舞台は中国の明朝末期(1630年代)。『狼』として、乱世を悪党として生きる主人公が、人身売買の商品の『穂』という少女に出会う事で始まる旅のお話。『飢餓』という地獄の世の中、少女達と関わっていくことで変化していく心境、その裏で描かれる真意、そして旅路の果てに見せる段階を踏んだそれぞれの結末がとても濃密で魅力的です。中国ノベルゲー(中国語ボイス日本語テキスト)ですが、だからこその良さがあり上質でした。
steamでの多くの高評価を得ている作品、かつ中国のSNSのフォロワーさんが絶賛していたで気になっていたところ、ちょうどsteamでセールをやっていたので購入。
1000円弱だったので、どんなもんやろうなぁと思って読んでみたら、いやぁ良い意味で裏切られる作品でした。
話は王道でありながら、中国だからこその文化や風習、社会情勢を取り入れつつ、一つの男女の物語として描いた上質な作品でした。
ネタバレなしの感想は、steamの作品紹介ページに残ってるので、気になっている方はそちらを見られるといいと思います。
https://store.steampowered.com/app/2593370/_/?l=japanese
以下はネタバレありで自分用の備忘録感想。
①今作の特徴 中国産ノベルゲーム
今作の一番の特徴といえば中国生まれのノベルゲームであること。
中国語ボイスに翻訳された日本語がテキストのノベルゲーですが、その部分については特に抵抗なく読み終えることができました。
翻訳については、一部誤りが見られるのは事実ですが、全然気にならない程度です。
ボイスについては中国語であるため理解はできないまでも、声優さんが素人でもわかるほど上手です。特にヒロイン役の声優さんが本当に上手で、可愛さとともに心情描写、感情の揺れ動きが伝わってくるのが本当に素晴らしかったです。
また中国産ならではの社会情勢や文化を取り入れた物語がとても新鮮でした。
それらも、全く知識がない自分でも楽しめるくらいには抵抗なく描かれていたのもポイントが高いです。
むしろ読み終えた後に、当時の歴史が気になるくらいに程よいバランスで描かれていたと思います。
正直言えば、ノベルゲームは日本のお家芸(偏見)だと思い込んでいたので、中国生まれの今回のノベルゲーで、いい意味で裏切られた作品でした。
過去にも海外産で素晴らしいノベルゲーはいくつかありますが、今作品もその一つに加わるくらいには良かったです。
ここから以下は、作品の中身の感想
②良が『狼』から『良』になる物語(序盤~中盤まで)
この作品は、良が『狼から人間』へと心境が変わっていく前半と、その裏で満穂の真の目的と彼女の変化の後半という、二部の構成で描かれていました。
それら二つの変化が辿り着く結末が何よりも上質な物語ですが、まずは良視点の前半から中盤にかけての感想です。
この作品は良が相棒である『舌』とともに、人身売買として満穂をはじめとする子供たちと出会う。
そして、最初は満穂が口をきけない所から、良のことを殺そうとするところで、満穂の『豚妖に殺された姉への復讐』という目的が語られることで、この旅が始まります。
作品を読み終えた今では、彼女の真の目的を理解しているわけですが、読み始めた自分は完全に騙されていました……。きっとこの物語は、「主人公である良とヒロインである穂が、二人で復讐を果たす物語なんだろうなぁ」と安易に思っていたわけで……。
その後も、影絵劇、人食いの村、反乱軍との出会い、一緒のお風呂、一緒の料理、と様々な出来事を経て良が『狼から人』へと変わっていく心情の変化が印象的でした。
「飢餓で溢れた最悪の乱世」を生き抜くためには悪人になるしかないと、盗みから人殺しまでなんでもやってきた『狼』が、子供たちと出会い、触れ合うことで、善人である『良』となる物語。
特に13章の『狼と良』が、まさに良にとって変わり目となる章として一番印象的です。
最初は人売りの対象だった子供たちと触れ合いながら、また料理を振る舞う等の関係性を築く事で、自分が生きるための道具でしかなかった『子羊』だった子供たちが、自分の愛する『友人』へと変わる。
子羊が『友人』と変わっていく中で、子供たちをかつての目的通り『自分のため』に人身売買として売り飛ばすのか。それとも儲けのない『善人』として宿に置かしてもらうのかの決断を迫られる。
