非常に時間がかかる難点はあるが、大変に出来がよく、シナリオも十分こなれており、楽しめる。
予想外というのも何だが、殆どチェックしてなかった作品だった。
しかし、その認識が誤りだったと、今は感じている。
まず、この作品は非常に丁寧に作られている。
中小のメーカーならば十分に大作と呼べる規模があるし、飽きさせないための工夫を細心の注意を払いながらあちこちにちりばめている。
その結果、確かに時間がかかることは疑いようがないが、熱中してしまい時間の経過を感じることは殆ど無かった。
それとともに、キャラの個性がシナリオの問題点を上手く隠している。
シナリオ単体を見れば、実は破綻一歩手前の相当苦しい話だ。
「いつかどこかで見た話」をなぞっていると思わせるような感じで、痛々しいと感じることは多々ある。
しかし、キャラの個性が終始一貫していることから、シナリオの問題点に目がいきにくい。
プレーヤーはいつの間にか「キャラクター」に目を奪われるようになり、シナリオの問題点は終盤近くに行けばたいした問題ではないためだ。
テキストも極めて優れている。
無駄な心理描写に逃げず、会話だけで成立させる軽快なやりとりは、読んでいると思わず笑ってしまう物が多い。
無駄な正義感を持つ人間もおらず、幼稚な人間もいないため、不快にさせる要素もない。
そして、画像についても非常によい。
一枚絵ばかりではなく、他のあらゆるところに使われている絵は、透明感を感じさせる。
それが軽い感じの本編となじみ、実によい仕事をしている。
もちろん音楽や音声は素晴らしい物がある。
特に声に関しては、プレイ中程になれば、他の声優を使うことなど考えられないほどキャラクターに合っていると感じさせる。
総じて、非常に出来が良く丁寧に作られている。
通常であれば、遙かに高い評価を受けてしかるべき出来だと言える。
1日1時間で仕事のストレスを解消するためにエロゲをしている人には、のんびりとこれをやって貰いたい。