注意◆(長文感想には永遠のアセリアのネタバレも含んでいます)◆音楽は美しく、グラフィックとゲーム性のシュミレーションパートの遊び応えは向上したが脚本と新しく持ち込まれた設定に不満。ご都合主義満載で前作ならここで心動くという場面がぶち壊し。永遠のアセリアの続編としては不適で永遠のアセリアや永遠神剣シリーズと無関係な新作だったなら許容できた作品。
数値、5が平均です。(5以下だと気に入らない部分あり)
キャラクター(魅力、言動) 2
ストーリー(全体を通してのお話、結末) 1
シナリオ(作品中での出来事、キャラクターの行動) 1
ゲーム性(難易度を伴いプレイヤーの操作を必要とする部分の要素) 7
音楽 6
文章 3
グラフィック 8
システム 5
ボリューム(長さの満足度) 7
満足度 0
前作「永遠のアセリア」の続編として作られたということで期待してプレイしました。
まず前作がすごく気に入った作品で、気にいった理由は主人公の心の葛藤を描ききっている事でした。
その前作にあった主人公の感情の表現について、「戦いへの葛藤」「悲壮感」「覚悟」「力を得る決意と代償」
「何に代えても守りたい」「何もかもが思い通りにならないやるせなさ」といったテーマは今回は感じられない作品のため
がっかりしました。
前作にはそこがあったから永遠のアセリア(Special edition)で感動したのですがそのテーマがないとなるとどうなるか。
そういう作品だったという事で。
さて、アセリアや永遠神剣となんら関連性のない新規シリーズのゲームならいいゲームと評価しただろうと。
アセリアどころか永遠神剣と関係がない作品だったなら70点くらいの点数でしょうね。
「永遠神剣と無関係のなんでもうまくいくサクセスストーリーという触れ込みの新作イチャラブのキャラゲー」として
世に出たのならこれから書くような「酷評」は多分、きっとしなかった。
ではまず聖なるかなの感想を書くにあたり前作との比較が必要と思うので・・
◆比較1
ソゥユート=前作の主人公の悠人について。
前作で彼は穏やかな日常世界からいきなり戦乱の世界へ召還される。妹をその異世界の王に人質に取られて武器を渡され
殺し合いを強制されて戦場へ狩り出される。見知らぬ世界で生きていく方法も無く、妹を人質に取られているためやむなく従うが
終始敵の命を奪うにも躊躇の気持ちがあり、殺す殺さないで苦しんでいて(やると決めてからは吹っ切ったが
殺したという事実は背負う意思を見せた)さらに窮地にもしばしば陥り、苦境の挽回のため無理矢理に剣から力を引き出し
その結果として剣に自我を乗っ取られるかどうかという目にも会い、その度に極限の精神状態の瀬戸際で精神と自我の乗っ取りに
必死に抵抗(自我、精神を乗っ取られると殺戮&レイプマシーンになるので)していた。
妹や異世界で出会った人々など大事な者のために絶対死ねないからどんなに嫌なことでも腹もくくって行っていた。
また、現実世界で同じ場所にいた事で巻き込まれて一緒に異世界に召還された友達と異世界では神剣の持ち主同士として
敵味方となり、どうにか戦いを避けようとするもうまくいかずに戦場で自分で殺して失う結果を迎えて、戦いの後に慟哭するなど
辛酸、苦渋も嘗め尽くている。(友人殺害の悲劇展開は前作2周目からはルート選択肢で回避可能)
そうしてまで生きてきた世界が外界から圧倒的な敵に侵略されそうになった時にすでに守りたいものがこの世界全体
戦ってきた戦友のスピリットや命令で従っている国を含むすべての生きる人々という範囲までとなっていたので、
