ErogameScape -エロゲー批評空間-

throughputさんのさくら、咲きました。の長文感想

ユーザー
throughput
ゲーム
さくら、咲きました。
ブランド
SORAHANE
得点
87
参照数
1482

一言コメント

評価の付け所が難しい作品。シナリオについては好き嫌いがハッキリ分かれそう。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

※大分ネタばれありなので注意です。


私個人としてはとても楽しめました。特にシナリオが。

本作では「地球に衝突する隕石」というテーマと、その裏にある大きなテーマとして「生と死」があります。

隕石の点については、映画や漫画などでよくありがちな地球に隕石が降ってきて地球最後の日を迎えるといったものなのですが
その事象についてヒロインたちがどう向き合っていくか、というのがヒロイン個々のシナリオになっています。
ヒロインたちがそれぞれ生と死について向き合い、考え、行動していく。そして最後は。。。これについてはネタばれになってしまうので、後で記述しますね。

とは言え、一見暗い感じのゲームなのかと思うと、決してそんなわけではなく、重いテーマの中でも
きちんとメリハリ、ここで言うメリハリというのは笑わせる部分とそうでないシナリオを魅せる部分のことを指しますが
その線引きが上手く出来てて、結局、オールクリアしても、「暗かったな~、鬱だな~」という感想は持ちませんでした。
(この線引きははつゆきさくらと似てるとふと思い出しました)
どちらかと言うと「意外と明るいというか、普通にええ話だったな~」という感想でしたね。
なので、鬱が嫌いという人には全然そんな心配ないのでお勧めですね。逆に、鬱ゲーを求めてる人にとっては物足りないかと思います。


なんと言っても本作の最大の売りはグラフィックでしょうね。
ソラハネオフィシャルHPのさくら、咲きました。の紹介ページにも
「かつてこれほどまでに、息をのむ程美しい背景CGがあったでしょうか」と自画自賛の紹介されてるくらいですw

いや、でもお世辞なしに背景は素晴らしく美麗でした。
綺麗すぎて、私のモニタだと目がチカチカするくらいでしたよw(モニタの明るさとコントラスト高めに設定してるのでw)

また、タイトルそのままの通り、全体的に桜もしくは桜の花びらが強調されてる背景やCGが多かったのも印象に残ってます。
これだけでかなり季節感というか暖かさが演出出来たのではないかと思います。

風景、建物や部屋なんかもリアルに描かれていて、エロゲっぽくないエロゲ背景に仕上がっています。
たとえば主人公の部屋の背景なんかは、窓ガラスの反射まで描かれていて、とっても芸が細かいなぁととても感心しました。

CGももちろん美麗でしたし、何より差分が多い!というか、立ち絵も多い!
表情がかなりころころ変わります。差分が多いから。
最初、HPで見た感じは「ちょっとリアル系な感じなんかな~」と思ってたんですけど
初回プレイ時にいきなりめーのジト目が出てきて、「こんなデフォルメされた表情出てくるんか!」と驚いたものです。
それらがうまい具合に組み合わさって、先に話したテーマをそこまで暗くしていない、いい緩和剤になってるのかなと思いました。


あと、なんと言ってもサウンド。
久しぶりにエロゲのBGMでいいなぁと思いましたね。
どれもホント素晴らしく、どの曲も印象に残るものばかりでした。
初回版にはサントラがついてるので是非とも聞いてほしいです。
(なんでも、tinkerbell sound labelという所で作ってるそうです。無知ですいません。。。これって音楽ソフトとか使わないで生演奏なんでしょうか。。。?
というのも、アコースティックギターの音や、ピアノ、魅せるシナリオの場面でかかるオーケストラ曲などがとても音がクリアで素晴らしかったので)


キャストについても文句なしです。
特に、めー役の上田朱音さん。素晴らしかったです。
お名前はよく拝見していましたが、何故か私がやるエロゲには上田さんってあまり出てこなくて。。。
メインヒロインで出てきたのは初めてかもしれません。
でも、めーが上田さんでホントよかったと思います。それくらい、めーに合ってた。

都役の雪村さんも都にぴったり合っていてよかったと思います。
(ただ、妹パラの印象が強くて雪村さんは妹キャラってイメージがかってにありますがw
というかそれを言うなら藤森さんもどちらかというと妹というイメージがそこかしこに。。。w)



以下、シナリオについて

シナリオについてはホント評価が難しいと思います。
私としては一番最初に書いたとおり、楽しめました。元々、こういった非日常系が好きでるということ
形あるものいつか壊れる。。。ではないですけど、どこか破滅的なものに惹かれるところがありまして。。。
(マンガだと楳図かずおの漂流教室や14歳とかが好きですw)

