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sunnydaylifeさんの咎狗の血の長文感想

ユーザー
sunnydaylife
ゲーム
咎狗の血
ブランド
Nitro+CHiRAL(NITRO CHiRAL)
得点
90
参照数
25

一言コメント

その後のBLゲームの方向性を決めたと言われるレジェンド的な作品。「女こどもにはこういう物をみせておけばいいだろう!」的な古い偏見が取っ払われたゲームとして小気味が良いプレイ感が良い。そこが当時のプレーヤーに衝撃と共感を呼んで爆発的なヒットが生まれたのだろう。人を寄せ付けないようなおどろおどろしい初期のパソコン版ジャケットと反して、ゲーム内容はブラックなディズニー的世界観が入りやすくて◎。ただしバイオレンス&デンジェラス要素は濃いので要注意。なめて近づくと有刺鉄線に挟まれます。原作のトシマはアニメの100倍は怖かった…!!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

キラル20周年企画で2025年8月の舞台の公演も決まったキラルの原点の大ヒットゲーム。
設定勝ちの作品。
ディズニーのように非常に分かりやすい世界観。ただしアイロニーがふんだんに込められている。
人を選ぶ要注意ゲーム。
ユーザーはトシマというデンジャラスでデカダンスなテーマパークに潜入する。
主人公の姫は残酷な現実を目にしつつ、ナイトに守られつつ、城に導かれる、イルレという麻薬王がいる城に。
ラインは魔法。遊○○のバトルシティーも彷彿させるトシマでの熱いバトル。
ダイバーシティが進められる現代なら姫が熱いバトルを繰り広げても何ら遜色がない。
このゲーム以降数々のBLデスマッチゲームが登場したと思うと感慨深い。

最近では、「橋姫」や「大穢」からBLゲームに入る人が多いが、昔は「咎狗の血」からBLゲー沼にというユーザーが多かったようだ。今爆人気を誇る、BLゲー界の巨匠のくろさわ凛子氏もこのゲームに影響されて、BLゲームのクリエイターを志すようになったそうだ。

このゲームはBLゲームの黎明期にリリースされた。この頃はスマホもなくパソコンの全盛期で、現在のBLゲーム市場の状況と比較すると驚きの販売数を誇る。当時は自部屋のパソコン環境下という完全に閉ざされた世界での娯楽だった。今のようなSNSや推し活なオープンワールドでは生まれない良さ、特にうしろ暗さが良かった。
母体会社の成功の軌跡やキラルの体制の変化を考えると、この尖り感は二度と見られないのかと思うと切なくなる。

 ヴィスコンティやパゾリーニなどの退廃的な映画が好きだったので、このゲームの節々に現れる背徳感、デカダンスや虚無な雰囲気に惹かれてしまう。
プレイ中は硬質さ、高揚感、キャラクターの生きづらさに対する共感が頭の中で混ぜこぜになってしまう感情がアツくて。
ブラスターでは絶対無血のヒーローだった主人公アキラが、トシマでは被捕食者という存在に成り代わる。そのギャップや怯えに性癖をくすぐられた腐女子は多いはず…

キラルのゲームは哲学的要素もあるので、完全に理解したとは言えないもどかしさがある。
テーマが単純そうに見えて、実は理屈っぽくて難しいといつも感じる。
ルートごとにトシマの状況や結末が変わるのがBL(AVG)ゲームならではで面白い。
夢中にプレイした当時は、1ルートのボリュームが少ないように感じ、エンディングでは風呂敷を広げて畳まれていないような肩透かし感も少しあった。しかし年を重ねて再プレイすると普通に満足できた。今では驚くほどの豪華なベテラン声優陣の演技も格別だ。
日興連やらCFCというワードはリアリティーが無く、頭をすり抜けていった。

 キラルゲームをプレイする上での我が三箇条。   
キラルに大きな萌えは求めない、のが私のスタンスです。
キラルでガチ恋愛が存在しないのは一貫していると思っています。
設定や世界観に心に刺さるものがあるので、キラルを長年支持をしています。

プレイしてから✖️✖️年。現実世界でも国民背番号制も普及し、番号で国に監理されるようになったり、震災等の悲惨な光景を目にしたり、世界も分断化されていったりと色々状況が変わっている。
いつの間にか半導体が世界を牛耳り、ナノの覇権争いが今日も繰り広げられている。
ニトロキラル20周年yearに開かれる万博のキャラクターがスイプーじみているのも、面白い。

このゲームでは、人間の能力は可能性を秘めているものとして、それを高める事も一つのテーマにしている。スポーツの世界では、スポーツ科学が進み、ますます人間の身体能力が高められているようだ。
残念ながらそれ以外の世界では人間の能力がAIに乗っ取られていく哀しい現実が見え隠れする。
ここがゲームと違うところだ。
ところでトシマは都市魔か外島か年増??どちらからきているんだろうと時々考えてしまう。


余談です。私と「咎狗の血」の出会いの話です。興味が無い人は読み飛ばして下さい。

昔「Phantom」のプレステ2版をプレイして、その重い世界観や硬質なシナリオに打ちのめされ、それからプレステ2版のシナリオゲームを色々漁っていた過去がありました。その頃既にどっぷり腐女子でしたが、自分専用のパソコンは持っていないし、オタ友もいずで情報に疎く、BLゲームという存在も知らずでした。まさか同時期に別ブランドでBLゲームがリリースされて大ヒットしていたとは全く知らずでした。今から思えば泣けてきます。なんという情報格差よ。
あのボロクソに言われたアニメ視聴後に「咎狗の血」を初めてプレイして、後から「Phantom」
と同じプロデューサー陣に手がけられていると知り、大いに納得した過去があります。
あのアニメがきっかけとは…。
BLゲームにハマり出してからも、近づきにくいジャケットの雰囲気にビビってしまって手を出せなかった…。今から見ても初期のパソコン版のジャケットは怖い…。
あくまで分かる人だけ分かれば良い、的なスタンス。
それなのに売れまくった…という結果が面白い。今では見た目で判断して後悔しています。
ライナーノーツのプロデューサー陣の想いにも感動しました。
アニメの黒歴史を舞台上で盛大に白歴史に塗り替えてもらいたい…!!