名作。「大切な存在を守り抜く」というテーマを明確に感じた。「異世界に召喚され」という導入は今や珍しくなく在り来たりだが、呼び出された側がどのような扱いを受けどう行動するかの描写が精緻。召喚先の異世界と地球世界の倫理観の違いによる苦悩に加え、世界、文化、技術、言語、国家、種族の差異も様々描写されるなど、主人公側の立場での描写が細やか。戦闘パートは先々を見据えて効果的な育成をする計画性が必要で、敵部隊の排除の為に小隊の編成、操作や移動、実戦パートでの攻防の際に自軍小隊の細やかな判断を適切に行う必要がある。これを好まず、複雑、面倒だと感じる方はこのゲームには不向き。主人公勢力国が大陸を統一する話なので、話を進めると必ず他国と戦争するが、その敵国がどんな国か(主だった人物や戦士などの実像)の部分。つまり敵国の人物面に存在感が欠如している事は大変惜しい。大幅加筆&書き直し(2019/3/26)
キャラクター(魅力、言動) 10
ストーリー(全体を通してのお話、結末) 10
シナリオ(作品中での出来事、キャラクターの行動) 10
ゲーム性(難易度を伴いプレイヤーの操作を必要とする部分の要素) 10
音楽 10
文章 7
グラフィック 8
システム 8
ボリューム(長さの満足度) 10
満足度 10
大幅加筆&書き直し(2018/2/26)少し書き足し(2018/6/28)さらに書き足し(2019/3/26)
★作品評
物語の評価について、私は全体の主題とお話の結末部分までの結果を「ストーリー」の評価としては好ましかったかどうかを考え
シナリオが悪い、良いという言い方をする場合は各場面(人物と人物の会話、行動、大きな出来事の中の個別の一場面)と捉え
ストーリーとシナリオは別として扱う。
本作品はその両方に満足した作品です。形式はストーリーの続きを楽しむ(物語を進める)目的のADVパートを主として
副次要素に戦闘パート(RPG/戦争シュミレーション)というゲーム要素を交えている作品。
システム、グラフィック、難易度、戦闘シュミレーションにある操作の手間という部分の感じ方は
人それぞれなので苦手と感じる人がいるのは仕方がないとは思う。
もっと理不尽、非親切な設計のシステムや難易度のゲームは数多くある為、相対的に問題にはならないレベル。
システム部分が凝っていたり使いやすかったり原画家のCGがとても美しかったり上手くても
内容的につまらないストーリーやシナリオなら(ただの時間ロスなので)たまったものではないが、この作品は十分に楽しめた。
欠点はあっても魅力が大幅に勝っていると思えた。
キャラデザインなどのグラフィック(CG)、難易度やシステムは、自分の場合は(主観になるが)どれも大幅に減点評価をするほど
問題ではないなというのが実感。
★キャラデザイン
主人公の妹を(グラフィック的に)気味悪がる傾向が多く見られる、というのが多くの感想の読後後の実感だが
そこは枝葉というか(見た目の問題でしかない故に)重要ではないので。
CG(キャラクターデザイン)は身体の目鼻や手足の位置バランスなどに癖があり、外見が苦手という人もいると思う。
けれど、この原画家で無ければあのアセリアというヒロインキャラのよさは生まれなかったとも思う。グラフィックはストーリー全般の
魅力、シナリオ(各キャラクターの心情描写やシーン)の良い部分を打ち消すほどの欠点ではないだろう。
グラフィックに不満をもって大幅に減点評価をする方もいるが、Windows時代になってからは描かれるCGの色合いや綺麗さが
向上した。その2000年代初期であっても当時の多数アダルトゲーム作品を探せばこの作品よりも低い品質のCGはある。
(PC98時代の作品を知る者としてその昔と比較するならば、この作品のキャラデザインの癖は酷評するほどではない。)
ただ、今後リメイク(2016年冬にプレミアムエディションが出た)がさらに行われるのであれば13年以上経過した
現在の人丸氏の画力でのCGが見たいと思う気持ちは強くある。別の作品だけれども「EVE Burst error」のように
同じ原画家によりリファインや書き直しがされればいいのになと。
ベストなのは工画堂のシンフォニックレイン:HDリマスターのようにキャラCGは全部描き直ししイベントCGも書き直した
グラフィックの完全リニューアル。
(CGの構図は同じでCGの作成の為の環境の進化、例えば絵を描くのに便利なソフトウェアの登場にやソフトの性能の進化、