この決断が13章の選択でした。
その時の象徴的な台詞、鳶の言葉が印象的です。
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鳶「良、この乱世では、善には代償がつきものよ。
高値で売り飛ばすのか、善人のままでいるのか、どっちを選ぶ?」
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善人でいることは代償が必要。この乱世を狼と生き抜く考えからは選べない選択肢のはず。
だからこそのここの選択肢が、良にとって『狼でいるか、人間となるか』の節目ですが、この選択肢により『応報』BADエンドに行くか、物語が良と満穂の話へと進むのかがまたすごい良いんですよね。
人間へと変わらず、悪人である『狼』のままであれば、満穂に『悪人のままでいてくれた』がために殺される結末。
人間へと変わり、子供たちに贈り物を贈る14章へと繋がっていくと、満穂にとっての『かつての復讐相手の悪人を殺す』という真意と相反する姿となってしまい、その葛藤がさらに次の結末へと進んでいく。
この話の流れがとても好きです。
とここまでが良視点で見てきた感想になりますが、今読み終えた後に思うのは、『満穂はどのような気持ちで、影絵劇やお風呂、そして料理、贈り物を受け取り過ごしたのか』という感想です。どれだけ葛藤した感情を内面に持っていたのか。初見では見通せない彼女の言動の裏が、今だから分かる構図がとても好きです。
同時に、満穂の全ての行動には伏線があったんだと気付ける構図もとても好きです。
なぜ満穂が、影絵劇ができたのか。人間の死体のごまかし方で、ゆでることを思いついたのか。なぜボロボロの靴を大事に持っていたのか。飢餓と人間を食べる彼らへの反応等。そのどれもが、満穂の過去に全て繋がっていたのだというのが、今だからこそ分かる構図が残酷であり同時に魅力的だとも思います。
③BADEND『応報』とノーマルエンド4種類について
以下からは、後半満穂さん中心の感想。後半。
ここで簡単に満穂さんについて整理すると、満穂にとって良は、自分の父親が殺された復讐相手でした。その事実は、満穂の壮絶な過去編を読むことで明かされていきます。
もし、満穂の父親が殺されなければ、家族全員そろった生活がまだ送れていたかもしれない。母親と弟を食べなくても良かったかもしれない。
それらの全ての元凶であるとした彼女の復讐心は相当に深い闇でした。それは、彼女の過去編の執念の深さによってこれでもかと描かれていきます。
最初に『偶然出会った』かのように見えた良と満穂も、最初に殺そうとしたのも、影絵劇も、全ては良を殺すため。しかし、殺すことで他の子供たちが生きていくことができなくなってしまうこと、同時に良と触れ合うことで、良の過去を知り、そして良が変わっていく姿を見ることで、復讐心と同時に良を想ってしまう葛藤を抱いてしまう。これが、良の物語の裏で描かれた、満穂の物語でした。
こうした中で描かれる後半ですが、自分はこの作品の中で、BADEND『応報』とノーマルエンド4種類による段階の表現が一番大好きです。
この作品は、BADEND『応報』と、ヒロインである満穂への選択肢(好感度)によって
(1)無言 (2)逃げろ (3)見えず (4)餓死(トゥルーエンドへ続く)
と4種類のノーマルエンドに分かれていきます。
この『応報』エンドと4種類の結末が、満穂から良への想いの深さによって満穂の『苦渋の末の決断』として出される結末なのですが、この段階による描かれ方がとても上手なんですよね。
③-1『応報』BAD
まず最初のBADEND『応報』は、良が子供たちを売り飛ばす決断をする『狼』のままでいるがために、満穂によって殺される終わり方。
それは、満穂が良を泣きながら首元を刃で刺す結末でした。
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満穂「良……お前は変わってくれると信じてた。でも何も変わらなかった。
お前に同情するところだった。そんな昔の自分が憎い……。
お父さんを殺し、私の家族を破滅させた……それだけじゃない。
ほかにも大勢の人を殺めてきただろう!
