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saisalyさんのキャッスルファンタジア ~聖魔大戦~ リニューアルの長文感想

ユーザー
saisaly
ゲーム
キャッスルファンタジア ~聖魔大戦~ リニューアル
ブランド
Studio e.go!
得点
39
参照数
382

一言コメント

とにかく雑。描いた方がいい描写が省かれていたり、敵の登場人物が少なすぎて後半が薄っぺらい。両国がどういう存在なのかも描かれずあやふや。 シリアスなテーマでドタバタギャグが続くためキャラゲーなのか戦争ものなのかという部分でも半端。シュミレーションゲームとしても簡単すぎて手ごたえ無し。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

◆終始にわたり描写されない部分が多すぎるので情報が足りない。

舞台となる大陸の両国家、過去、政治、思想、歴史、風土や文化の詳細な経緯は脇に置いたような印象。
プレイヤー側の指導者が教皇、プレイヤー側の国は相手国を邪神国と呼ぶので
「なんとなく宗教的な要素がある」、とわかるくらいの申し訳程度。
だからプレイヤー視点で、作品中では数百年も戦ってるらしいのに戦ってる両国の実態や像が掴めない。

戦記にするなら笑いよりも二国、現状、政治、宗教、対立の経緯など歴史や思想の部分、戦争の描写、
戦闘の激しさや作戦など軍事的な部分をきちんと書いたほうがいい。その上で少しの笑いを入れるなら和むし。
キャラゲーにするなら女の子かわいいね、主人公格好いいね、主人公側が連戦連勝で爽快、と。
そんな感じだったらいいだろうなと思うがそのどっちも中途半端。

両国とも政治的描写がなく指導者すらまともに登場しない、今の国情さえちゃんと描かれないので
何がしたいのかさっぱり。 大陸統一の話なのか相手国を滅ぼすまで戦う話なのか和解して
共存する話なのか突如現れる新たな脅威に2国が共同で立ち向かう為休戦するのか。

戦っている目的が見えない上に、敵、味方に重要な登場人物が少なすぎるので話が薄っぺら。

ただの賑やかしの頭の弱い子が多過ぎるしその賑やかしのヒロインによるストーリーの空気にそぐわない
言動が多い。
たとえば諜報として登場する女性のソミアが人道的には非道な「プレイヤー側の属する両国内で、自国の村への惨い
襲撃をするという味方殺し」の話があったすぐの同じ章内のシーンでおちゃらけた頭の弱いヒロインキャラが
ドタバタとおふざけするなど。
キャラを前面に出すコメディなのか戦争の様相を見せたいのか。笑わせたいのか悲しませたいのか。半端。

◆登場人物について
敵、味方に重要な登場人物が少なすぎるので話が薄っぺらと上で書いたけど具体的な登場人物の配分がおかしい。
敵側は2名。敵将のガヤック、ジュディだけで指導者も重要な人物も出てこない。 敵側で人名ありがたった2名。
おかげで相手の国がどういう思想なのか、民族、政治はどうなのかわからず、どういう敵と戦ってるのか掴みづらい。

こちら側は主人公、主人公の同僚将軍3名、指導者の教皇(チョイ役程度)、アリア、ルシエラ+シナリオ途中で
入ってくるハンナ、ルナール、セシル、ティア、それからソミア、タルギスタン。
こんな感じで味方側に人数が多すぎて人数比のバランスが悪い。 バランス悪い上に両方で組織描写もとても少ない。


兵站の描写や作戦の描写ってあったっけ。戦争、数万の兵士を率いてると見られるが兵士の描写も
あまりないし。題材に軍隊を扱うのに将軍個人さえ強ければ良いというような感じの描写が続く、将軍個人ごとの戦闘能力で
勝敗が決まってしまうかのような。軍の描写も兵の描写も雑すぎる。
戦争の規模を考えてもヒューイ部隊だけで戦ってるわけがあるまいに。
初期から12章あたりまでに味方に登場させるヒロイン候補の3人、ルナール、ハンナ、ティアの性格や認識に難がある。
(戦時と通常の切り替えが出来ない、バカ、天然ドジ、わがまま)上に日常パートを引っ掻き回し続ける。
こんな部隊が主力なのに(軍らしくない) 軍隊を扱った戦乱のお話といわれても「???」

ライターは銀河英雄伝説の「ヤン・ウェンリー」っぽくしたかったのかもしれないが似ても似つかない適当さ。
一応主人公が天才設定なので発案すれば必ず成功すると、
そんな幼稚園の引率のような部隊で行軍して、組織も適当なのに連戦連勝したりと不自然。ご都合よすぎますね。


移動もスケール感が無い。大陸マップを見せられ、戦況文章でここに行きました(その章終了)、
あそこに行きました(章再開)とそういうのばかり。


◆ヒロインについて
お馬鹿ヒロイン3名+セシルの計4名については個別ルートでやっと実はこういう一面があったんだ、と明かされるけど
それまでにルナール、ハンナ、ティア、セシルとおふざけが多すぎて好きになれないです。ルナールとハンナがひどい。
普通なルシエラが中途合流、中盤終わりからジュディ加入でやっと日常パートがややマシな方向へ。
ルシエラ加入までは共通の日常パートでイライラします。(キャラゲーとして楽しめるか?自分には無理だった)

キャラ設定が真面目なアリア、途中加入のルシエラ、ジュディについてのみ不快感なく会話やルートで
心情移入できますね。それから隠しルートのソミアも。

敵国の女将軍のジュディは本当にいい女です。部下想いな女武将で傷ついた部下を逃がす為の取引に
自分の身柄を差し出したり。だけどこういうキャラが最初から部隊にいたらなぁ。加入が遅すぎるのがもったいない。


◆話の展開
魅力ある敵役が少ない。もともと敵側の名前と顔ありの人物が2名しかいないのでその片方のガヤックが倒れたら
名のある敵役はジュディしか登場しないので中盤以降は話がスッカスカになっていく。
前半から中盤までの、敵国と味方の国の歴史、政治、因縁の描写が全然無いので登場人物の少なさと合わせて、結果
中盤から後半がすっごい薄いですね。 ものすごい強引な展開へ話が進んむので、え・・・なんで?という。
(ヒューイがいきなり離反したり)

★エンディングについて。
ジュディルートはジュディとのH後、敵国潜入、戦闘してそのままエンディングと突拍子もないし。
ソミアルートは島に逃げて隠遁してそれから年月が過ぎ~で終わり。

あっけなさすぎる。かな。ほかのルートも似たり寄ったり。
結局なんで戦っていたのか、戦後はどうなったかなども説明無くてヒロインと結ばれました、で終わってしまう
命かけて戦い抜いたのにその後両国が歴史的にどうなったかはわからずじまいでもやもやが残って後味悪いですね。


■まとめ
両国の説明がすごく薄く、敵国の登場人物が少なすぎて後半がスカスカ。
戦記なのかキャラゲーなのかで中途半端でバランスが悪い。軍隊ものとしておかしい部分が多い。
ゲームバランス的にも戦闘はあっさり、簡単。(ヒューイのレベル上げをしないと終盤詰むが)手ごたえはない。
私はCGと音楽以外は評価は出来ません。発売された当時の水準で考えても絵以外は厳しい出来の作品。
リニューアルとして本作で追加されたソミアルートが無かったら18点ですね。