韓国産のインディーゲーム 推理ゲームとパズルゲームを組み合わせた画期的なシステムで、そこらへんの本格ミステリ小説よりもよほど本格的で練られた内容だった。
2024/2/24(土)
NormalENDまで3時間弱
全部を読み返してのTrueENDまで+1時間ちょい
総プレイ時間:4時間
韓国産のインディーゲーム 推理ゲームとパズルゲームを組み合わせた画期的なシステムで、そこらへんの本格ミステリ小説よりもよほど本格的で練られた内容だった。名作
一般的なノベルゲームは、クリックによって先の文章へと進んでいく一方向的で線条性のあるシナリオ構造であり、そこに分岐要素が加わるに過ぎない。対して本作は、ノベルゲームの枠内に収まるのか怪しいほどに(ジグソー)パズル性が強く、「誰の」「いつの」発言なのかが判然としない発言の欠片たちを、横方向(いつ)と縦方向(だれ)に自由に移動させながら、真実の全貌を徐々に浮かび上がらせていくシステムとなっている。クリックで "読み進める" のではなく、プレイヤー自らの推理によって線を繋いで文章を解放し、並べ替えて、錯綜した記憶をもとに戻していくインタラクティブなテキスト構造とゲーム体験。
途中、何度も「もしかしてこういうことなんじゃないか!」と予想したものが何度も裏切られて、しかしゲームの進行とともに着実に真相が浮かび上がってくるシナリオ/テキスト構成とデザインの調整は見事という他なく、ミステリとして非常に上質だった。主体的に取り組まなければいけないのでかなり疲れるが、それだけの価値はあるノベル/ゲームだった。
また、そうした話者と時系列が不明瞭なテキストの断片を整合させるというゲームシステムと、最終的に明らかになる物語のメッセージ・主題が綺麗に一貫していたのも素晴らしい。誰か他人を想うこと、優しくすること、誰かのために行動すること。それはまさしく、発言の話者をスライドさせていくように「誰かに成り代わる」行為であり、そのようなアクションの集積こそが「連帯」となる。こうでなければうまく合わない、正解がひとつしかない排他的(exclusive)なパズルではなく、誰かのいつかの言葉や行動へと寄り添って成り代わっていくことができる、クィアで包括的(inclusive)な可能性としてのパズルゲーム性をこそ本作は志向して体現している。漂うクラゲや力強く歩む犀のモチーフに象られながら、鮮烈で誠実な印象をわたしに与えてくれた。
強いて言えば、縦方向の時系列のピース合わせは、真面目に考えずとも、テキトーに上下に移動させまくることでわりと合致してしまうため簡単にサボれる点は改善できると思う。まぁそのくらいのお気楽さは難易度調整のためにあえて残しているのかもしれないが……(本物のジグソーパズルでもそうだし)。
あと、ラストの2つのエンディング(NormalとTrue)がかなり簡潔なので、一読しただけでは「えっ、どういうこと……?」と置いてけぼりになってしまった。清崎蒼という人物の位置づけもよく分からない。本サークルの前作の主人公でもあると後から知って、じゃあ本作だけではピンとこなくても仕方がないか〜と安心した。