映画でいうと黒澤監督の生きるという映画がありますが、どこか本作もそれに通じる所があって、それもあってかクリア後は面白かったなぁという印象でした。
(生きるでは、余命数ヶ月と宣告された主人公が今まで、決められたレールの上でだけお役所仕事をして生きていた自分の人生に疑問を持ち
何か自分にも出来ることはないかと、生きる意味を見つけてひとつのことをやりとげ死んでいく。。。
主人公の葬式の時に、初めのうちは、あの人は今まで死んだように仕事をして生きてた人だったが、最後はよくやった。
あそこまでやり遂げてから死ぬなんて凄い人だ。あの人のようになりたい。と同僚が主人公を称えるんですが、翌日になると
お役所では今まで通りの決められたレールの上でのお役所仕事をしていく。。。というストーリーなのですが
例えば、隕石が落ちてきて人間が死ぬと思っていたけれど、隕石は地球をかすめて通り過ぎただけであって
しばらくしてから、隕石のことなんてなかったかのようにいつもの日常を取り戻していく。。。
ましてや、地球から脱出し宇宙へ逃げていった人たちのことなんてまるで黒歴史だったかのように忘れ去られていく。。。
この所が、とても似ていて面白かったと個人的にはポイントしています。

また、もうひとつのテーマの生と死。
シナリオをクリアすれば必然とわかる様になっていますが、すみれとさくらの対比。
すみれは生きる活力を求めるために、故郷に留まり生活部部長として、自身の生きる意味とはというのを探していく。
一方のさくらは唯一の友達という詩乃の死によって、終わり、つまり死についての意味を探していく。
ここはホント面白かったと思います。
(めーシナリオからのつなぎ方も凄くよかった。だって、最初に開放される都ルートでは宇宙へ脱出。
美羽ルートではあたかも隕石が衝突したかのような最後。そして、めーシナリオでも隕石が来て終わり。。。かと思ったら
いきなりムービーが挿入されて、ただ地球をかすめるだけ。で、めールートが終わる。こんなの気になってしょうがないじゃないですか!)

結局の所、隕石衝突で人類の絶滅エンドではなく、ヒロイン全員が生きる。または生きる意味をみつけるというエンドだったのも凄いと思いましたね。
(美羽ルートでも多分、生き残ってるんでしょうね)
最後の最後に部長ルートが開放されますが、その部長ですら最後はハッピーで終わる。
(さくらとの対比で記載したとおり、部長は100年近く捜し求めていた生きる意味を見つけだす)
宇宙に行くことで生き延びる。生きることに執着する。
常に死だけが自分の暗い過去から開放してくれるものだと思い、死を望んでいた者は主人公の行動で
生きたいと初めて思うことが出来た。
宇宙に脱出できなかった者が、宇宙行きの者のことを羨ましく思ったり、または愛する者のために宇宙行きを断念したりする。
この辺の人間の葛藤という部分もエロゲながらも、中々に巧みに表現されていて、読んでいて面白かったです。

まぁ、でもこれだけ褒めてるように書いてますが、気に食わなかった点ももちろんあります。
何か話を大きく広げすぎて、もやっとしたところや、リアルを追求するあまりもう少し詳しくここは書いて。。。なんて所もあります。
例えば、さくらが隕石を発見し、軌道計算した。NAXAと繋がりがあるとのことですがそれ以外はわかりません。
もっとこの辺りがもやっとしてるので、詳しく書いて欲しかったかなぁ。
(これは想像であれなんですが、例えばさくらは死というものを探している過程で隕石衝突の事実を知った。
これでようやっと死ぬことが出来る。。。と思い観察を続けていたとかね)

後は、暴動でしょうか。こんな地球が終わるなんてなれば必ず人間というもの穏やかにはいられないと思います。
暴動が起きるのはもちろん、盗みなんかも出てくるでしょうし、地球を脱出できないものは、せめて衝突地点とされる日本から逃れようと
国外へ脱出したりするのではないでしょうか。

美羽編のラストでは主人公が美羽の父親を探しにいくシーンでこの辺はばっさり省いて、父親を探し出して戻ってきたシーンから始まりますが
これらの描写があってもよかったのかな~と思います。
(まぁ、これはこれで良かったといいますか、ヒロインたちに重点を置いてますから全体的に余計な設定は結構省かれてたりあっさり気味に描かれています。
しょうがないといえばその通りなんですが、美春町があまりにも何も変わらず平和すぎて、少々違和感がねぇ)

あとは、核となってるトコシエ技術でしょうか。あっさりとトコシエ技術はなくなって今後トコシエは誕生しないなんて言ってましたが
初めて聞いたときは「ちょwww」となりましたwまぁ、これも話の尺からしてもすべてをストーリーに組み込むことは難しいでしょうし
多少、疑問が残ってもしょうがないのかもですが。


まぁ、上記に長々と下記はしましたが、結局のところ、話は自分に合ってるし、グラフィック、音楽、キャラ共に好印象でかつ、読後感が良かったのでこの評価としました。
(ホント辛口だといくらでも辛口つけれるような作品であることは違いないので、評価が難しかったですが)
気になった方は是非とも体験版などでお試ししてから検討なさってください。





■自分用メモ
発売日に、秋葉で購入して帰宅しようとしたら、本作のサイン会なるものが開催されていてサインしてもらった。(ソフトのパッケージw)
あと、ゲームにおまけシナリオ?ダウンロードみたいのがあるけど、これ何だろうか。。。今後配信したりするのか。。。?