最後の部分でシナリオが崩れていて、呆気にとられる。
一言で言えば、「奇跡」が何でも解決するような話。
Keyのような感じのシナリオで、最後の最後に「何で?」と感じて終わる。
Keyよりも厄介なのは、シナリオの基幹部分に入っているはずの設定が、「奇跡」で説明も何もかも省略されて、勝手に終わっていることだ。
つまり、冷静に見ると、「シナリオを纏め切れなくなったから、とりあえず奇跡をネタにして逃げた」としか思えない。
また、大問題なのは、シナリオが概ね共通していることだ。
要は「実はXXXだった(大半が魂だとか、心だとか、そういうもの)」が、最後に「普通の人になれた(取り戻した)」で終わるだけの話を、5回も繰り返すことになる。
最初の1・2回程度ならば我慢できるが、終始一貫して同じだと、飽きてしまった。
そして無駄なテキストが多すぎるのも問題だ。
いちいち「無意味な光一の心理描写」を入れてくれたおかげで、無駄に長いテキストになり、面白みを全く感じられなかった。
台詞だけで良いじゃないかと思うところに、台詞の3倍・4倍もの心理描写を入れると、読む側がだれてくるのは明らかであったのに、なぜここを是正しなかったのか疑問に思う。
仮に「心理描写をきちんとすることで、特異性を強調しよう」などと考えたのであれば、それは心理描写以外の部分で行うべきことであって、心理描写に頼るのは、テキストを書く能力が欠けているからに他ならないことを自覚するべきだ。
Clearとやらにしても、どう考えても本編を補足するような意味もないような話で、まさに「取って付けた」という言葉しか思い浮かばないほどなのだが、なぜこんなものを最後に持ってきたのか、疑問に感じる。
Clearで必要だったのは、シナリオ全体が色々と論理破綻をしていることに対する、筋の通った背景であるべきなのに、そこらを無視して、再度「奇跡」で纏めようとするのは、さすがに呆れる部分があった。
演出に関しては、やや力が入っていることは事実だが、シナリオ上の問題とテキスト上の問題が致命的影響を与えている中で、演出に力を入れたところで評価は好転しない。
むしろ、「鬱陶しい演出でCPUパワーを使うな」とか、「もっとテキストスキップの速度を上げろ」というような印象を受け続けていた。
テキスト量から見れば、決して長い部類に入る量ではない。
むしろ、キャラクター分岐からではなく、最初から最後までを通してみるならば、昨今では平均的と言えるだろう。
しかし、上に書いたように、「多すぎる心理描写」と対する「シーン毎の台詞の少なさ」、さらには「ほぼ同じシナリオを繰り返すこと」等が重なり、長いと感じさせていることは明白だろう。
重要なことを無視して、自己満足に走った結果、実に他愛もない代物が出来た…というのが、総合した感想だ。
何か理由がある場合は除くが、取り立てて理由がないのであれば、同じ時間をかけるならば、この作品よりも別の作品をやったほうがよいだろう。