ErogameScape -エロゲー批評空間-

saisalyさんの英雄*戦姫の長文感想

ユーザー
saisaly
ゲーム
英雄*戦姫
ブランド
天狐
得点
66
参照数
378

一言コメント

神原画と多数の声優による魅力的な美少女キャラゲーム。地域制圧型シュミレーションゲームを謳っているがゲームバランスがかなり(緩すぎる方向に)不出来なために、作業化しがちでかえって地域制圧型シュミレーション部分が蛇足な印象さえある。◆このゲームはターン制で進むのに経過ターンでの強制進行が無い時限なし。シュミレーションゲームとしてはそこが一番悪い部分。◆作品のあらゆる部分ににアリスソフトのゲームへのオマージュを感じる作風。ゲームデザインとしてキャライベントや地域制圧要素の部分や実在の歴史上の人物が関連するという部分については大帝国、 装備品と戦闘、キャラクターの数、一部の登場人物の思考や行動に鬼畜王ランスの影響を感じた。システム周りの利便性に好印象。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

数値、5が平均です。(5以下だと気に入らない部分あり)

キャラクター(魅力、言動) 7
ストーリー(全体を通してのお話、結末) 6
シナリオ(作品中での出来事、キャラクターの行動) 6
ゲーム性(難易度を伴いプレイヤーの操作を必要とする部分の要素) 4
音楽 7
文章 6
グラフィック 9
システム 8
ボリューム(長さの満足度) 7
満足度 6

様々な部分に2000年以降のアリスソフトのゲームへのオマージュを感じる作風だった。
ゲームデザインとしては地域制圧型ではあるがこれは大番長でもなく、大帝国がベースであろうと思う。
実在の歴史上の人物が関連するという部分についても同じく。
キャライベントの個別関連は条件を満たせば発生するタイプとして大悪司だがイベントの時限制限は無い。
装備品と戦闘に鬼畜王ランスの影響を感じた。それから、ストーリーの核心部分の一部にある存在では
鬼畜王ランス、ランスシリーズの神の思考や行動に関する影響を伺えた。

原画は一流、あの大槍葦人さんで、この方の描く美少女は私も気に入っているのでCGはほぼ不満が無い。
絵に関係する部分で惜しいのは、立ち絵が1個だけという事、イベント絵がもう少し欲しい事。
でもこの方の代わりを出来る原画家はいないので仕方が無い。
Hシーン、イベントシーンのCGがもっとあっていいと思いますが、描いているのが一人なので。
その大槍さんの描くキャラクターを演じる声優さんの演技も素敵。

音楽は覚えやすい反面、これ!という曲はなかったように思う。

★ゲーム内容の不満
ゲーム開始後の邪馬台編を進める間にも見ることが出来、その後のプレイでも次第に見かけることが増えた
登場人物の言動の特徴として、最初から違和感を感じていた「現代の日本の社会用語や英語の用語」が
登場人物間で普通に会話として意味が通じ合ってるのが不思議だったり、少し世界観にも疑問を覚える事も。
理由が明かされるまではかなりの違和感を抱いたまま遊び続ける事になり、現代用語が通じている理由を
ラスボスからの開示で知った時も納得はしながら、それでも違和感は消えなかった。
(ラスボスの行った「処置」で英雄は全て忘れているはずなので)

その派生で、現代日本でしか通じない同人用語が出てきて(その言動に特化したような英雄がいる)
遊んでいてその英雄が言動するシーンでは内心少し白けていた所もあった。
上に該当するのが「同人英雄ノストラダムス」、彼女の言動には本作品世界の登場人物の言動としては
強い拒否反応が出てしまった。
こういうのは作風、世界観とキャラ付けが一致する作品に出てくるなら受け容れられただろうなあって。
目立ちたがりクズ英雄、ドMマゾ英雄もちょっと本作品に登場するキャラとしてであればついていけないなぁ。

前述どおり、一部自分としては受け付けない英雄の女の子が存在しているのは事実。
歴史に根ざした人物が女体化とはいえバラエティー豊富に登場するのは結構。だけどこのゲームが見せている
作風と世界観から乖離した言動の登場人物、特に腐女子同人言動を伴う英雄を登場させてしまうと、遊んでいて
世界観や作品に抱いているイメージが損なわれるので、同人文化関連系は必要性が無いなら出すべきではない。

これについてはアマソンも。世界征服をする以上は南米が避けられないのは正しい。
だけどわざわざ現代要素が必要だったとは考えにくい。世界観のブレは作品のブレになる。
いくら世界観がカオスでも基本的にこのゲームは世界文化的に古代~中世が軸の世界観をまず見せているため
1900年以降のテクノロジーや文化は真ボス、主人公【チハヤ】の記憶以外で明示すべきではなかったと思う。
出すにしても出し過ぎに注意して物語の謎が明らかになった際に種明かしで出てくるならいい。

