物悲しさ溢れるお話
工画堂スタジオ制作のPCゲーム「羊の方舟」の紹介・感想です。
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1.概要
謝辞
この物語は、一つの可能性である。可能性は揺らぎ、ある時は一つの結末へと収束するだろう。
またある時は、違った結末を迎えるだろう。
だからといって、この物語が虚構であると決め付けることが出来ない。
私は真実を描いている。一つの可能性の行く末を。
この物語を私の愛する人へと捧げる。そして、決してそうではない人にも。
例えわずかであったとしても、そこに意味があると信じて
(羊の方舟:Novelより引用:http://www.kogado.com/html/hitsuzi/)
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2.感想
何処か淡白で、それ以上に無情さ溢れるテキストと世界観。ただ作中で醸し出されている雰囲気は中々良いのだが、
時間にしてみれば、かなり短いので、あまり雰囲気以上に盛り上がらなかったのが少し残念でした。
少し特異性のある状況や展開が見られたが、如何せん唐突気味な物や、そこに至るまでの過程があまり
文中で見られなかったのも、のめり込めなかった一つの要因かもしれない。
個々の持っているエピソードに関しては中々面白いものがあるものの、時間故かそれとも、その個人の中で完結しているか、
はたまた展開する上で不必要、余力がなかったなど、色々な理由などは見受けられるものの、それが短い中で
イマイチ発揮されているとは思えず、結末的にも納得が少なくなってしまいました。
考察の余地はあるが、それに対して感想を抱かせるかというと、そうではないような物語ですかね、能力の起因も含めて。
TUREもTRUEが故に救いがない、というか数々の可能性の一つであることを考慮すれば全ては一つの結末に収束するのかな、
なんて後書きを見ながら考えたりも。それ以上にラストにもう少し盛り上がりのある感動的な物を期待していた僕としては
若干何とも言えない気分になりました。欠けてはいないけど、物足りないという表現が適切な気がします。
最初に公開されたエピローグ3種はTRUEと違い、各個別のエンドのような役割を果たしていて、
物語の本筋的には正解に近いのかもしれないが、やはりBADエンドの形に見えてしまう。
仕方ないこととは言え、やはりこの作品にしか出せない雰囲気はあったのかな、と思います。
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3.小話
個人的に言うならば、あまり考察するのが得意ではなく、その時その時思ったことが面白さの一因として
大きな割合を占めてしまうので、盛り上がらなかったなぁ......
各エピローグや、その話を展開する上で何かを盛り上げる物は持っているのだと思うけど、
それにあえて触れずに淡々と物語が進んでいくので、良くも悪くも世界観やゲームに合っていました。
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4.締め
良くも悪くも「淡白」という表現がよく似合うゲームでした。登場人物や世界観も含めて、
その状況を受け入れている、何処か漠然とした危機感しかなかったのも、死生観などの要素と絡み合っていたのかな。
ただ、それを展開したはいいが、それを終盤まで盛り上げるための要素に出来ていなかったり、寧ろ
その物悲しさを魅せる為に、あえて盛り下げているような印象を受けました。
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評価:B
プレイ時間:約4時間
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