ミステリーノベルです。いわゆるネットで流行ったような、様々な『都市伝説』を特定し、『事実』の元へと『解体』する面白さを踏まえつつ、SNSをはじめとした情報に溢れた社会だからこそ刺さる作品でした。ぶっ通しで読み終えたくらいに面白かったです。
読み終えた今思うのは、ネタバレ厳禁ゲーです。
気になっていてまだプレイしてない人は、ネタバレを喰らう前にプレイをすることを推奨します。
2000円程度ですので。ぜひ。媒体はsteamかswitch、PS5で発売されてます。
【steamURL】
https://store.steampowered.com/app/2089600/_/
以下からはネタバレ込みで、自分用の備忘録感想。
いや~~~~~~~~~面白かった。読み終えた後の達成感がすっごいです。
最初読み始めた1話目「ベッドの下の男」を読み終えた時から、「そういう話だったのか~~」とハマってしまって。
その次のお話も面白くて……と気付いたら、最後まで一気に読み終えてしまいました。
特に最後の最後、SNS等の情報に踊らされる現代社会の醜悪さを皮肉に描きながらも語られる真相が「やっぱりそういう話だったんだな~」と思わせてからの、最後のあの仕掛けね……。
最後読んでた時は、「ナターシャ・サインとツアーのDMハッキング明らかにおかしかったし、まぁそういう話だよね(クイッ」って余裕ブッコいてたところでさらに展開を転がされて……いや~~~~~やられた~~~~~となりました。
ここら辺で脳汁がもうやばやば&達成感でした。
もう一度記憶消してやりなおしたい作品の一つになりました。
以下に好きだった所を簡単にメモ。
①様々な『都市伝説』を事実に『解体』していく面白さ。
この作品の核となる部分ですが、ここが6章どれも面白かったです。
今作品の特徴は
『事件発生』→『都市伝説の特定』→『調査』→『都市伝説の解体(真実)』
と様々なヒントを集め、最後の真相へとたどり着くミステリーノベルでした。
1話ごとに異なる都市伝説を明らかにしていくのですが、これがまたどれもが「実はそういう話だったのか!」となるのがすっごい面白かったです。
『ベッドの下の男』、『異界』、『コトリバコ』、『ドッペルゲンガー』。
その現象だけ見れば恐怖の現象を、登場人物達の関係や過去の出来事を、主人公の念視能力&SNS調査&調査を駆使して一つ一つのヒントをかき集めて事実へとつなげるのが本当に面白くて。読むのもあっという間でした。
長すぎもせず、短すぎもせず、テンポも良いので読みやすく、起承転結のバランスも良くて飽きも来なかったのが素晴らしかった。
そのどれもが面白かったですが、個人的にはツアー編が一番ドキドキして面白かったです。
また、ミニゲーム要素となる選択肢要素や、単語を当てはめていくのも、難しすぎず、同時に話を整理することにも繋がって更に読みやすいのも、更に読みやすかった要因だったと思います。
調査パート等も大体1つのマップで完結するため、迷う事もあまりなく、ユーザーに優しく読みやすかったのも良かったですね。
またこれら一つ一つの話が単話でありながらも、最後の章になって伏線として全てが繋がる面白さがまた最高でした。
特にほんとの最後がね……いやぁ脳汁出ました。
②ドット絵ながらも豊富な表現
今作のもう一つの特徴と言えば、ドット絵の豊富な表現力。
ここも素晴らしかった。
登場人物達のあざみやジャスミン、センター長をはじめ、登場人物達の一人一人の表情が本当に豊かで可愛いんですよね。驚き顔から、泣き顔だったり、ドット絵だからこその表情の良さがたくさんあって、登場人物達に愛着が湧くくらいに可愛かったりかっこよかったりしました。
また、ドットムービーもたくさんあって、一つのミステリー映画を見ているような緊迫シーン等メリハリが本当に楽しかったです。
また、都市伝説の『特定』から『解体』までの、お約束となる演出をはじめ、話の終わりに流れる主題歌であったり。あの独特の感覚がまた癖になって、すごい好きです。
特に、センター長からの質問に正解するたびに、『great!』から『fabulous!』まで反応してくれるのがすっごい癖になってました……。あのテンポすっごい好き。
一番好きなキャラとしては、やっぱり最後まで見ちゃうと、ジャスミンになっちゃうよね……。いやある意味あざみさん好きですけど!いやこうこれはこうなるよね!!!!!!