故郷でもないのに絶対に守りたいと言い切って、対抗手段としてエターナルと呼ばれる超戦闘力を持つ者になる決意をする。
(全ての存在の記憶から忘れ去られ、最初から存在自体なかった事にされる。誰の記憶にも残らない。)
全てを投げ打つ前作主人公だからヒロインも死ぬまで一緒という思いで付いていく覚悟をしている、と大変説得力がある。
また、周囲をとても大事にして傷つくことも厭わないので一緒に戦う仲間からもとても慕われていた。
プレイヤー視点ではエターナルになるシーンは本当悲しかったし同時に心底「悠人って格好いい奴だ」って思ったんだ。
前作最大の見せ場だった。
感動するシーンまで、いろんな積み重ねがあった事で強い感情移入が出来る存在だった。
それから、「永遠のアセリア」ではヒロインの子達も前作では精神的に「まともで」場をわきまえる程度の常識はあります。
ここから前作のヒロインについて少し書きます。
前作のお話ですが、本当にお子様のオルファという女の子がいますが精神年齢的な部分だけではなく外見も子供なので
「ああ、子供だから仕方がない」&「性格が嫌というわけではない」ので不快になると所まではいかない。
姫様、ウルカ、エスペリアなど常識人だし、アセリアは無口なクールキャラだけどけなげさで言葉以上に良く考えている子で
不快な子はいなかった。今日子ちゃんもシリアスとおふざけをちゃんと切り替えることが出来るし、時深は見た目よりもずっと
生きているので大人ですね。
彼女らの心の動きもちゃんと描けていたと思います。前作主人公に対して段々心を預けていく過程が描かれていました。
ヒロイン(1名)ルート確定後は(姫様以外)悠人と同じエターナルに一緒になって死ぬまで一緒についていくという展開に
なりますがそこまでの描写も納得いくものだったと思います。
◆比較2
今回の聖なるかなの主人公という扱いになっている望について。
最初からヒロインにモテモテ。複雑な事情をすんなり受け入れて剣を使い始めるし戦いに葛藤も見せない。
話が進むごとに異世界を渡り歩き、関わった世界では女の子の仲間(男の仲間じゃないのがお約束というか)を
増やしていく。もちろんモテモテ。
話が進むにつれ、実は望は大きな力を持った神様の生まれ変わりでしたという事が明らかに。
強い前世の神の人格が出始め、その強い力を使い始める。そして最強の剣を使いこなせる資格を持つ男と判明。
ここまで書いていて、まず無条件に強い力が勝手に望の元に集まってくるか持っている。必死さ、葛藤を見せない。
前世の因縁が~という点は本人の実力じゃない点。なのになぜか周囲の人物が彼をリーダーとして認めて支持する。
おまけに女にモテモテ。非常時でもいちゃいちゃする。
・・・どうやって、どこに感情移入できる要素があるんだろう?
まずワクワクしない。ハラハラしない。できなかった。
主人公の望が何で女の子たちを含めて周囲から支持されるのかぜんぜんわからない。
かなり状況に流されるし、本人ではなく他力の部分が大きいし。
確かに顔はいいし悪いやつではないのだが、自分の力で掴んだものではない強い力を振り回してるだけ。
しかもゲーム後半に明らかになるのは唯一の「最強神剣ナルカナ」を扱える&その超神剣は女の子になれる事実と
その女の子神剣に惚れられるという事実。だから何で?と
前世の力(別人格)だとか特別な人格もちの神剣様だとかの超戦闘力だとかをたまたま使わせてもらってる
他力全快な青年で、力を得るために自分を捨てでも何とかしたわけでも何か強い覚悟をしているわけでもない。
なのに女性受けはいい。
・・・どうやって、どこに感情移入できる要素があるんだろう?
