天音ルートで「生きてこそ」という映画を思い出した
フロントウイング10周年記念作品に相応しく、スタッフの尋常ではないクリエイター魂を垣間見ることが出来ました。
中でも一番目を引くのがボリューム。
TG4月号によると、テキスト量は約4.3M。「ほしうた」の2倍以上らしいです。
OPムービーはアニメーションで、飛蘭の「終末のフラクタル」は神曲過ぎてCD買ってしまったくらい。
BGMにはクリエーターズ集団のElements Gardenが携わり、クレジットを見る限りだと生演奏?(勝手な想像なので間違ってたらすみません)のはずで、どの曲も聞きごたえがあります。
シナリオは各ヒロインが何らかの心の闇を抱えており、主人公を通してその闇をはらうと言う流れとなります。
共通パートが私個人的にはかなり笑えたのでとても楽しめました。
が、個別パートに入ると途端にシリアスパートとなり、その上がり下がりがとても激しいのがこの作品を受け入れるかどうかの分かれ目だと思います。
まぁ、事前情報でもかなりシリアス色の強い作品になっているとの宣伝でしたので、萌えのみを求めて購入した方はいないとは思いますが。。。
個人的にはこの上がり下がりが激しいことによって、ユーザーの心をヒロインの抱えた闇に対して、より感情移入させるよい起爆剤となっているかなと感じました。
前述に記載したシナリオの長さのせいでギブアップした方が居るのでは?と思うと残念でなりません。
私は続きが気になって仕方がなかったので途中でギブアップすることはありませんでした。(でも、私のプレイスタイルだとキャラクタのボイスを聞き逃さないようにゆっく~り読んでくタイプなので、トータル50時間くらいかかりましたがw普通にRPGクリアするくらいかかってんなw)
2011年を代表するソフトであることは間違いないので、興味のある方は是非ともプレイをオススメします。
とくに、FD希望!!
★★★以下、クリアした方向けのコメントですので未クリアの方が読むと楽しさが半減するかもしれませんので注意してください。★★★
■天音
天音ルートは他のシナリオとは別格なくらいのインパクトを私に与えてくれました。
中でも私は「生きてこそ(原題:ALIVE)」という映画を思い出させてくれました。
この映画は実際に起きた「ウルグアイ空軍機571便遭難事故」を基に作られたノンフィクション映画で、舞台が「森の中」→「雪山」、「バス」→「飛行機」と、生存者が天音ただ一人であることくらいの違いなだけで、過酷な環境に置かれた人間の生に対する執念とヒューマニズムについては変わりません。興味のある方はご覧になられるとよいかもです。
中でもエンジェリックハウルの終盤に出てきた人肉の話ですが、上記に挙げた映画というか事故でもそれにより生き延びることが出来たそうです。
正直言って、最後のみんなに追われるシーンはかなり怖かったです。(丁度夜中に電気消して布団にくるまりながらプレイしてたってのもありますがw)
ヒルの描写がしつこくあったのもプレイ中の嫌な感じをあおっていますね。(あまり身近に感じませんが、太平洋戦争で遠方に向かった方の体験談などを聞くとヒルくらい当たり前だったそうです。天音や蒔菜ルートはライターの趣味(まぁ、あの方でしょうw)で、軍事系や武器についてマニアックな説明が出てくるので、戦争についても色々と知識を持っていた=リアルな表現でエンジェリックハウルが書けたのかなと思います)
私の場合、天音の見た目と性格が無性にタイプだったので初めにクリアしたんですが。。。
クリア後に別シナリオで出てくる天音を見ると可哀想で可哀想で。。。
他のシナリオでは若干のあれはありますが、雄ニがヒロインの心の闇を払うために身を挺すのに対して、ヒロインの中でただ一人、自分の命が消えることによって心の闇から救われるというところがです。
ただ一人だけ生き残ったという罪悪感から自らが死ぬ時になって初めて救われる(バッドもトゥルーエンドも)というのが。。。うまく言えませんがもうちょっとどうにかならなかったのかなと。。。
