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saisalyさんの装甲姫バルフィスの長文感想

ユーザー
saisaly
ゲーム
装甲姫バルフィス
ブランド
戯画
得点
37
参照数
342

一言コメント

BALDR MASTERPIECE CHRONICLEのバージョンではなくオリジナル版で遊んだ場合に発生した事象で、プレイ中僅かな頻度で強制終了する場合有り。95/98対応ソフトのため、それ以外でのOSで遊ぶ方はセーブデータはこまめに取る事を推奨。◆いっぱい殺し合いが発生しているヤバい戦場の中で、その場で大声でゲラゲラ笑いながらダンスを踊っている変で陽気な10名程度の奴らの隣で2名だけ刀を振り銃を撃って必死に戦闘している光景を見てしまったような違和感、というのがゲームプレイ後の感覚のたとえとして適当か。◆オープニングの主題歌や主人公の女子キャラと世界観の不一致によるちぐはぐさ、主人公として選択できるキャラの中で「バネッサ」と敵役「ネメス」による強烈な違和感。イベントCGが非常に粗末。設定に基づいた箇所(バルフィスの真相とネメス関連)以外は適当。2018:8/8に全部書き直し+加筆

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

数値、5が平均です。(5以下だと気に入らない部分あり)

キャラクター(魅力、言動) 4
ストーリー(全体を通してのお話、結末) 3
シナリオ(作品中での出来事、キャラクターの行動) 3
ゲーム性(難易度を伴いプレイヤーの操作を必要とする部分の要素) 6
音楽 3
文章 3
グラフィック 4
システム 5
ボリューム(長さの満足度) 3
満足度 3

BALDR MASTERPIECE CHRONICLEではなくオリジナル(発売年度版)でプレイした際の感想。
WINDOWS7:64Bitで動作。
ただしゲーム起動中に他のアプリケーションと切り替えるとゲームウインドウ画面が真っ白になり
操作不能に。プレイ中僅かな頻度で強制終了する場合有り。
1999年発売版でOS環境をWin7などで遊ぶ方はセーブデータはこまめに取る事を推奨。

バルドシリーズの2作目。オープニングテーマはやけに陽気で馬鹿馬鹿しい。
登場人物も一人を除いて非常にバカな路線。

◆感想
このゲームの企画者のせんばた楼氏はゲームの雰囲気にギャグ、コメディを志向したのではないかと推測するが、
それならシリアスさを残さずギャグ路線に完全に振り切った作品にしていたらもっと良いのでは、というのが
率直な感想。

何故そのように思うかを以下に書く。

SF、ロボットにより派手なメカアクションゲーム+美少女+エロと・・・このゲームの特徴を書き出していく。
人工知能が管理していた時代の未来が舞台のロボアクションでストーリー上では人間を生きた生体部品として
改造して生体兵器にするという中々ハードな描写をしておりシリアスな設定である。他には」旧時代の科学を
復活させるために暗躍する組織など中々硬派でスリリングな設定が存在する。プレイヤーキャラは意図せず
その陰謀に関わる、というそういうお話。世界観とストーリーで起きている事実を書き出してみる。
これだけを書くとかなり深刻でシリアスな印象を受ける・・・のだけれど。

そういうゲームなのにそのシリアスな背景設定が
搭乗キャラ(6名中5名)の性格が軽すぎてギャグ漫画の登場人物に見られるギャグ担当バカ娘そのもので
搭乗キャラのパートナー役の性格もいい加減で適当、OPテーマが非常に明るく陽気で
乱入するノンモー星人やパンダなどのギャグ路線と正面衝突している。
登場人物が世界の仕組み、物語上のハードな部分と同じ方向に向いておらず統一感が無いだけではなく
感情移入も困難になっている。
中途半端に1名だけシリアス路線の主人公がいるので余慶にいびつな感じを受ける。

シリアス主人公だけで揃えてシリアスな背景設定と一致させるか、シリアス系主人公を廃して
主題歌の陽気な馬鹿馬鹿しさが合うギャグ系の主人公で統一して
大暴れするギャグ路線系メカアクションにするかのどちらかならすっきりする。
もしシリアス系で統一するなら当然、パンダとか宇宙人は無しの方向でね。

企画者が主人公側の人物の設定について何を考えて重苦しいこの世界観と重厚な設定と衝突するようなこのような
人物造詣の主人公キャラを多く用意したのか、ぜんぜん理解できない。
人物部分で多大にギャグ成分が、そして設定に重厚にシリアスな成分が闇鍋のように混ざっていてはっきりいって気持ち悪い。

