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saisalyさんのランス10の長文感想

ユーザー
saisaly
ゲーム
ランス10
ブランド
ALICESOFT
得点
98
参照数
1528

一言コメント

ネタバレなしの長文感想。全体を通じて意識させられたのは「時間」。その「時」とは作中の人物の人生だったり規定ターンの存在する時限イベントとしての期限だったり 作中での年月だったり現実での29年(1作目からこの10まで)だったり。エンディングを見ながら泣いていました。ああ、終わってしまうのだな、と。 総決算に相応しい締めくくりであったと納得のエンディング。ずるい、あのエンディングはずるい・・。(2018/5/5に再追記

長文感想

◆ゲーム全体の評価
キャラクター(魅力、言動、CG) 10
ストーリー(全体を通してのお話、結末) 10
シナリオ(作品中での出来事、キャラクターの行動) 10
ゲーム性(難易度を伴いプレイヤーの操作を必要とする部分の要素) 10
音楽 10
文章 9
システム 9
ボリューム(長さの満足度) 10
ゲームデザイン 9 (食券でマイナス1)
満足度 10

アップデートで諸問題がひとつ解決し、新キャラクターが追加&シーンスキップ機能が追加されたため
95点評価を97点評価へ上方修正
更なるアップデートで場面スキップ機能、新キャラ追加が実施されたので点数を98へ上方修正。

改めて聴きなおしているのですが音楽がとても気に入っています。
ボス戦曲のギターのフレーズ、メロディーラインが格好良さと哀切を併せ持っていて
(音楽好きで何百枚と70’sロックとかいろいろ聴いている身として)こういうメロディーは大好き!
特に3つ、OH BOSSや決戦曲、そして真のラスト戦の曲は今まで聴いてきたエロゲーの音楽の中では
私にとってはベスト10に含まれるものでした。

(2018年5/5にこの括弧から上の部分を追記。レビュー時になるべく恒例表記の ◎~×での各評価を追加)


エンディングを見ながら泣いていました。ああ、終わってしまうのだな、と。
総決算に相応しい締めくくりであったと納得のエンディング。ずるい、あのエンディングはずるい・・。
長くこのシリーズを体験した人があれ見せられたら泣くなというのが無理だよ・・・。
長く続くシリーズだから時の流れを最終回である今回はとても意識させられました。
という事で、全体を通じて意識させられたのは「時間」。これがこのゲームのテーマだと思いました。
それは作中の人物の人生だったり規定ターンの存在する時限イベントとしての期限だったり
作中での年月だったり現実での29年(1作目からこの10まで)だったり。時間の影響について考えるばかり。
終えた今はため息を付いたり、ぽーっ・・・と放心したり・・。思い出し泣きが止まらなかったり。
2部なんて考察したり。しばらく夢想し続けるだろうなぁ・・・。こんなに余韻を引きずるのは珍しいって
自分でも思うのです。よく決着させたなって感心もします。ストーリーもこれ以上ないのではと思います。
不満点を少し挙げていますがやはりどんな作品も欠点0というのはあり得ないのでそこは仕方がない。

ボス戦闘の音楽、ギターフレーズがすごく格好いいし音楽も最高。

ランスシリーズは鬼畜王ランスをターニングポイントとして、それ以降のランス作品は鬼畜王で見せた
さまざまな設定やキャライベントをセルフオマージュしている場合が多くて、例を挙げれば氷漬けのシィルは
象徴的な出来事で後のランスの行動目的にもなっていますが最終作品だからこそより顕著にこのシーンは
確か鬼畜王のあそこのあの場面で、という部分がプレイしていると見る事が出来、鬼畜王ランスを遊んでいれば
より深く感情移入できます。
IF作品という位置づけの鬼畜王ランスのシーンイベントに「元シーン」という用語を用いるのが適切なのかは別としても
旧作と比較するという楽しみにおいてはこの作品は一番鬼畜王との比較を楽しめると思います。