良、よく見て!目をしっかり開けてよく見て!私こそが、復讐のためにお前を騙し続け、最後にトドメを刺す者だ!」
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後のノーマルエンドを見た後だから分かることですが、この『応報』の終わり方は、満穂にとって『自分で行動して』良を殺す事ができる終わり方なのが特徴的でした。
ノーマルエンドでは、どうしても『自分の手』で殺すことができないからこそ、役人に殺させる結末。しかし応報は、満穂自身が殺す。
その違いは、満穂にとって『良』という存在が、悪人でしかやはりないのだと決定的になったからこそであり、同時に良への想いも溢れるからこそ涙を流してでも殺すしかなかったこの結末が本当に綺麗です。
また初見時には、ここで初めて、『あっ満穂の真意ってそういうことか』と気づく場面でもありました。ここで、一気に物語として深まりが増すのもまた良いんですよね。声優さんの台詞の表現もとても心地よく、好きなBADENDでした。
③-2ノーマルエンド 各種
ここからはノーマルエンドの感想。子供たちと別れ、満穂と良の二人が「洛陽城」に辿り着いた後で描かれるお話。
満穂にとっては、良は殺したい復讐相手に変わりませんが、自分の誕生日に靴を贈り物として与えてくれたことが、どれだけ彼女にとって衝撃のあったことなのか。
これが決定的になり、「応報」BADENDのように、自分の手で殺すことが出来なくなった後のお話です。
上にも書きましたが、ここからは満穂の好感度によって結末が変わります。
この好感度=『満穂から良への想いの深さ』によって、満穂の良への行動が変わるのがすごい好きです。
(1)無言
まず好感度が一番低い場合の「無言」エンド。
花火の後、良が満穂の前から黙っていなくなるのは他ノーマルと同じですが、ここからの満穂の行動がそれぞれで違っていきます。
今回の場合は、一番好感度が低いのもあって、良に対してこれから起こることを何も告げません。ただ父親が持っていた小袋を残すことで、満穂にとって良は復讐の相手だったことを告げる。
全てを理解した良は、この時「どうして自分を今まで殺さなかったのか」と困惑するわけですが……。彼女の葛藤の果てがその全てでありまして。
そして、その後、満穂を探そうと街をさまよっていた所、突然役人に「親王暗殺計画」の犯人の一味としてとらえられ処刑。というのがこの結末でした。
満穂は、もう一つの目的であった妖豚を、「良」の人相書きの絵を持ったまま暗殺しようとして失敗。二つの目的を同時にこなそうとしたという狡猾な計画でした。(賢すぎる……。
これは、「応報」エンドと違い、自分の手で殺すことができなくなった彼女にとって、最後まで『無言』のまま良の前から立ち去り復讐を遂げる。良は彼女の真意が分からないまま死んでいく。まさにタイトル通り『無言』エンドでした。
まぁ主人公の良にとっては、報いとは理解しても、満穂のことを理解できずに死ぬので、BADENDですね。
(2)逃げて
下から2番目に好感度が低い場合の「逃げて」エンド
「無言」エンドと同様に、人相書きを持ったまま豚妖を暗殺しようとし良を巻き込もうとします。大きく違うのは、満穂が消えた次の日の朝に「逃げて」と良にヒントを与える。良は満穂が自分を復讐相手であったことを理解し、同時に「逃げて」ということは、満穂が自分にとんでもない何かをしたのだと推測できるのが、大きな違いでした。
それは、満穂にとって良が死んでほしい復讐相手であり、同時に『逃げて』もほしい、という葛藤の末が表れた行動でした。
そして結末も当然違ってくるわけですが、これがまた好きなんですよね。
逃げる余裕があったので、今回は捕まる前に情報を収集して、自分が暗殺の容疑をかけられていることを理解。
だからこそ、今回は武器をもったまま役人に対抗することができる。
それは、良が狼になる前に志したように義侠の姿で生きられる選択肢が取れることでした。
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良「豚妖は人々を殺した!数えきれないほどの子供を虐殺した!
