なことはしないたちという依瑠の性格から
青春とは何ぞや、青春を知らない人間が青春を見つけるというシナリオになっていて、これが印象に残ってます。
最終的には性格もかなり丸くなったしw
それにしても、依瑠シナリオは物凄いチートと呼べるくらい理事長パワーが発揮してましたねw
あと、主人公は飛ばずに、2人でモーニンググローリーを飛ぶというのも他のシナリオと差別化を図っていて良かった点ですね。
■天音
天音先輩はエロゲ界暗黙のルールから計算すると、四捨五入で30だと思うんですが
そんな大人な人が学生をやっていると思うと・・・物凄いドキドキでしたよwww
最初、発売前にこの大空に、翼をひろげてのキービジュアルで
天音先輩が両手を広げて一人だけで歩いている絵を見たときに、
「メインヒロインは小鳥なのに何でこのキャラだけあたかもメインヒロイン見たいな絵にしてるんだろう。珍しいな・・・」と思ってたんですが
これは、あながち間違いではなかったですね。本作の裏のメインヒロインという肩書きが最も合っているキャラだったかと。
それにしても小鳥がよく「天音ちゃんはぼけぼけだからね~」と言っていましたが、ここまでボケてるとはw(付き合ってるうんぬんのことです)
ボケ娘萌えって中々無いジャンルかなと思ったので、結構天音先輩というキャラは珍しかったですね。
イスカや飛岡の謎も解けたし、少々駆け足気味だったことは残念でしたが、うまくハッピーでまとまってたかなと思いますね。
(飛岡がいい人にならずに悪者とまでは行かないものの、納得いかないキャラのままで終わったのも評価出来る)
■自分用メモ
共通パートが物凄く面白かったので、忘れないようにメモ
入部→部員が足りなくて廃部の危機
ロボット部とソアリング部どちらをあげはが選ぶのか
主人公と小鳥が見たグライダーは、天音先輩が操縦していたが、そのテストフライトで翼が折れたため新調する必要がある
小鳥が心を開いていき、周りと徐々に仲良くなっていく(主人公の自転車事故の話とか)
お風呂、草むしり、花火、お肉争奪戦イベント
湖のガケから飛び降りの儀式
初のテストフライトでへたれる天音先輩(高所恐怖症)
エンディングがグライダーで飛んでいるムービーなので、各キャラルートの終わり方が
丁度グライダーで飛んでる時に終わり、ムービーがかかるので、ムービーの内容とぴったり合っている
みやびちゃんぷりちーに変わり、ことりちゃんくーるびゅーちー。