◆ゲーム性
2面作戦的な対処が必要なのに4箇所の戦況が同時に動くシュミレーションで、作戦中はパズル的なRPG戦闘という
二面的なゲームで読み物としてのボリュームも膨大なすばらしい娯楽作品です。
思考力、選択判断、戦闘の難易度などのゲームバランスと苦闘しながらの、人類の生き残りをかけて戦う部分を前半、
ずっと作戦状態のRPG戦闘のみという過去のランスクエストのような2部を後半。ストーリーがどちらもすばらしい。

シュミレーション要素の強い「人類サバイバルの魔人戦争」を生き残るためには攻略の順番、攻略イベントの
決定に判断力、思考力が必要で、初回でのベストエンド(Aランク)達成は無理だなと割り切って何週も繰り返し
遊ぶ、というゲームだと初見で判断。
ターン制限付きのボス戦闘において通常勝利と特殊勝利ルートが存在するのを見てより強く
意識しました。3週ほどプレイした時点で「何週もしてクリア特典を重ねないと無理そうだな」と感じ
難易度、ボリュームについては歯ごたえがありやりがいを感じました。
間違えて悪いエンドにならないようトライアンドエラーを失敗を成功の材料にしていくのが楽しい。

何周も繰り返すのはそういうゲームだと考えればいいしそればいいのです。
あるキャラが違った運命をたどったり、育てない事で損するなどは自分の責任と割り切れば結構で。

ただ、同じ失敗をしないようにといっても重大な手順間違いはかなり前のセーブデータからのやり直しに
なるので、「引継ぎ要素もないのに何度もやるなんてとんでもない」という考えの人には向きません。

魔人の倒し方がすべてなのでクリア特典を得てそれが可能になってからが楽しくなる、逆説的に易しく遊ぶために
必要なクリア特典のCPを得るために悪いエンドを見る事にはなり、それを是とするかどうかで人によっては
低い評価を下すかも。
時間切れで苦杯を味わうのはお約束。私も最初はCエンド、皆様も通過されたでしょう。

重要なキャラについては生きているか、敵なのか味方なのかで会話の展開にも変化があり、ルートによっては
キャラの立場が変わり会話の内容すら違うので全部見るのは大変だと思います。
クリアしましたがまだ全部は見切れていないくらい。

Aエンドの最後は思わずうっとうめいてしまい、内心「そうくるのか!」と驚かされました。
しかし、さらにもっともっと遊び続けると2部が開放され、2部でもっと驚くのですが(笑)。

基本的な話で主人公は優先的に使い続け、きちんと育てましょう。詰まないようにするためにも。

◆不満点

★1.食券システム
膨大なキャラが存在していてそのキャラのほぼ全部にサブイベントシナリオ(ショートストーリー)が
あり、見るためには食券というゲーム中での消費チケットを消費します。
食券はキャライベントを見る以外にも消費対象のキャラに累積経験値の半分を与え、強化(LVアップ)を
することができますがこの食券ターンはその食券を消費するキャラを任意で選べず、所持中の6人がの
カードからランダムで抽選される仕様となっているため攻略のために重要な運用キャラが中々抽選された6人に
含まれず、また食券ターンでのセーブは不可能で食券を与えたいキャラが抽選で現れないと前のフェイズの
クリア直前までデータをロードしなければならない、と面倒です。
このランダム抽選問題が入手カードが増えれば増えるほど顕著に感じられます。
入手したてのキャラ(たとえば神魔枠)が次の作戦で重要な戦力で、食券を与えて強化したい場合にさえ
全然抽選されずに、仕方なくセーブデータをロード、などはしょっちゅう。
抽選される時はあっさり、けど出ないときは本当に出ない。
3枚食券があって1枚目の食券の使用機会で使いたいキャラが選ばれて「当たり」だったとしても
残りの食券2枚については2枚目に食券を与えたい、使いたい対象がおらず、そこで食券の使用を見送り
直前のセーブデータをロードっていうのもしょっちゅう。
(食券は3枚までしかストックできないので使わないで次のフェイズで食券を入手した場合は余剰分が
溢れて腐るので有効活用したいわけですが・・)
イベントを見るために食券を使う場合ならまだいいですがキャラ強化のために経験値を投与する目的での
食券消費は攻略上避けられない「強化しなければ難度自体に影響し、障りが出る」箇所のためここ(食券ターン)を
ランダム抽選にした点を私は減点とします。
ランダムにした理由がゲームバランス維持のためであるしても6人は少なすぎます。