ハード(機械)面の発達による表現力の増加、CG経験の増加により技術が発達した人丸さんの実力など、
2003年よりもグレードアップした今の人丸さんが描くCGで)
このPremium Special Editionのパッケージ絵はすばらしかった。やはり画力、技術面が向上し巧くなっている。
人丸氏のCG集も持っているが、近作は角がいい感じに取れていい具合で、色合い、塗りの個性も失わず上達している。
◆戦闘
戦闘パートは先々を見据えて効果的な育成をする計算的な判断が必要で、相手に合わせて攻防の際に役割を決め
適切な仲間の組み合わせによる小隊を編成し、小隊を操作し、移動させ実戦を行うというもの。
実戦パートは役割分担の判断を行いプレイヤー側で適切な技を配置するというもので乱数の要素は存在せず、ダメージも固定。
その時点での数値が全てで乱数による誤差や差異という揺れがないので実戦パートは例えるなら解のあるパズルのようだと感じた。
攻防共に、与えるダメージの最大化と被害ダメージ要素となる敵の技の打ち消し、ブロックスキルでのダメージ最小化が重要で
移動させる小隊の順番、目的地の判断、、レベルを上げるキャラクターの優先度、習得スキルの選別選択、スキルのセッティング、
攻撃スキル使用のタイミング、防衛時の配置、防衛スキルの使用回数など考える事は多い。
それと、ミッションの達成内容により報酬のマナ量が変わるので、最速最適でのクリアを目指したくなる。
最低でミッションをクリアする事は褒章マナ量の増加につながり、プレイのその後を楽にする助けにもなるので
やりがいがある。
敵勢力、敵部隊の排除という攻略行動の為に小隊を操作したり実戦パートで効果的な自軍小隊の正解的な配置を考えるのが
難しい、めんどくさいと感じる方はこのゲームに全く向いていない。
★設定
突如知らない異世界に連れて来られて、という巻き込まれ導入は今や珍しくもなく在り来たりだが、異世界が舞台だとしても
独自の文化様式、技術、言語、国家、世界の種族などや呼び出され連れて来られた側がどういう扱いを受けて同行動するか
どんな風に描写されるかの問題。
主人公を含めた召喚された人間の出身世界が現代日本なので主人公世界の出身者から見た場合においては異界である
この異世界の言葉の壁も描写されている。
人の奴隷、道具として使役され、生命すらも使い捨てにされるスピリットと呼ばれる見た目が人と非常に近しい種が存在する世界。
魔法的なマナというエネルギーが満ち、そのマナをエネルギー源としたエーテル技術が世界の原動力となっている不思議な世界。
剣と魔法的な力が主体で主な種族はスピリットと人間、スピリットは5種類の色で区別される少女という設定もとても魅力的。
★テーマ性や人物の描写についての評価
召喚された主人公たち地球人はこの世界において戦場で戦う存在としては十分強いが最強でも万能でもないという
人間としては突出していてもスピリットと比べれば突出して強くはない存在として描かれる。
さらに、この世界と元世界との違いである言語、文化、食事、倫理観の違いによる苦悩などの描写が作品に深みを与えている。
物語、文章を読んで「大切な存在を守り抜く」というテーマを作品から明確に感じた。
この作品のテーマは「大事なものを守る」だと思う。
異世界から召喚された場合にそのまま言語での意思が疎通できるといった不自然さもこの作品にはなく、異世界導入部で
言語での意思疎通不能の場面から描かれるのはリアリティがある。
相手が言っている会話の内容さえ解らない不安は想像すればとても怖いものだ。右も左もわからない世界で一番の身内の
妹を人質に取られ戦場で戦士としての戦いを強制させられるという部分が理不尽で恐ろしい。言語がわからない主人公達が
ヨト語を覚え理解し、意思疎通が出来るまでの過程がストーリーに組み込まれている事が他の異世界作品とは一線を画していて
おかげで異世界の異分子である事実に説得力を持たせるのに成功したと思える。
この永遠のアセリアの主人公のユウトは行動的で人間臭い存在であり続けた。
主人公の誰も傷つけたくないという優しさと相反する敵の命を奪う事を、生きる為に、妹の為にと堪え、
葛藤しながら斬りたくもない相手を斬って苦悩したりと、必死で泥臭い。
全てが都合よく(良い方向に)動かないお話なのでそういう趣向が好きな私はとても先が気になった。
主人公は出身世界の常識である人道の倫理観を強く持つ為、人道の倫理によって葛藤する。一方で戦乱の世界にあって自分が