私は彼(望)に感情移入できそうにないのでどんどん白けていった。
前作でハイリスクでがんばった結果大きなものを得たという部分、喪失の描写にも胸を打たれたので
本作にもそういう部分を期待したのですが期待はずれでしたね。
ここまでお膳立てされている青年に対してはカタルシス、達成感も感じる事は出来ずつまらない。
◆比較3
比べて登場する味方の男、絶という青年について
作中に登場する仲間キャラの絶という青年がいます。彼は自分の出身世界が滅ぼされるとわかり、その世界の
住人に世界を滅ぼすもの(絶の生まれた世界)を倒す使命を託され、絶以外の全部の人間は命を捧げて巨大な力となり
絶を強大な相手と戦えるだけの力を持つものに生まれ変わらせました。
結果、絶は自分以外全部を犠牲にして力を得るというでただ一人の出身世界の生き残りとして戦いに身を投じる存在に。
大勢の仲間の尊い犠牲を背負いながら戦いをしているという過去がこの作品で始めて登場した他の誰より凄まじい。
覚悟もあるし格好いいキャラです。悠人に近い存在。
けど、主人公の望よりよほど重い過去を背負ってて覚悟も持って生きてる絶が望の引き立て役のような扱い。
望が主人公として設定されているので仕方がないといえば仕方がないのですがその存在はスルー状態に近い。
絶個人は旅の仲間Aという扱いをされているだけ。絶の前世が神という設定でこちらは重要視されていましたが
絶本人はどうかというと・・疑問符。
主人公にする奴と開始する世界を間違えたんじゃないのかという気分になります。
絶の出身世界は生き物が死に絶えてる世界なのであの荒れ果てた世界からはじめたほうがスリリングだと思う。
前作とは違いリスクも無く超常の力を振るう主人公。主人公の望に最初からべたべたする女の子。
場もわきまえない望と女どもの発言の数々。
学校ごと(一種の能力として操縦して)移動するという設定のため、無理やり連れて行かれるという事も無い。
他のモブ生徒もあまりあわてた様子が無いし学校が襲われることもほとんど無いので緊張感がなくまるで
異世界の観光旅行(ツアー)しているかのよう。
異世界側のキャラは戦いは当然の世界で生きてるので葛藤が無くても不自然ではないですが
現実世界出身の人物が命のやり取りをすることにあまり葛藤や躊躇をしないのでひりひりするような
感情の揺らぎが全然感じられない。
で、戦っている敵のほうが気の毒な事情があったりするという。そんな相手をばっさばっさたおしていく一行。
ほかは、元の世界に戻れるようになってもまだ学校の生徒を旅の巻き添えにしていたのだからおいていけばいいのに、とか、帰還したのに思いっきり喜ばないなどがおかしい。
それから、人間の姿に変化できる超兵器神剣ナルカナは性格が不愉快。
たまに見せるかわいさとグラフィックのよさが無ければうっとおしい。
わがままな性格で高圧的で尊大でしかも場を無視した言動は鼻につきます。
そのくせ設定上は最強なので一人で戦闘が片付く。今まで育てたキャラはなんだったのかと。
性格は不快、ゲームバランスは壊れかねないし、その設定が前作と干渉して『実はこうだった』後付を
連発するし、その後付設定が前作のよいなと感じた「何もかも都合よくうまくいかないからこそ
うまくいったときの達成感があるんだ」という充実感をつぶしていく、本当に厄介な子ですね。
▲ここから少し言葉がきつくなりますが、まず・・。
いろんな後付の設定が前作での設定を無視、衝突し前作で感動した部分をいちいち潰していくのでイライラ。
準エターナルってなんだよ?ふざけんな。 ナルってなんだよ?1位神剣の設定はどこいったんだ?
エターナルになるのってすごい大変じゃないのか? なのにナルカナが力を少し渡せばエターナルに近い
眷属、準エターナルになれます、記憶も引き継げます、忘れられたりしませんだと?