ゲームが難しいがさてどうしようか、という部分はキャラ育成の対象を決定したり攻略順を判断する、
プレイする人間の能力(思考力や判断力)の問題ですが、食券の抽選は試行錯誤でトライ&エラーするのとは違い
完全に運の部分で、運のみに振り回されている部分は好ましいとはいえないのでできれば任意で
選べればよかった。


2.キャラ性能
登場人物が多いのでどうしても優劣が付いてしまうキャラ性能について、やはり0コスト行動は有利だとか
そういう部分では格差が出てしまい、使われないキャラがたくさん出てしまいますね。

3.ヒロインの扱い
過去作品でヒロインを張ったキャラであっても扱いが結構あっさりしていると感じた。
ランスとの付き合いが深い女の子(過去作品では作品の顔になった位の)でも子供ができなかった女の子も多い。
ランスの子がいるいないかでかなり女の子の扱いの差が大きい。子がいても母として新絵で登場しなかった子も
いるがもったいないし見たかった。

4. 16ターンとあるがそのターンの上限の数をどうやっても見ることはできない。それより前に終わる。
 対天界特効などの対象についてや 内部データだけと思われる神など。全部クリアした今でも意味不明。
 今後、追加データが用意されるのかが気になる。

5.エッチシーン
テキスト数行ですまされている場合があるのでもう少し見たい子も・・。

減点要素はここに書いた部分くらいかなぁ。

作品としては非常に満足しています。
食券システム、不消化をマイナス点としてもその部分だけの減点はわずかに数点のマイナスにしかならないくらいに
他の部分が優れていました。本作しかしていないのに終えた後はシリーズ10本連続で遊んだような
充実感に満たされ、何年も前に遊んだ過去のランス作品のシーンが沈殿した記憶の底から浮かび上がってくる
思いでした。ああ、あの過去に遊んでたランスの~作目、それぞれを思い出して。あそんだそれぞれの、
あの何日、何週間という時間も素敵だったよね・・楽しかったねって。
もうこんな気持ちになったのはいつ振りだったか。
たとえばドラゴンクエストでロトシリーズを完結させたドラゴンクエスト3を初めて終えた時のような気分。
三国志(演義だけど)通しで読み終えた直後や、映画ならスター・ウォーズシリーズを通して視聴した後とか・・。
同じ世界で、歴史があって。
ゲーム作品でこれだけ長いシリーズなのは(同じ主人公でというの)は本作くらいだけど・・・
時間の積み重ねは深い感動を生み出す。過去の楽しかった記憶を呼び起こし今遊んでいる物語(ゲーム)との
深いつながりを意識し、意識させられ泣きたくなる、涙が溢れる。
積み重ねによる感動は何物にも変えがたい。積み重ねは愛着となり、やがて「思い入れ」という、
好きや嫌いだけではとても言い表せない独特の、固有の意識を体験者に定着させるのです。
すごい長い長編作品(1本の)でもとても楽しいけどこの作品は積み重ねた歴史が10本+ですし続き物でしか
経験できない「思い入れ」という深みを持った感動の中でも格別。
この作品を終えたとき、積み重ねによる「思い入れ」が私の中で生み出した感情、「寂しさや感動、感謝の念」が
一度に去来し、込み上げて来る感情を抑えられない気分になりました。
ランスの物語は終わりましたが、今後も魅力的なこの作品世界で新しい冒険をまだまだ見たいです。