だから、繰り返すが英雄ノストラダムスの言動は度が過ぎる。
キャラ付けとして言動がぶっ飛んでるのは確かに見ていて面白くていいんだけど、作風を壊しかねない同人文化関連を、
それも強制加入キャラによって「さしたる必要性もなく」見せるのは少々やりすぎ。
こういうキャラは出すなら加入タイミングを物語の一番最終盤にするなど慎重にしてほしい。
(少なくともムーが主体の時期の加入は物語上早すぎるし、真ボスが動いて文化の謎が明らかになってから加入、
または二周目以降から限定で加入がふさわしいと私は考える)作品の世界観を大事にしてほしい。

★キャライベント不満
音声入りのイベントは大帝国に通じる「キャラ別のイベント集」タイプで膨大なイベントは音声は入らず、大体は
弱アイテム、資金が報酬であるだけの場合が大半。
地名と歴史と文化に関連した薀蓄集で物語とは全然関係なく、楽なゲームをさらに楽にするだけ。
ターン時限が無いからお金を報酬にされてもありがたみが無いんだがなあと苦笑い。
可愛い女の子英雄が何かするからとりあえず見よう、程度の内容でクリアに欠かせない内容は存在せず、徐々に
溜まっていって宿題のようになりこなすのが面倒になる。
もうちょっと、ストーリーに組み込む形で消化させるのは無理だったのか?このゲームに冒頭自動イベント制はないが
ターン冒頭の自動イベント制を導入すればいいのにと度々思ってしまった。
また、~までの時期に行わないとイベント自体消滅する、という期限制限が無いので
世界が本当に危ういのに未処理のキャライベントを本当に危ない(物語上の)時期に行え、
それらイベントでは英雄の女の子が普通にキャッキャ言ってるんで「あれぇ・・?」ってなる。
イベントも消化できる時限制限がある方がゲームの引き締めになりよかったのではないか。
また、片方しか選べない排他関係キャラやイベントは存在しないので二週目を遊ぼうという気はあまり起こらない。

★ゲーム性の不満、関連してそれによる物語の違和感
ゲーム性要素については戦略性は無いに等しい。理由については以下の通り。
一番の問題が「無限にターンを終了&新規ターン開始させる」が可能な仕様。
要はターン時限制限が存在しない。ターン終了&ターン開始により収入を得て資金で兵数を強化するのが
このゲームの特徴。ターン時限制限が物語の進行上あるべきとこのゲームについては思えるのだが
制限が無いため、いくらでも資金を得、いくらでも英雄の兵数強化ができてしまう。ターン経過を利用した
マネーパワープレイになりがちなのを自分で縛らないといけないので面白みが無い。
この手のゲームとしては「現在の物語の進行度であればこれ以上は引き伸ばせない箇所」を
ターン時限として導入すべきだと考える。少なくとも一周目は。
敵の目的が「闇を集めて隠された目的を達成する事」ならば、無為にターンを何十、百何十と進めて放っておけば
未攻略エリアの英雄がペンダントで洗脳されて倒しにくくなる(解放イベントは別に、通常で仲間にする以外に発生)、とか
最悪、現在の闇の量を示すゲージ(ターン経過で少し、イベントでやや増え、減らす事もできるが
最大まで溜まるとゲームオーバー)でもあればまたちょっと緊張感もあっただろう。
敵もアホみたいに待っているだけっていうのもおかしいから。
これは、真のボス(ムーの後)が出現して正体を明かした後の最終盤であればお話の流れからいっても
無為なターン消化は危険だと思うので。なにせ、世界もろとも消えるかどうかという段階になっている
物語上で『急げ!時間が無い』というムードを出しているのに相変わらず無限ターン経過が許容されては
切迫感が無い。そこへ、前述の通り「イベント時限も無い」のでこのゲームは時限無しが一番悪い問題と考える。

時限が無いのでは作業になる。相手から侵攻して来る、とか仲間に出来るターン時限があれば頭も使うのだが。

(知らない方もいるかもしれないがランス10というゲームがある。
無為にターンを終わらせ、新ターン開始を繰り返すとゲームオーバーになる。敵がいて、大侵略してくる状況を
ターンをただ終わらせるだけで何もしないという形で放置すれば滅ぶ、というゲームデザイン。闇ゲージ的な緊迫感。
このゲームはランス10のようにひりつく緊張感を出す方向性ではない事はわかるんだけど、真ボス以降は同じくらい
緊迫感が無いと物語上おかしいのである)