今日、暗殺が失敗しても、必ず意志を継ぐ者がいる!」
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かつて憧れた、侠客の姿で終わることができる。
自分の人生の最期のあだ花を、かつて夢見た姿で終えることが出来る。
それは、復讐を遂げたい満穂にとって、彼女が良に許した最後の選択肢だとするなら、そこに彼女の優しさの葛藤があると思えるこの終わり方が、何よりも好きです。
(3)見えず
好感度が満点ではないが、好感度が高かった場合の終わり方。「見えず」
この終わり方が一番好きで、同時に一番残酷な結末だったと思います。
この結末の違いは、満穂はそもそも上二つのように、良を殺すことが出来ないため、人相書きの絵を持ったまま豚妖を殺すという行動をしないエンドでした。
それは、満穂にとって良が『復讐相手』ではなく『かけがえのない存在』へと変わってしまったからこそでした。
良を殺せなくなった満穂、しかし復讐相手でもある良の前にはもういわれない満穂はどうするのか。それが描かれたのが、『見えず』。
満穂が選んだ結末は、湖への入水自殺でした。
湖の淵に残されたのは、良から贈られた靴。
満穂から良へ、『自分の復讐相手はお前だった』と告げると同時に、姿を消す結末。それは、良にとっての大事な人を失くすと同時に、『なぜ自分を復讐相手として殺さなかったのか』と、永遠に苦しむ結末。
まさにこの真意が『見えず』、永遠に答えのない結末こそが復讐なのだと分かるこの終わり方が、何よりも一番残酷だと思います。
同時にこの結末は、良がずっと満穂のことを想い続ける終わり方。
満穂が良のことを、『復讐相手』よりも『想い人』の気持ちが天秤で勝ってしまったからこその、この結末が何よりも綺麗だと思います。
一番好きな、終わり方です。
(4)餓死
4つ目。満穂の好感度が最大だった場合。同時にTRUEエンドへと繋がる結末。
『見えず』と違い、満穂は湖で入水自殺をせず、湖に下半身だけ入水した状態で良に見つかる展開でした。
そして良に、「なぜ自分を殺さない」と問われ、満穂は剣で良の胸を刺す。しかし少し刺しただけで、胸をえぐることができない。殺すことができない。
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お前に会う前、私は毎日毎晩、四六時中お前をどう殺すか考えていた!!!
私はお前の名前を覚え、何度も口にして、お前をどう殺すか考えていた!
(中略)
なのに……どうして私にはできなかったの?……どうして私は気が変わったの?
自分の手で殺すことも、人の手で殺すこともできなかった。
私は復讐を果たせなかった。父にも、家族にも申し訳ない……どうしてこんなに役立たずなの……うううう……」
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この場面、彼女が今まで隠していた真意を全てを泣きながらさらけ出す。
この満穂の台詞部分、声優さんの演技がたまらなく好きです。
今までの彼女は仮面をかぶっていたのだと、これが素の彼女なのだと分かる迫った声が凄く好きです。
そして、良は『自分は満穂に殺されて仇を討たせてやるべきだ』と考える一方で、そもそもこれだけの結末を引き起こしたのはなぜだ?と考え、この世界の在り方を壊すべきだという考えに進むのがこの結末でした。(TRUEエンドについての感想はまた別に)
ここまで4種類ノーマルエンドと応報BADの感想を書いていきましが、やはりこの『満穂から良への復讐心と想い人』の天秤の段階があるからこそ描かれていく結末の違いがたまらなく好きだったなぁと実感します。
この葛藤部分の描かれ方こそ、良と満穂の関係性の真骨頂でもあると思います。
④TRUEエンドについて
TRUEエンドは、満穂が良を殺せないとした後に、良が『いや、この乱世の在り方がおかしいからこうなったのだ!』と、満穂のもう一つの目的である豚妖を殺すことを目標にした結末でした。
そして、満穂と良と一緒に豚妖を殺す『共に死す』か、闖軍に入る『共に生きる』の二つの結末へと辿ることになります。
まぁ、評価が分かれそうだなって思います。
ここまでの流れが綺麗な所で満穂が良を殺せないと停滞したところ、良が「何かがおかしい……これは豚妖をはじめこの『飢餓』の乱世が悪い!」と大局観に目覚めるのがちょっと急だなってのは正直あります。
満穂のもう一つの目的である『豚妖を殺す』ために、良の自分の命を満穂に捧げるというのは好きですが、ここは生殺与奪を握る満穂さんから描かれて欲しかったかもしれない。(素人な意見かもですが……)
ただ、結末としての描かれ方はすごい好きです。
『共に死す』では、良はかつて夢みた侠客の姿として、二人で豚妖を殺し、そして最後は満穂とともに死ぬ。
最後まで二人が一緒にいられる終わり方。二人の中では一番のハッピーエンドでした。ある意味一番綺麗だと思う。
満穂さんの、影絵劇が今までで一番声の張った堂々とした姿であった描写が何気にとても好きです。
良にとっての影絵劇は悪夢であり、満穂にとっての影絵劇は父親との思い出。
そして良と満穂の旅の中で描かれた二人の影絵劇の終着点が、最後の最後に豚妖を殺すきっかけとして描かれる流れがすごい好きでした。
なんていうか、こっちは、最初から最後までの流れが映画のようなきめ細かな感じがすごい好きです。
『共に生きる』では闖軍に入ることで、闖軍とともに豚妖を殺す方法。
すぐに殺すことができるわけではないので、5年ごとに洛陽の二人がいる湖で報告をするようにと二人の間で約束が交わされました(ハリセンボンの約束、中国にもあるんですね……それとも翻訳による?)