雄ニも天音に対して「下手な慰めは言わない。その罪を背負って生きていくしかない。」との考えはちょっと冷たいかなと思いました。
確かに唯一生き残った+友達(一姫)すら救えなかった天音の心境を思うと罪悪感を感じるのは仕方のないこととは思いますが。。。そこは雄ニがもっと癒してあげるというか何か上手い事やってほしかったです。
ラストの逆上した遺族が鉄砲でおっかけてくるシーンも、あれは天音シナリオでは雄ニのいい所というか見せ場がなかったので最後の最後にとって付けた感が否めないです。。。
唯一の救いは天音が本当に雄ニのことを好きになったことでしょうか。
初めのきっかけはどうあれ、最後にはお互い幸せな家庭を築いて老人になって生涯を終える。
これで、「実は今も罪悪感から雄ニに近づいただけで、好きでも何でもないんです~」ってシナリオだったら最悪でしたよ。。。
■みちる
二番目にクリアしたのがみちる。
上記の天音ルートで若干の鬱になってたので、みちるにはとても癒されました。
まぁ、私自身こういったハッピーエンドが好物なので。
初めに教室でカンペ見ながらツンデレ演じてるのは、暗い自分と明るい自分がありどちらかはただ演じているだけなんだろうな。。。とは思ってましたが、まさか臓器移植した人格が乗り移っているというのはちょっと斬新でした。
雄ニがみちるの闇を払うために行った葬式イベントも新しくてよかった。
それに、EDムービーの途中でアフターストーリーをはさんで、またムービーが流れるのも新しかった。
別人格のみちるも本当のみちるとすれ違いはあったものの基本的にはいい娘だったので、もしFDが出るなら2人のみちるとイチャイチャするシーンがあったりすると面白そうです。
みちるの声役の羽仁麗さん(声聞くと名義変えてるだけと一発で解りますが)の氷柱をひょうちゅうと吹き込んでたのも、おバカなみちるを演じてのことか単に間違えたのか良くわかりませんが、とにかく迫真の演技で素晴らしく良かったです。
■幸
まず初めに、幸シナリオでは親戚の叔父さん(幸のお父さんの兄だったか?)が、工場の鍵を開けて、中を事故後の幸に直ぐに見せてやれば丸く収まったのでは??と思ったのは私だけでしょうか。。。
自分が家を飛び出したのを追いかけた両親がトラックにはねられた事実は変えられません。悪くてPTSDにもなったとは思います。ですが、少なくとも幸の心の闇である母の「どうして。。。」という言葉による悪夢と良い子になろうという思いから、他人の言いなりになるロボットのような人格にあそこまでなることはなかったのではないかと思います。
やっぱり、雄ニが幸の心の闇を払った後も終始ロボット状態だったのが残念です。(学校まで爆破したのに前とあんまり変わらんというのが。。。)
せっかくゲーム中唯一の幼馴染キャラとしてもっと、昔の明るい幸に戻った状態をゲーム中で見たかったです。
(心境の変化というとパーカーを着るくらいだったので、徐々に徐々に良い方向に向かっていく幸を見てみたかったですね。FDに期待か)
■由美子
基本的に消化不良感が否めません。
ラストに由美子の父を倒すシーンがありますが、裏で動いていた何者かの手によって由美子の父が敗北したのかが謎のままです。
まぁ、由美子シナリオはバッドエンドが無いのでそれが一番よかったかな。
あと、バードストライクネタは今までに見たことがなかったので斬新だった。
由美子シナリオは他のヒロインのシナリオと比べてイチャラブがどうしても少なかったので、もう少し多く。というか、唯一の見せ場である遊園地のシナリオをもっとひっぱってほしかったですね。
また、由美子の趣味の一つである絵を描くことについて、由美子が描いた絵のCGとかがあったりすると面白かったかな。というよりどんな絵を描くのか見てみたかったです。
由美子のエロシーンでの雄ニが筋肉ムキムキ過ぎなのはちょっと笑ってしまいましたがw
■蒔菜
最後にクリアしたのが蒔菜。