他には
布都御魂+アキレスは誰でも思いつくだろう。救済措置としてなのか?と考えたがやりすぎな感じ。
そもそもこの、武器と英雄がマッチしない、英雄の戦闘タイプが武具と一致しない場合でも装備できる変さが全般に
あるのだけどね。(銃英雄が剣で強化される等)
私は種類で縛っていいと思う。剣英雄は剣以外の武器は装備不能、宝石など道具は誰でも、全員装備可能 など。
どの種類のどんな宝具であっても何の制限も無く誰でも装備可能である事で難易度の簡単化に拍車が掛かってる。

装備品については入手条件が甘く効果が強大で、こんな簡単に入手できていいの?と。思うものがある。
手ごわいボスキャラを倒したから手に入るとかではなくてキャライベントをこなすだけ、とか。
地域制圧を謳っている割に膨大な薀蓄イベントとターン時限が無い仕様で資金に困らずいくらでも
英雄の兵数強化が出来て、装備品も装備制限も無く効果も強力ではちゃんとシュミレーションゲームとして
ゲームバランス調整をしたとはとても思えない。
ここまでプレイヤーが楽すぎる要素が多くて簡単だとせっかくのゲーム性はこなす作業となっているようで
帰って煩わしくなる。物語を読み進めるために『仕方なく行う」のではこのタイプのゲームでは本末転倒。
無限に湧いて出てくる盗賊も敗北のペナルティが資金1割を失うだけで何の抑制にもなっていない。
苦労したのはロシアぐらい。

★作中で気になる点

英雄か、それ以外しかない。英雄以外はみんなモブ。理解は出来る。
だけど「兵数」として表示されている割には兵は滅多に登場しない。台詞すらない。
そもそも戦闘でダメージを受けた時に減った分死んでるのか?
実際に戦っているのって英雄個人だけなんじゃ?っていうほどに英雄以外の要素が希薄。
兵数強化で9999人状態の大集団のジパング英雄軍団で戦っている、として何処其処へ移動、
ここから脱出という場面でも兵は滅多に台詞さえ用意されない。兵士って本当に実在するのか?

世界の危機という暗示がされているのに破滅や死の匂いが希薄すぎる点。
兵士が死んでいるのか?という疑問も。死の匂いが希薄に感じる理由。
殺しにかかってる感じが希薄(操られている状態で襲ってくる相手からでもこちらはほぼ負傷描写もない)。
序盤のヤマトタケルとベイリン(中国)の時ぐらいだ。
危機感が伴ってくる(本気の危険な雰囲気)のは真ボス登場後からなのはちょっと遅すぎるし
味方英雄の死者は最後までいなかったし、ヤマトタケルには「奇跡」が起きたし、悲惨なのは
ムーと古代の成れの果て英雄だけで。殺している描写、死んでいる描写が薄いので(全く無いわけではない)
「哀」の気持ちにならなくて何とかした時(クリアした時)に達成感が薄い。
そもそも時限ターンは設定されて無いのでラスボスの段階になっても「経過ターン上限のリミットによって
世界が滅ばない」など。

他には
アーサーの変化の理由に思い至らない部分。それまでどんどんと首飾りを壊して英雄を闇から
開放しているのにも関わらず。
パロディ要素が強すぎ(アイドルマスターだとか巨人の星だとか)。オリジナリティを損なうと思う。
真ボスが「性格は女神アリス+行動は鬼畜王設定でのくじら」と、そこまで似せなくてもいいじゃない。
などなど。

ご都合主義要素もそこそこあって、シナリオ点を少し下げています。(7→6へ)

★文章
・きちんと読み直していないのか、間違いが多い。字の抜け、同一字の二重打ち、、打ち間違いがある。
台詞に頼りすぎている。登場人物の語りでの説明が多く、登場人物を介在させずでの描写は上手くない。

音声も、真ボスを本当に倒した後、それ以降のシーン全部で声があるほうがよいだろうと思う。
あそこから後は全部エンディングそのものなので声入りだったらなって思う。

主人公のチハヤについては好かれる理由がヒミコ、アーサー(一目ぼれ)以外について掘り下げ不足。
邪馬台の初期英雄が彼を好くのは理解できるのですが、他国英雄の中にはかなり最初の時点
(ジパング軍加入直後時点)で好感度が高い言動をしている、愛してる状態の子がいるなどです。


満足度としてはゲームの長さは満足しています。これくらいの長さがなければね、と。
だけど惜しい部分がかなり多い。「惜作」ですね。シュミレーションゲームとしては手ぬるく、惜作評価、ADVとしては凡作評価。
好みは太公望ですね。