そんなこんなですが、その後に描かれたのは9年後。
初見時には、5年の約束は!?ってなるわけですが、実際に豚妖を殺すことができたのは9年後でした。
そして良はかつての目的を果たしたことで、闖軍を抜け、一人大河の側で寝そべっていたところで、大人になった(超美人)の満穂さん(20歳)と再会し二人で生きる幸せエンド。良さんの命は満穂さんが握り続けているわけで、いつか殺すというけれど、その『いつか満穂が殺すまで』は死ぬなということでもあり、二人はきっとこのまま関係を続けていくのだろうという終わり方です。
いや~~~~~~~なんだろう、このしまらないマッタリな感じ。
すごい誤解を与えそうですけど、私はめっちゃ好きです。『共に死ぬ』エンドも綺麗ですけど、やっぱり良と満穂には幸せな人生を描いてほしいとも思うし、かつての子供たちとも再会してほしいとすごい思うから、この終わり方も好きです。
なんなら、良さんは満穂さんに尻を敷かれてほしいとも思いますし、何が言いたいかというと、アフターが見たいので、この続きをどうかお願いします。って思うくらいには好きです。なんだかんだ登場人物のみんなが好きだなって思います。
『共に死ぬ』と『共に生きる』、対極的な終わり方だとは思いますが、それぞれに違いがあってどちらも好きです。
⑤この作品の『飢餓』について
この作品のもう一つの特徴といえば、『飢餓』に対する描かれ方でした。
特に、TRUEエンドを迎えた後の言葉
『この作品を【もう餓死者が出ないように】生涯をかけた人たちに捧げたい』
の一文はとても印象的です。
その言葉を表すように、作中の飢餓への地獄の描かれ方は想像以上でした。
女や子供を食うことでしか飢えを満たすことができない村。
満穂の過去、弟や死んだ母親を食べる展開。
逃げる道中に、男から食べられかけてしまう展開。
飢餓のあまり木を食べてしまうと、出すことができずお腹が出た状態で死んでしまうこと。
それらの表現があまりにも生々しく表現されているのが、とてもえぐかった。
最初の飢餓シーンに出会うのは、本編の人肉を食べることでしか生きていけない村でしたが、最初は頭が理解を少し拒んでいたのも覚えています。
自分から好んで食べるカニバリズム的な話は読んだことあるものの、私自身、あまりこうした『飢餓』という部分をここまで描いたものを読んだことがなかったので衝撃でした。
飢餓はあってはならない悪だ、と強く思わせてくれるのも、この作品ならではだと思います。
⑥まとめ
面白かった~~~~~~~~~~~~!に尽きます。
同時に、これだけ面白かった同公式ブランド(?)の1作目も絶対面白いんだろうなぁって思います。こっちは日本語化されていないのが悲しい……。
どうして、中国でファンサイトが作られるくらいに人気なのかよくわかる作品でした。
シンプルに満穂さんのお風呂シーンであったり、彼女の可愛さに声優さんの声が相まって、さらに魅力的だったのもすごい良かったです。
しかしこれだけの『飢餓』の高水準な表現があるなら、R18verを見てみたかった……と思うのは贅沢でしょうか(失礼かもしれない)
でもそれだけこのえぐみがとても素晴らしかったのが感想です。
またこのえぐみを持たせつつ、その中で『良と満穂』という二人の因縁、関係性を描き切るのが本当に素晴らしかった。それぞれの想いの深さがあるからこその結末が分かれるのも、ノベルゲーならではの良さだと思います。
王道なお話でした。
とても面白かったです。
ありがとうございました。