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throughputさんのいろとりどりのセカイの長文感想

ユーザー
throughput
ゲーム
いろとりどりのセカイ
ブランド
FAVORITE
得点
90
参照数
574

一言コメント

なんせかんせ、真紅ルートこそがこの作品の核であり至高。ホント凄いの一言につきます。ただ、主人公のことは未だに好きになれず。。。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

いやぁ、ホント凄かった。本作、クリア後の読後感がハンパないです。
本作では、先にヒロイン4人をクリアした後に、本作の最終兵器とも言える真紅ルートが開放されます。
その真紅ルートというのが、今流行り?の「最後に謎が全て解ける」パターンの部類に属されるかと思います。
また、真紅ルートには「萌え」要素が上手い具合にマッチングされていて、とてもバランスが良かった。
最終的に、他の方の感想でもあるように「謎は全て解けた!」「クリアして良かった!」「真紅かわいい!」これにつきます。

漆原雪人氏の書くテキストは本作を読んだ感じだと、どちらかというと、最近のライトノベル風なタッチですよね。
(同じことを繰り返していったり、Aと言うためにB,C,Dを言ってからAを言うみたいな回りくどい感じが)

最初は読み手に対しての情報が少なく、謎だらけでよくわからないまま物語がスタートするんです。
(この肝心なところを言わずに「ぼかした表現」なとこも最近のラノベ風ですかね)

主人公は羽が空から降ってきて誰かが「助けて」という声が聞こえる夢を眠るときに何故か毎回見る、
その主人公は1日の記憶を保つことが出来ずそれを回避して記憶を留めて置くには日記を書かないといけない、
しかも主人公の横には何故か他の人には見ることも触れることも出来ないおばけ(真紅)がついている、
主人公は「逃がし屋」という謎の商売をしてるわ、寮の地下からは異世界へと通じる柱時計があるわ、
変な師匠はいるわ、巨乳メイドさんが灯台から飛び降りてくるわ、その飛び降りて怪我したメイドさんを主人公は魔法で回復させるわと、
これが共通パートのほぼ最初のほうで一気に出てきますw
私の場合、「もう、わけがわからないよ」状態に何度陥りそうになったことか。。。

ただ、このわけのわからんことが、共通パートの最後の方、「祟り」と「二階堂真紅は眠らない」でちょこっとだけわかるようになります。
この「祟り」と「二階堂真紅は眠らない」(どちらも章のタイトルです)の「流れ」とでも言いましょうか、
2つの章のつなげ方が凄い上手いなとプレイしていて思いました。
私の場合は、ここに来て、ようやっと本作の「物語」にググいっと引き込まれました。
大抵のエロゲって最初の1時間くらいで面白くなってくるのがセオリーという私の中の常識をいい意味で覆してくれましたよ。

シナリオについては、基本的に終わりよければ全てよしスタンスなので、大きく気になるところはなかったのですが、上記で記載した物語に引き込まれるまでの時間。
共通パートのあの引き込まれた場所の時点で、かなり時間がかかっています。
あと個別ですが、加奈ルートはかなり長いです。なのでこれからプレイする人はちょっとだけ覚悟しておいたよいかも。。。
というのも、最後の真紅ルートを含め、多分全て読み終えると45~50時間くらいかかってるかな。
これでもエロシーンはちょっと早めにクリックしてこの時間なので、前編オートでプレイするともっともっと時間がかかるかと思います。
それくらいボリュームがあった。(時間が無い人はホント覚悟してからプレイ推奨ですw)


それと私、この前の作品である星メモは未プレイでして、フェイバリット作品ははっぴぃ☆マーガレットぶり。
で、感じたのが、「このゲーム凄い重いな。。。」です。※重いというのはシステム的に
フェイバリットビューポイントシステム。これ、こんなに重かった??
いや、この機能を使った時に重いというよりはスクリプトエンジン自体が重いと言いましょうか。
たまにカクっカクっとなってしまってそれが気になりましたね。
(ゲーム起動でタイトルロゴ(FVP)がでるとこでカクっとなるんですよね~。他のエロゲはスルスル動くのでマシンスペックのせいではないと思うのですが何なんだろう)
あと、これはパッチ当てると修正されてるのかもしれませんが、場面が変わってから直ぐのところでセーブして
一旦ゲーム終了。再度ゲーム起動してデータをロードすると、いくらクリックしても先に進めなくなるという現象が2回くらいありましたw
(これが怖くてカットイン入って場面が変わってからは、必ず数クリックしてからセーブしてました(汗))
なので、システム的に私の場合少々気にかかるところがあったかなと思い記載することにしました。
(ただ、フェイバリットビューポイントシステム自体はいいと思います。
未だに説明書に書くくらい拡大縮小を売りにするというところが、スーファミっぽくてなんか懐かしいですね)


