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qwerty1さんの俺たちに翼はないの長文感想

ユーザー
qwerty1
ゲーム
俺たちに翼はない
ブランド
Navel
得点
80
参照数
1044

一言コメント

あえて弱点をあげるとすれば、シナリオの構成だけだ。

長文感想

テキストは非常に優れている。
安易な心理描写に逃げず、的確かつ簡潔、そしてキャラクターの個性を伸ばす。
言葉にすれば簡単だが、このテキストを書くのに膨大な時間がかかったのは、全く無理のない話だ。
今までプレイした作品の中で、最も優れていると明言できる。

また、システム関係についても素晴らしい。
軽快な動作、スキップ時の高速描画、ストレスのない演出、必要にして十分な機能。
ブロックごとのスキップも含め、全くストレス無くプレイできる環境を用意している。

絵についてもケチの付けようがない。
省略されていない一枚絵の背景キャラ、キャラクターの絵も丁寧に書かれている。
違和感を感じないバランスといい、何度も書き直しと調整が加わったことがよくわかる。

シナリオについて、少々残念な部分がある。
プロットで考えれば合理的で十分だとは思うが、ネタばらしの前と後のバランスを少し考えるべきだった。
概ね1:1で構成されているが、本作のメインが「精神の統合」にあるのであれば、個別の場面を削り1:2か1:3にするべきだった。
その上で、前半部分には個別キャラクターに落ち着くことでの統合、後半部分には本作後半部分に個別キャラの支えを加えれば、もっと面白くなったと思う。
とはいえ、このバランス配分は個人の趣味であり、個別のキャラクターが幸せになった方がいいというのであれば、そちらを重点的に考えるべきで、そちらでも十分に良い物が出来るとは思う。
その場合、設定が意味を失いかねないのが問題だが。


総じて、非常によい。
感動系ではないから、受け入れられない人間が多いのもわかる。
だが、個人的な感想として、もっと長く浸って痛かったと素直に感じさせるだけの魅力を感じていた。
次回作にも期待できそうだ。