前作の苦難って何だったんだって、なんだこれは。 ご都合主義の塊じゃないか。
いい音楽にグラフィックの向上、ゲーム性もいい変化してるのに脚本、設定面が最低と感じた理由が
何でもうまくいくし本人が苦労しないしちやほやされる都合のいい話の流れで、これを正反対のプロットの
前作の続きの話として出してきたという点に尽きます。
いちゃいちゃ+異世界観光のハーレムなんてアセリアの続編に求めちゃいない。
最強武器に人化変化する美少女だとか大統領美少女だとか女王騎士美少女だとか、
前世から関係する神美少女だとかそういった「特別な出生/役職系ヒロイン」属性萌えなんて
永遠神剣シリーズ、アセリアの続編としてはいらないですよ。
「選ばれし者こそすごいんだ!」なんてそんなのを続編に求めちゃいない。
そういうのは新機軸として新シリーズのまったく関係ない新作でやればいいのであって。
作中で望よりももっと人物、人格的にも良く出来たまともな男キャラを配置しながらそっちはただの引き立てのために
代役が主人公に成り代わって主役を演じている劇を見せられているようなもやもや気分を味わってる感覚なのがイラつく。
前世前世という部分は「前世は神だった~(今を生きる人格とは無関係なのにとにかく強調される)」の設定は
キャラクターの人格面がごちゃごちゃしてるくる。パーソナリティーの主体性がぼやけ
前作の設定に干渉するわで邪魔だと思う。何でこんな余計なもの(設定)を持ち込んだんだろうか。
◆さて、一番きつい表現になりますが怒りが収まらない点。
思い出しても腹が立つし怒りが収まらない箇所はとにかく前作の最大の見せ場となるエターナル化で得る力と
代償の部分を後付の設定で都合よく「こうすれば代償なんて必要なかったのよ、簡単でしょ、ちょいちょいのチョイ」って
ナルカナにやられた事。とにかくふざけんな、ですよ。 貴方は超存在になりましたが誰からも忘れられませでしたよw・・って
頭の中でもしもこうならと空想する分には楽しいかもしれないが実際にこんなご都合主義全快やられたら白けるだけよ。
感情移入できる人物は少ない上に感情移入して感動する、泣き笑いする機会さえも奪われるので感動する代わりに
乾いた笑いが出ます。
つまらないのに文章などボリュームだけはすごく多いのでプレイ時間は長くなる(ボイス聴くとさらに長い)。
共感できない主人公、共感できる男キャラの空気化、イライラさせられるヒロインと続編としてがっかりな後付設定の山など
げんなりする要素多数。
常識人がいても非常識な言動や尊大なキャラによる問題ある言動へのブレーキ役になってないし。
シナリオで-25点と設定(続編として持ち込んだ設定+キャラ設定)で-30点。あわせて-55点。それ以外はうまくできている。
評価は人それぞれなのでしょうが前作への強い思い入れがある人ほど拒否反応が出る作品と思います。
まさはる氏の絵はうまいし音楽は悪くないし声優さんの演技もよいと思いますので0点は付ける気になれませんでしたが
かといって(前作への思いが強いので)とても高得点評価は無理でした。
70点以上の評価点見ても「前作やらないで本作品から遊んだのではないかな」と考えてしまいます。
シュミレーションゲームとしては良くできてますので確かにやりこみゲームとしての楽しみ方という観点からでは
やりがいはあるのでしょうね。 そういう部分が評価されたということでしょか、移植もされましたから。
しかし続編としてはどうかといえば私はそこは最低だと感じましたので。ゲーム性だけ高くても困るというか。
続編と言いながら前作の感動性を損ねる「後付設定と脚本とキャラの性格デザイン」が原因で訴求力が失われていますので。
スペシャルエディション=で2007年版に付加したいろいろがあってこの評価です。20007年版なら25点評価ということで。
この失望した聖なるかなで描写された出来事、結末も続編が作られたなら過去にあった事実の扱いで設定として
組み込まれるかと思うと続編の期待度を下げざるを得ない。そこが本当に悲しいです。
新約製作といっても原典の前作が「ご都合主義まみれ(死んだけど生き返れる、とか記憶の引継ぎ)」「性格改変」
「新キャラが登場し、新キャラ一行がいなければ作戦が失敗するなど新キャラありきへの話の展開の改変」などの
改編になるのではないかという不安たっぷりですね。