CGの表現もよろしくない。
Hシーンとコネクター戦後のネメスのCG以外はギャグCG(コミックアート)で描写されるのも
ネメサやバネッサというキャラと合っていない、ネメサ、バネッサ以外のキャラではキャラをデフォルメタッチで
描くコミックアート化は違和感がない。このコミックアートはギャグ系のゲームになら合うんだけどね。

コミックアート風CG,こんな感じです。
https://gyazo.com/3d58ce3071f52b073663db5775a745ec
シリアスキャラのエンディングでもこの表現なので哀愁や悲しさなんて全くなく余韻もぶち壊し。

◆キャラについて
上で書いた「シリアス系の主人公」というのはバネッサの事。
設定された世界観や雰囲気に性格や言動がかみ合っているバネッサを説明するとこういう人。

企業の護衛の名目で仕事を請けたが謎のGIGASに襲われ同僚の助けで自分だけ何とか脱出。
帰還後、雇い主からは法外な報酬を支払われ、その時にバネッサたちを襲撃したGIGASについて
口止めをさせられる。襲撃された際に戦闘データが記録されていた事に不審を抱いたため
自分で調査をした結果ゲームのテーマのバルフィス大会に行き着いた歴戦の女傭兵
出場動機も敵討ちと事件の真実の探求。
「死んだら終わり」「次のチャンスはない」と言い切るこの作品の背景に一番一致したキャラ

一番世界設定にあっているのでこういうキャラでそろえていれば違和感を持たなかったのだが、

一方で他の5名は・・。

1.
入社したら社長がろくでなしで勝手にバルフィス大会に登録され、不参加逃亡は即拘束と脅されるOL。
2.
何教なのかは不明だけれど信仰心が強すぎるために他人の話を聞き入れず思い込みで暴走しがち、
困難や障害は神の試練と称し、対戦相手は神の敵と断ずる。頭のねじが飛んだシスター。
3.
自分を正義、相手を悪人と決め付けヒーロー気分で暴走する頭のねじが飛んだ
人の話をまるで聞かない女警官。
4.
悪役プロダクションの変人マネージャーに飼育され変人おっさんマネージャーに
野生児を装わされる食いしん坊少女。
5.
バイト先のラーメン屋のおやっさんから金を騙し取られたと聞いて恩返しの為に
内緒で賞金名当てでバルフィスに出場した喧嘩の強い元レディースの女性。

と、こんな感じ。

2名(婦警、シスター)が完全にギャグ馬鹿路線で世界観と合わず場違い、
2人(元レディース、OL)は思考はややまともだけど出場動機のせいで
ゲームの世界の雰囲気や設定とはまるで合っていない事には変わりがない。
1名(野生児)は何も考えてない。
バネッサだけ超が付くシリアス路線のため浮いてしまっている。
また、各キャラごとのパートナーもバネッサ以外はほぼふざけている。(振り回されてる人もいる)

敵役で登場するのはほぼ1名。
「ネメス」
中々ハードな出自の女性で、シナリオの真相である「コネクター」の脳パーツに適合するという理由で捕らえられて
生体パーツとして改造された挙句何十年も生かされてコネクターの一部として戦わされている。

だけど・・

バネッサ以外とは会話もかみ合わない(基本的にバネッサ以外がギャグキャラなので)し、生きる、死ぬとエンディングがばらばらで
エンディングがコミックアート化されるので悲壮感も感じない。

キャラをデフォルメタッチで描くコミックアート化はギャグ系のゲームになら合うんだけどね。
ギャグゲームなら許せた演出が多々見られる。このゲームが世界観もキャラも方向性が統一されている
大暴れメカアクションを志向したギャグゲームだったらと何度思った事か。

「バネッサ」がゲームの主人公におらず、ネメスがあのような境遇ではなく、世界観が厳しくなく
ギャグ主人公だけならこのゲームに私が感じたあらゆる違和感は違和感ではなくなり色々許せたと思うのに。
(ただし、CGの手を抜いたような出来とエンディングのオチはどいつもこいつも許せない)

ストーリーとして、ネメスという女性がGIGAS格闘大会の「バルフィス」の根幹の部分に
深く関わっている事、彼女を倒す事で彼女自身の謎が彼女の口から語られ全ての真実が明かされる
事になるがエンディングがあまりに適当すぎるので締めに活かされていない。
ネメスが生きている場合のルートでは「ネメスは~に就職した」「~の従業員になりました」とか。

ずっとGIGASに載って戦い、大会後は失踪した優勝者の主人公とネメスについて
バルフィスを仕組んだ組織が生存の可能性、動向、行方を気にかける節がある。
が、このネタEDはバルドシステムも何も関係ないだろ?