かなり雄ニの過去についての描写があり、今まで謎だった部分がちょっとだけわかる仕組みになってます。(それでも謎は多いが)
雄ニが死んだ方をバッドと考えるのか、雄ニ自身がずっと抱えている心の闇である右腕をなくし組織を引退、なおかつ愛する蒔菜が雄ニの後釜として組織に狙撃手として所属することになり、いつ死んでもおかしくない状況に今度は蒔菜を巻き込んでしまった方をバッドと考えるのか難しいところです。
とにかく両方ともスッキリしないところが。。。
まぁ、蒔菜からしてみれば将来の夢を聞かれて「パン屋か狙撃手」と言っていたくらいなので何とも思っていないのかもしれませんが、根本的なところで母親と決着が着いていないところが腑に落ちませんね。
蒔菜に対して他のヒロインが相談するシーン(A音とかMちるとかのやつ)は面白かった。
それにしても、原画のフミオ氏は蒔菜やほしうたのななの見たいなデザインが好きなのが良くわかります。幸のデザインも若干フミオ氏の好みっぽい感じがしますが。
本編では今だ明かされない謎について多くの方がコメントしていますが、私もちょっと気になったことがいくつかあるのでメモとして残しときますね。
・雄ニの過去について
一姫が事故死して両親が亡くなったのはわかった。
また、雄ニが父親が死んだのを自分のせいだと思ってるのもわかった。でもそれだけ。情報が全然無い。自身の右腕が呪われていると思っているのと悪夢を見ることだけがわかっている。
・雄ニの師匠について
雄ニが廃人状態になったところを師匠に救われたのはわかった。でも、どのような原因で師匠が死んだのかはあかされていない。
誰かのシナリオかは忘れましたが、「俺に関わった女はみんな不幸になる」みたいな記載があったと思うので雄ニが少なからずとも師匠の死に関わっているのかもしれない。
・雄ニについて
組織の中での雄ニの存在というか位がどれくらいなのか謎のまま。
一応組織的な位については蒔菜ルートで記載がありましたが、雄ニとJBの関係が謎です。
上司であるJBも雄ニに対しては甘いというか、まぁ師匠繋がりで知人かつ師匠の死後にお世話になってたことを踏まえても、あれだけJBが雄ニに対して協力してくれるのが腑に落ちないです。また、雄ニは学園長の千鶴とも知り合いですが、どういった敬意で知り合いなのか?も謎のままです。
本編では「市ヶ谷」「赤坂」「霞ヶ関」「桜田門」「サムおじさん」といった隠語で表現されていますが、まぁそうことです。(「庁から省になった~」との記述なんかもあり、カンのいい人は多分わかるはず)これらと組織との関係性も具体的には記載がないので、なんとなくにしか解らないです。
それと雄ニが「犬は飼えない」みたいな記述がありましたが、何があったのかも謎。
・一姫について
これは一番わかりやすい謎ですね。
正直言って、生きているのか死んでいるのかすら謎です。天音ルートのバッドでは手紙と包丁を埋めてましたが、生きているというのが正しいのでしょうか?
でも、それなら何故顔を見せないのかが謎。雄ニが想像する記憶喪失とかになってるんですかね?
組織の地下室にいるというマッドサイエンティストが実は。。。なんてことも考えてみたりw
あとここからは考えたら負けのような感じもしますがこんなことも。
・幸バッドエンドについて
「どうして。。。」と母と同じ一言を残してこの世を去りますが、幸は何を伝えたかったのか。。。
・みちるの臓器提供手術はアメリカで行われました。提供者の母に会うために、ラストでみちると雄ニがアメリカに行きますが、天井裏から出てきた絵は日本語で文字が書かれてます。彼女らはてっきりアメリカ人だと思っていたのですが実は日本人だったのでしょうか。。。
とにかく、よくもわるくもプレイ後に考えさせられるゲームだなと思いました。
これはホントにFDあたりで謎解決してほしいですね。
なにやら別メディア展開の話もあったりなかったりなので個人的にグリザイアブームはまだまだ続きそうです。
本編ではイチャラブ成分が足りなかったのでつぎはそれを補充できるようなゲームがやりたいですねw