背景に至っては、いろいろな「セカイ」を意識してか、豊富な背景が用意されていたことも好評価です。
あの、サラサラっと描いた感じのタッチが逆に「セカイ」をあらわしていて、脳内補填に一役かっていると感じました。
CGについては塗りが素晴らしく、立ち絵に関しても表情差分が多くてとってもよかったです。
ただ、真紅がちょっとロリ過ぎやしないでしょうか(爆
立ち絵と共通パートのCGだとそうでもないんですが、真紅ルート入ってからのCGだとちょ~っとロリロリしすぎかなぁ。(特にフェラシーンのCGとかですw)
あと、鏡のCGが何故か悠馬の上に座ってるシーンのCGが多い。。。個人的にもっと違うシチュのCGを見たかったです。


声優さんについては文句なし。特に、真紅担当の澤田なつさん。素晴らしいです。
(澤田なつさんの歌も珍しいですよね。別の「セカイ」では結構歌ってらっしゃいますが)
あと、個人的にですが、加奈の声の人は好きな声優さんの一人なので、完全に俺得といった感じでしたね。


システムとCG面についてちょこっと気になる点はあったものの、特に大きく減点するところはなく
むしろ、良い面ばかりでしたが、いかんせん、本作の主人公である悠馬くん。彼のことは最後まで好きになれなかったですね。
個人的に、この、普段は鈍感(記憶失ってるからというのもあるかもしれないけど)で超受身タイプ。
何事も無関心キャラのくせして、「祟り」では豹変して凄い運動神経を発揮してバトルキャラに様変わり、
しかも、鏡ルートでは「ちっ」と舌打ちまでする始末。「お前、そんなキャラじゃねぇだろw」と突っ込みたくなるところが多々。
(それとあの、耳に箸をぶっさすのはマジでやめて欲しかった)
ましてや真紅ルートでは超がつくほどのネガティブ野郎に成り下がり。。。
何ていうか、この「主人公像のぶれ」が私としては合わなかった。

更にキツイことを言うと、多分この作品において、真紅がいなければ主人公はボロクソに叩かれていたかと思います。
真紅の印象が強くて、その影に隠れる形になっている。真紅や夏目鈴がストーリーテラーの役割を担うことで物語がスムーズに進んでいく。
これがあったからこそ、この悠馬くんに「目をつぶることができた」のかなと。
なので、そこまで大幅な減点対象とまでは至っていないが、最後まで好きにはなれなかったキャラのひとりという感想になりますね。