またドット絵とは別になりますが、ちょっとしたTIPSだったりの作り込みも楽しいんですよね。
人物関係図や、都市伝説の解説、話のおさらい等、そのどれも作品らしさがあって好きでした。
③『都市伝説』という伝承の移り変わりを描きつつ、SNSをはじめとした「情報に溺れる社会」だからこその作品
今作の裏の特徴ともいえるのが、民衆がSNSをはじめとした『情報』に溺れて踊らされて、自分が標的になることも想像できないような愚かさが徹底して描かれる醜悪さだったと思います。
特に調査パートの一つでもある、『SNS調査』の時の醜悪さの再現が本当にえぐい……。
ありもしない噂。誹謗中傷。影響の大きい人物による世間の誘導。自分の価値観こそが絶対の正義であるという、根拠のない自信。陰謀論。
自分に有利や願望に近い情報を根拠もなく鵜呑みにする大衆。
都市伝説ごとに作中で描かれたSNSの有様は、決してフィクションだと言い切れないほどに、普段のX(旧Twitter)で触れてきた光景でした。
最後の章の黒沢の台詞。
「あいつらは正しい情報なんか求めてない」
「欲している情報を流してやれば考え無しに飛びつくんだ」
という言葉がどれだけ身につまされるものだったか。
そしてその悲劇は作中の人物を自殺にまで追い込むものとなりました。
これも決して、他人事ではなくて、まさに『今の現代社会』において現実となっているのがまた刺さる。
以下、廻屋の台詞より。
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間違った情報でも構わず取り入れ、偶像のような悪者を求め作りだす。
そしてそれを叩きのめすことで、平和を生み出した気になる。
悪とされた者は打ちのめされるが、世の中にはわずかな変化すら起こらない。
こんな恐ろしい怪奇現象が他にありますか?
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都市伝説をテーマにしたお話で、このSNS情報に踊らされる大衆を社会風刺した作品へと仕上げてくるバランスがもうたまらない作品でした。
『都市伝説』とは、民俗学を調査する中で、噂が少しずつオカルトになっていき、形になっていくもの。その発生した過程や、その『都市伝説』自体も、現地の文化や風習を反映し、さらに人から人へ噂として伝ってさらに変化していく有様や奇妙さが面白い現象のはず。
しかし、この『人の噂』とはその奇妙さだけで済むことがなく、様々な人々の価値観、意識を歪めていくほどの力を持つ。
『都市伝説』と、この社会を風刺する『情報の毒』の奇妙さが見事に調和する結末が、また最高に面白く、痛すぎるほど刺さる破壊力がありました。
特に、最後の最後、グレートリセットが止められなかった結末がほんとね……。
全ての個人情報が明らかになって、他人に知られることがないはずの、裏垢等が明らかになって混沌としていく社会の様子……。匿名だからこそなんでも出来た社会への復讐劇が、少し痛快に感じてしまった自分が確かにありました。
※※ここからはガチでネタバレ全開※※
未プレイ注意!!!!
④最後の最後の伏線回収
正直に言えば、最後の黒幕の正体が、彼だったのは正直なんとなく予想ついてたんですよね。
作中にも語られましたが、ナターシャサインのハッキングの話が出た時に、ツアーでDMをハッキングした時の話を思い出して、「あ~~~黒幕身内パターンか~~~」ってなって。
そして最後教会に辿り着いて、クライマックスを迎えて、予想通りとはいえ面白かったなぁ~って浸ってたところね。
いや最後の最後やってくれたな!!!!!!!!!!
まさかの!!!!!!!あざみんの一人舞台だとは思わないじゃん!!!!!
言われてみれば!!!確かにジャスミン!!!!あざみとセンター長が二人なところを一回も見たことなかったけどさ!!!!!!!!
いや~~~~、あのPC画面に映し出された廃墟のような風景。あざみ一人でしゃべる様子。あのスチルが流れた瞬間「やられた~~~~~~!」ってなりました。
そもそも味方サイドの主人公も味方も敵方サイドも全部同じ。
脳汁どばってました。
あざみの念視だと思っていた能力は、巡屋の卓越すぎる洞察力によるもの。
センター長の千里眼とは、そもそも本人だったので理解できるに決まっている。
単語を当てはまる時にいつも登場していたセンター長の脳内会話、「最初だけじゃなくてずっと出てくるんだ~」とは思ってたけどまさか同じだとは。
本当のラスト、ジャスミンVSあざみ(あゆむ&あゆみ)になる構図が、あざみのあどけない顔が、髪をかき上げセンター長になるのがもうもうめちゃくちゃゾクゾクしました。
〇まとめ
改めてすごい自分に刺さった作品でした。
もちろん作品自体の面白さもすごい良かったんですけども。
これだけ刺さったのも、なんていうか『都市伝説』の部分がすごい懐かしいんですよね。自分もいい年したおっさんになりましたが、若い頃はニコ厨だったり、2chをかじってたころもあったわけで。
その時に流行っていた、赤い部屋だったり「sm666」だったりも見てました。
特に、今作最後に持ち出された『鮫島事件』も不謹慎ながら、すごい自分自身情報に踊らされたり、一緒に都市伝説として「ありもしない事件をあるかのように」振る舞う姿を実体験で見てきたりしました。
こうした、昔の懐かしいような空気を味わうような感覚がこの作品に会ったのだと思います。
同時に、後半のSNSの情報の社会風刺も刺さる者でした。
自分自身がX(旧Twitter)を嗜んでいるのもありますし、日々のヤ〇ーニュースのランキング上位のニュース、ヤフコ〇のいいねが多く押されているコメントの内容だったりに辟易している自分が確かにいました。
こうした自分もいて、SNSあるあるの情報に偏見だったり、根拠のない情報に飛びついてしまうような難しさがより身近に感じられるからこそ、最後の描写は他人事には思えないリアルさがありました。
まさに今の時代だからこそも面白さだったと思います。
色々グダグダ言ってしまいましたが、バランスも良く、すっごい楽しい作品でした。
もし続編、少しでも続きの話があるのならもっと見てみたいと思うほどでした。
すごい楽しい時間を、ありがとうございました。