かといってネメスが亡くなった場合のエンディングでも彼女の死は別に深く悲しまれないし
10クリック程度くらいのギャグネタテキストと適当CGで終わってしまう、残念!笑えん。
もうちょっとどうにかならんかったの?

◆CG
イベントCGはもっとあった方がよい、というか足りていない。
対戦時の専用のイベントCGもない。GIGASのCGをバックに、キャラが立ち絵で会話するだけ。
専用CGが欲しいと思う場面で意されていない。予算か製作期間か人員の都合なのか。
古いゲームにそこまでを求める私が大人気ないだけなのか?
しかし、まともなイベントCG ってラスボス後のネメスCGだけってのもね。

それから、Hシーンも表現がワンパターン。
敗北のペナルティで辱められた挙句、被虐により快楽に目覚め、堕落するというものばかり。
演出も、一枚絵、キャラの脱ぐ差分、一枚絵、ホワイトアウト・・
「画面が白光してそのままフェイドアウトする(メッセージ欄はキャラの末路のテキスト)」の演出パターンが多い。
CGの背景も雑。
あとは、HシーンCGは床に寝転がされているのか壁にもたれさせられているのかが分かりにくく不明瞭。
キャラを斜めにした構図のせいで見づらい。
射精描写も精液を白く描きすぎては飛び散っている最中(かかりそうになっている直前)なのか付着した後なのか
分かりづらい。

キャラ間の会話はマネージャー役との会話はあれでいいと思うが、選択したキャラと選ばなかったキャラとの会話は
対戦前と後に行われるがキャラ同士の会話がかみ合っておらず、互いに言いたい事を言っているだけに見える。

◆褒められる点・システム面の欠点
操作性、ゲームバランス、アクションゲームとしての質の高さ等は今の時代でも水準以上で、
この時代であれば非常に良く出来ている点、セーブスロットが非常に多い点。
技試しを行える練習モードもあるので操作に不慣れなプレイヤーも安心の配慮には好感をもてる。
コンフィグからすぐタイトル画面に戻れ、すぐゲームを終えられるのも当時のゲームとしては良い。
ゲームバランスといえば、一日1度で何をするか、という制限もこれは良い制限だと思う。
男性キャラに声があるのも評価。

不自由な部分については、オープニングの解説を飛ばせない、メッセージスキップ機能がない、など。
(その部分での減点はなし。90年代なら仕方がないので。)

ゲームボリュームは長いとはいえない。それでも1キャラ&1週目を1日でクリアするのは一苦労。
二周目以降から慣れが生まれ、敵の技を獲得する機会も増えるのでクリアも容易になっていく。
1週目に1日かかり、2週目は6時間くらいでクリアできる難易度。6週もすれば3時間ほどでクリア可。

◆音楽
一部除き単調でつまらない。


◆総評
ユーザビリティーの配慮、アクションゲームとしての評価と声優の演技の評価でこの点数。
企画と主人公キャラクターの方向性がほとんど合わない点がダメ。
こういうゲームをと企画したらストーリーも企画に合わせてキャラもその企画に合った方向性で、1名か2名くらいなら
イレギュラーな変わり者を入れていいと思う。
これは作風(背景世界、世界の価値観)と合わない言動のキャラが多すぎる。シリアス5、ギャグ1の主人公比率なら
世界観と合っていたはず。ラストの閉じ方も許せない。あの締まりのないエンディングCG共々笑えない。
エンディングCGで落胆させないで。
コネクター戦後のエンディングはネメスCG(差分あわせて2つしかない半端な物だが)を描いたように
きちんとコミックアートタッチではないCGを描くべき。

企画したせんばた氏が次作から参加していませんが、どうやら次以降、ギャグ路線切ったようだ。
戯画の看板シリーズになりましたがまだ未プレイなので想像だけど
企画の世界観の「メカアクション」「旧世代のAIによる世界を取り戻そうと暗躍する企業」や価値観、目的
「バルフィス大会は旧テクノロジー時代の技術に関連したある目的のため」「邪魔者は抹殺」に合わせて
キャラの言動まで方向性を統一したのではないかと考えます。そうならば納得。
企画の原作者が居なくなってからヒットしたのは因果な話だなと。
一人で企画、テキスト、原画と担当されているので、それは確かに大変だろうとは思うのだけど
企画とメカニックの造形(当時レベルとすると仕方ない)以外はクオリティが低い。

バネッサ以外の主人公のルートは登場人物の頭のねじが外れたギャグ世界なのでストーリーの整合性もへったくれもない。
ストーリーものとしての楽しみを重視する人にとってはバネッサルートだけで十分。他の子編はやっても脱力するだけで無価値。