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sonataさんの思春期の長文感想

ユーザー
sonata
ゲーム
思春期
ブランド
RUNE
得点
90
参照数
717

一言コメント

 『兄妹間の恋愛に於ける親の干渉』『風呂場でバッタリ、のような突発的なエロイベントの後で、ヒロイン側に沸き上がる主人公への嫌悪感』『実妹』。妹が四人、なんて完全にイロモノとしか思えない設定でありながら、通常の萌えゲーではタブーとされるような題材をあえて描いたことがこのゲームの特徴です。野々原ゲーの割には体の一部が成長しすぎな気もしますが、そんなロリな方々に私はあえてこう言いたいです。ほら、昔の偉い人も言ったじゃないですか「おっぱいは決して怖くな~い」って。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

このゲームをプレイして思ったのは、いわゆる通常のゲームでタブー視されるものを、あえて扱ったという事でした。例えばゲーム中、ヒロインの雪来とお風呂場でバッタリ遭遇するシーンが頻繁に出てくる。普通のゲームだったら、そんなシーンが頻繁に出てきてもヒロイン側は(記号的に)プンスカ怒るだけで、主人公を嫌悪の対象として見ることはなかったりします。

 だけどこのゲームは違うのです。偶然の積み重ねを、主人公側の作為と見なして、そんな行動をする主人公を雪来は嫌いになるのです。こういう問題は、年頃の女の子と同居するという設定だから出てくる訳です。
 他にも、この『思春期』では一々描かなくてもいいことを、あえて描いているという所が、目に入ってきます。例えば、そういったシーンに遭遇した後の主人公の反応。他のゲームなら、びっくりしただとか、後でちょっと回想して興奮する、とかで留めるのに、このゲームの場合、普通にち○こ立たせて、後でオナニーのネタとして活用してしまうのです。これは、彼が中○生で童貞だから、というのが大きな理由として存在するでしょう。

 つまるところ、こういう点が、お気に入りになってしまったのでして。他のゲームで、突発的エロイベントが発生しても、びっくりするだけで何一つエロ小僧的な反応をしない主人公に対して「てめえち○こ付いてんだろ!? アダルトコンテンツのゲームらしい反応しろや! キシャー!!」と心の中で叫んでいた私としては、胸の中に渦巻いていた不満を取り除いてくれるものだったのです。

 これらの要素は、シナリオの方にもきっちりと反映させられていて、中でもすずめとみあのシナリオは特にお気に入りです。
 すずめのシナリオ。具体的な記述が無いものの間違いなく二人は実の兄妹であって、このシナリオはそんな二人が結ばれようとすると発生してくる問題点が浮き彫りになってきます。親の反対、それによって家の中の空気が重苦しいものに変わっていき、途中では兄と結ばれたいと思っていたすずめですら空気に耐えられなくなって泣き出してしまう。ええ、容赦がないです。だけど、それが当たり前。本来、タブー視されているものに、向かい合うということは、つまりはそういうことなのです。最終的に二人は、自分たちの中に覚悟を設けて、二人で人生を歩むことを決めるのですが、これには賛否両論あるでしょう。むしろ、こういう我々の生活にも実際にあったらどうするだろう、と考えさせるようなテーマな訳で、結果として賛否両論になるのは当然な訳です。二人が結ばれるのは、絶対に否、と考える人もいるでしょう。要は、そういう賛否両論な意見が出るまでに、話を突き詰めている事が、このシナリオの良さなのです。

 みあのシナリオは、すずめ程重苦しいシナリオではありません。だけど、当事者の悩みを真剣に描いているのもまた確か。みあは、天涯孤独の身から、神岐家に入った人間です。そういうみあだからこそ、兄妹間の人間関係に敏感になって、臆病にもなってしまうわけです。言ってしまえば、すずめシナリオが「妹との恋愛」における問題点を追求したものだとしたら、みあのシナリオは「突然五人兄妹に」という設定から生まれる問題点を追求したものです。
 作中でみあは、多くの場面で虚勢を張ります。人付き合いに臆病な彼女は、虚勢を張ることで、五人兄妹の中で立ち位置を見つけようとしたのです。そういった虚勢が、自分と他人の間に溝を作ってしまうかもしれないと理解しつつも。主人公は、そんなみあの悩みをいち早く気付いてあげられた人間で、だからこそみあは、兄として主人公を慕う一方で、一人の異性としても意識してしまうのです。初めてのHシーンでみあは「……ありがと……まさみ……みあの大事なお兄ちゃん……」と最後に呟きます。それは、二つの感情で主人公に好意を抱いていたみあだから言える台詞なのです。
 最終的に、みあは兄としての好意よりも、一人の異性としての思慕を選びとります。そうなると足かせとなってしまうのが、皮肉にも二人を結びつける為の起点となっていた、兄妹としての二人の関係。
 シナリオの最後は、それを乗り越えるという形になっていきます。両親への、自分たちの関係の告白。すずめの説得。これらの状況は、二人が兄妹でなければ生まれなかったものです。そしてそれは、人間関係に臆病なみあがずっと恐れていた、家庭の崩壊というものを孕んでいるものなのです。
 だからこそ、これらのシーンはみあが主導となって行われたのです。両親への告白も、すずめの説得も、普通に考えれば男である主人公が行えばいいものだし、主人公の見せ場を作る意味でもそれは正解の一つであったでしょう。だけど、臆病さを乗り越える意味で、これらのシーンはみあが主導として進んでいきます。一番最初に両親に告げたのもみあ。すずめの説得を粘り強く行ったのもみあ。それは、主人公がヘタレ、というエロゲによくある設定に基づいたからなどではなくて、乗り越えるための象徴として、みあにやらせることに意味があったからなのです。
 そして結末は他のどのシナリオよりも幸せそうで。個人的には大団円として、このシナリオを締めに持っていくといいかもしれない、なんて思っております。うん、このゲームは素晴らしい。
 最後に他の要素についてコメント。

CG
 一言コメントで言ったように、野々原絵にしては、おっぱいが成長しすぎだったりします。でも、私としては無問題。体のぷにぷに感はしっかりと残っているので、不満は特にありません。
 ただ、ヒロインたちの寝巻はちょっとアレですね。特に雪来が。アナタ、その格好でエッチな目で見るなって言われても、その、困る。

他のシナリオ
 決して出来が悪いわけじゃないです。ただ、テーマ的に、上記の二つ(文章量的にもわかる通り、特にみあシナリオ)がお気に入りだっただけで、萌えゲーとしても、普通の純愛ゲーとして標準以上の出来なのではないでしょうか。

総評
 個人的には、野々原さんの絵が大丈夫ならお薦め。元から野々原さんのファンの方もお薦め。ぺたぺたでないと駄目! という真性な方は、みあを愛でることにしましょう。少女らしいおなかのぽっこり具合とかは、相変わらず素晴らしいの一言に尽きます。そうでなくても、シナリオとしてお薦めなんですけどね。