それにしても、本作、ここまで、エロシーンが邪魔に感じたエロゲーというのも珍しかったです。
そもそも、エロシーンが時代と逆行してるじゃんwというくらい少ないです。(真紅なんて1回想のみw)
スタッフの間でもエロシーン入れるかどうか迷ったのかなとプレイしていて感じましたよ(だって、むりくり入れた感が凄いんですものw)
私も「え~、ここでエロシーンかいっ。いきなりだなおい」と思う場面も何箇所かあったりしたので、
これからプレイする方には、純粋にシナリオを楽しむ、シナリオを読むエロゲとして、プレイして頂きたいです。
先にも記載したとおり、かなり長いですが、シナリオについては一見の価値ありです。
その時は、悠馬くんにイラっとくるかもしれませんが、真紅たんが出てくるまで大目に見てあげてくださいw




~~~以下、個別パートについて(ネタバレあり)~~~
私の場合、澪→加奈→つかさ→鏡の順でクリアしました。
まず簡単に一言ずつ言いますと、
澪ルート → しり切れトンボ
加奈ルート → 暗いよw
つかさルート → 短っ!!
鏡ルート → 兄貴ぇ。。。
といった感じでしょうか。

■澪
そうです。澪ですよ。ここでエロシーンかいっ!ってなったのはw
(なんかむりくりエロシーン入れたせいでちょっとだけビッチキャラに見えてしまったのは私だけ。。。?)
でも、部屋でもだえるシーンなんかは萌えポイント高しでよかったですね。
澪ルートはシリアスと明るさのバランスがよくて、最後まで好印象でした。
(あと、加乃みるくさん独特の「区切り」のあるしゃべり方も何かよかったです)
でも、シナリオで一点。
実体が見えるだけでこちらのセカイには戻ってこれないまま・・・というエンドはちょっと
中途半端に感じてしまいました。(これはこれでいい!という方もいるかとは思いますが)
あと、悠馬くん、耳に箸をぶっさすのはやめてね。痛いから。

■加奈
う~ん、何故か加奈って人気ないんですよね。。。
(真紅の次に好きなキャラなんて言えないwおしかけ女房的なキャラが好きなんてことも言えないw)
いや、確かに、シナリオはものすっごく暗いんです。
というのも、加奈は不幸キャラすぎますわ。理不尽にいじわるされて頭に生き物(式)を植えつけられて
そいつの餌が苗床になった人間の知識。。。それを食い尽くして成虫になったら頭かち割って外に出てくるとか。。。
もうこの時点で既に楳図かずお漫画ですw
あと、加奈ルートのくせに中盤まで白と蓮がメインのシナリオになってる。
私的にはこういった別キャラをヒロイン個別ルートにかませてくるのはあまり好きではないんですよね。(大抵はヒロインの影が薄くなるので)
でも、完全に2人が関係ないというとそうでもなく、それがあって加奈の心にも変化が生まれたんだと考えるとまだ許せるレベルです。
それにしても、加奈は自分のお母さんにものすごく固執してましたが、お父さんと叔父さんは現実世界ではどうなったんでしょうかね??

■つかさ
加奈ルートの後にやったせいか、あまりの短さに「え?え?」と二度見してしまいましたw
いや、だって、あんな金額の桁間違えてた~なんて言ってくるような医者なんですよ。
実はこの医者は金をむしりとるだけの詐欺師で、実はつかさは騙されてて、おばあちゃんの
手術は行われておらず虫の息。。。なんて想像しちゃうじゃないですか!
(実際は、そんなことさらさらなく私の想像したどんでん返しは杞憂に過ぎませんでしたが)
他のエロゲではありがちなこういう元気っ娘はウザキャラになりがちですが
つかさにいたってはそんなこともなく、むしろ見ていて餌付けしたくなるような気持ちになりましたね。
(そういえば真紅ルートでつかさだけ部屋に居た!と思ったら妄想だった。。。ってのにはやられましたよ)

■鏡
ゲームで悔しがる鏡ちゃんが、とってもとってもかわいいの!(鏡風に)
ロリ巨乳枠です。共通パートでは私服しか見てなかったので制服に着替えた絵はとても破壊力がありました。
鏡のシナリオでは鏡のばあちゃんプラス兄貴が絡んでいますが、この絡みをもう少し詳しくして欲しかったですかね。
なんか、兄貴は悠馬に対して恨んでいるという手紙が着ただけで終わったので、この辺をもう少し頑張れば
話の尺を長くしてシナリオつくれたのではないかと思っています。
(鏡とつかさのシナリオの扱いって完全におまけですよね。。。短い。。。)

■真紅
いやぁ、冒頭にも記載した通り、真紅ルートが面白くてここでは正直書くことが色々渦巻いて書けないです。
シナリオ全体を通して、真紅ルートでは鈴と藍がストーリーテラーとなっています。
各ヒロイン達の「セカイ」と、この真紅のいる「セカイ」そして創造された悠馬の「セカイ」とが入り混じって
本作のタイトルである「いろとりどりのセカイ」に含まれた意味や
今までの謎など色んなことがようやっとこのルートでわかった時は脳に電流がビビっと流れた気がしました。

最後の真紅が悠馬ことを探して見つけるシーンで「君は誰?」っていうの。あれ斬新すぎでしょ。
クリックしてて「え~!?マジでか。最初からやりなおしなん!?」って思いましたもんw(実は寝ぼけてただけ)
でも、あのシーンの真紅が最高に萌えるのも確か。(澤田なつさんの破壊力高しです)

本作は曲がものすごいいい曲ばかりですが、中でもOPのアレセイア。
真紅が魔法を使うシーンなどでもアレセイアのインストがかかるので耳に馴染があるかと思います。
このアレセイアの歌詞。これ真紅ルートクリア後にじっくり聞くとやばいですね。
だって内容がまんまなんですもの。ホント、クリアする前と後ではこの曲の印象ががらりと変わりますね。


■自分用メモ
多分、時雨は白の親父?で、白と鏡の兄貴(連也)の子供が蓮。
白も鏡もつかさもだが、本作ではやたらとばあちゃんが出てくる。
真紅はホットケーキが好き。(しかも何もつけないで食べる)
新しく作り直したセカイでは鈴は時雨の娘になってる。
あゆむは加奈が子供の頃に神隠しにあった世界で、罠にひっかかった猫。(実はドア蹴破るほどの力の持ち主)
真紅の日記(実際は主人公が最果ての古書店から地上世界に持ってきた本)の名前としていろとりどりのセカイと命名した。
パッケージおよび、取り扱い説明書の表紙には真紅・加奈・澪の3人が描かれてるが、これが全て。
この絵だけで本作が全て凝縮されている気がする。どちらもお気に入りの絵である。