戦士の役目を半ば不本意であっても負っていて、武器をとって戦っていかなければ大切な存在を守れないという厳しい現実を
自覚し、覚悟せざるを得ない。そもそも一介の高校生であって素人なので戦士として強くはなく死の危機にたびたび直面する訳で
厳しい状況でありながらずっと、迷いながら誰かの為に生きていた。
どんなに嫌でも、避けても強制されても、自分の命も含めて。「大切な存在を守り抜く」為には厭わない。
徐々に戦いの規模は拡大し、力も足りなくなる。自分とその周辺の命を守りながら何とか活路を開こうと
懸命にあがいていく姿、その守る対象がだんだん自分の身と妹、ラキオスのスピリットなどの少数だった最初期、
戦乱が拡大してからはラキオス国の国民も対象とし、命だけではなく平和な日々や場などという無形の物までとするなど
大勢へ広がってゆく中盤、やがて作品世界である全体、「ファンタズマゴリア世界」に生きるすべての存在を世界を侵略するほどの
外敵から守りたいと圧倒的大勢へ広がっていく終盤の展開と変化は目まぐるしい。
避けられない死、無常な暴力、切り捨てられるスピリットの命の軽さなどに打ちのめされる。
守りたい物が増えるにつれてそれまでの状況でなら足りていた力が事態が変化するにつれ不足していき至らなさに苦悩する姿、
新たな力を得る必要性とその為の新たな代償。 全てを受け入れる主人公の自己犠牲とヒロインの代償と覚悟の共有。
一番の守るべき存在理由である妹との離別さえも覚悟して踏み出す、そこの描写がとても丁寧だったので私は好感を持った。
(エンディングで、兄妹で写る写真から主人公のユウトの姿が消える演出が切ない)
一緒に戦うヒロインスピリットも打ち解けるまでの様子が丁寧に描かれており、主人公の戦う事の葛藤を和らげ
彼女らの存在も主人公の戦う理由、守りたい存在の中にだんだんと含まれていく為、感情の移入が深まる。
サブスピリットの存在も重要で、決してヒロインクラスのスピリットのように突出した力を得る事もないので物語の未来を左右しないが
見ていて楽しい存在であり、彼女たちがいなければもっと殺伐とした物語になっていたはずだと思う。
それから、同じ日本出身の知人、友人との関係性もお話上に深く関わっており、彼らもまた被害者で巻き込まれる存在として
登場するが、彼らがすんなり助かるといえばそうではなく、無常さ(展開上の選択肢失敗)や感動(展開上の選択肢失敗)が
ずっと心に残る。主人公側の関係者について心情描写をしっかりと行われている点を高く評価した。
◆不満点の箇条書き
1.
ラキオス側の視点なのでほかの国側からの視点もほしかった。主人公周囲+主人公の関係者の人物像や国情の描写は
豊富なのに、ラキオス国と戦っている相手の国家側からの視点が不足しているとは思う。特にマロリガン国以外。
敵対する相手の現状、国や勢力圏についてや敵対相手との絡み、主人公側に侵攻を受ける相手も当然ながら
必死に抵抗を試みるはずなので感情の交錯の表現があれば。
主人公の国のラキオスと友誼を結んでいた友好国が突然そのラキオスから侵攻を受ける事になった時の反応や
滅亡寸前の際の絶望について。
その為に相手の国の関係者やスピリットをもっと登場させて台詞も与えて人物としてきちんと描き、敵国スピリット、
敵国国民の反応、敵国国兵士による滅んでいく様子の言及など、滅亡が描かれていれば戦争という状況の虚しさや
悲惨さが伝わったとは思うのだけど。
ラキオスという主人公勢力が大陸を統一する話なので、お話を進めると必ず他国が滅ぶ事になるがその際の
低手国がどういった国でどういう国でどんな戦士(スピリットなど)がいてという部分が足りない。
つまり、敵国の人物面について存在感が欠如しているきらいがある事について。大変惜しい。
記憶にある敵国の中で、ファンタズマゴリア世界固有の人物であり明確な存在感を有するのは「ヨーティア」「イオ」
「クェドギン」「ウルカ」「ウルカの部下の名もなきスピリット」「ソーマ」とこの程度。竜の盟約なる国動の血盟もあるのに
国を左右する人々は敵側において存在する描写はマロリガン以外は少なく、やや寂しい。
この作品中のスピリットという種族は豊かな人間性を持った存在なので敵国でも一角の人物として名を知られた者が
いてもおかしくないと思うが、敵国についてはウルカ以外は相手国の主要スピリットは大抵が名前だけの存在で
ただ名も無き一兵士を倒してるようなパターンでは味気なかった。戦う相手の顔が見えにくい国があるのが勿体無い。
2.
敵役の瞬の内面の描写も、どうしてあのようにユウトに強い憎しみや敵意を持つようになったのか、人間性が歪みゆく過程の描写を
主人公側があれだけ丁寧に描かれているのだからもっと掘り下げてほしかった。
本章突入前のオープニング導入部で幼少の瞬が登場しており、その時点では素直そうな印象を与える少年なのに
高校の同級生として登場するシーンでは性格が敵意や憎しみに歪み、主人公の妹に執着しているといった具合。あれ?
3.
敵エターナル陣営についても。エターナルはこの世界に関係ないもうひとつの勢力、第三者なので
ファンタズマゴア側以外の視点を持つ存在から語れる、この世界への関与に関する考え方、会話を見たかった。
登場してもただ倒された、名前だけの敵エターナルが目立つ。おそらくは続編はこの作品発売時点では構想が無かったとのかな。
だからネタばらし回避などを考える必要は無かったであろうしそれならばと。
4.
ラストの締めの場面の「外部エターナルの侵入を防止する為に世界に蓋をするシーン(世界内部の大切な人との永遠の別れ)」と
「主人公が選択したヒロインと共にファンタズマゴリアを去るシーン」は専用CGがあれば盛り上がったと思う。
あれは絵で見たかった。勿体無い、勿体無い。
5.
ラスボス撃破後の最終章の後日談がボリュームが少なくあっさりしすぎ。
本編並みの量ではなくてももっと余韻を深めてくれる程度には長いシナリオが読みたかった。
かつて(このストーリー全体の戦い)を振り返ったり限りない戦いを繰り返していった日々についてを。
と、不満点を書き出したが私が感じたこの作品の明確なお話の欠点は主人公側の魅力に対して敵の魅せ方が5段階評価で
味方/5:3/敵、と2つくらい劣ってると感じる点、上の箇条書きのその4、5(終章)は望みすぎかもしれないが後は惜しい。
敵が魅力的なら味方側も相対的に映えるから。
★まとめ
初期バージョンもスペシャルエディションもどっちもプレイしたがやはり「ヒロイン以外の、顔も性格づけも無い使い捨てだった
ラキオススピリットにきちんとサブスピリットとしての人格、グラフィック、設定が付き、今日子らを救えてトキミとともに攻略できる
エキスパンションの要素も加えた追加要素がないと楽しさはまるっきり違う。
あと・・音楽も素敵。通常の戦闘シーンの音楽は浮遊感と幻想性があり華麗に飛行して敵と戦うけれども殺されれば
死体もマナの霧になって生と死の痕跡すら残せず消えねばならないスピリットやこの世界の生命の死についての
儚さが感じられた。
非常時のシリアスさを伝える曲、日常の音楽、シリアスなシーンなどの音楽も印象に残る。
ゲームが進んでいくとどんどんと、好きな曲が増えていく。このアセリアの音楽は好きな曲が多い。主題歌は格好いい。EDの
「この大地の果てで」は歌手の声は女性だろうということ以外、調べても解らない方だけど、この曲での歌唱は最高に素敵。
主人公の心情を想像し、設定やゲーム内の章で状況を考察した上で結構感情移入し泣いたりしました。
今でも思い出し泣きをする事もあり、それぐらいに心に刺さる物語で、不満点を除けば自分にとって大変意義のある作品だった。
全ルートクリア済み。エターナル化した後のヒロインの二つ名はどれも格好いい。
お気に入りはウルカ。誰がなんと言っても私はウルカ。ヒロインは正史でアセリアと確定してるけどそれでも。
永遠のアセリアはこの作品単体で終わらせるのが勿体無い程に設定が壮大で、話の広がりもあるスケールの大きな作品。
この作品だけでは全て消化できないだろうと感じる設定ばかりなので続編向きでそして続編がないともったいない。
だから続編とされる作品が出たのにも素直に納得した。それほどの作品。
ただしその続編とされる作品は酷評、これほどの作品の続編を酷評する事になるとは、この永遠のアセリアを終えた時点では
思ってもいなかった。
(続編の聖なるかなについては話の筋の評価について非常に低く評価。 その理由は非常に長い長文になるが、簡潔に言えば
「クソッタレ(ふざけやがって)」という趣旨で書いたほどに・・
どういう風な感想を書いたかは私の聖なるかなの感想をどうぞご覧あれ。(ここは永遠のアセリアの感想を書くスペースなので)