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merunoniaさんの久遠の彼方の長文感想

ユーザー
merunonia
ゲーム
久遠の彼方
ブランド
信馬鹿(信じた馬鹿が俺だった)
得点
98
参照数
523

一言コメント

SRPGの傑作でした。私のGWの約50時間が溶けました。けれど、それでも後悔しないくらい遊べて良かったです。同時に終わった後、もっと登場人物達の掛け合いが見たかったと思うほど愛着も湧きました。まさに『繋がっていく』物語だったと思います。素晴らしかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

※ネタバレありの感想です。

SRPGの傑作フリゲでした。
最初から最後まで夢中になるほどの作品で、50時間夢中になりっぱなしなほど楽しかったです。
私のGWの50時間が溶けました。しかしプレイして本当に良かったと思えるほど楽しかったです。

本作の魅力は挙げればきりがありません。
・敵や味方が入り乱れながら話が絶え間なく進む重厚なストーリー。
 貴族と平民、ファーブルトン後継者争い、勇者と魔王、人類派閥と魔族派閥、現在と過去と未来……。話が進むにつれて重厚になっていく、最初から最後まで面白く、 50時間があっという間でした。

・話が進むほどに、世界観への理解の枠組みを再認識させられる展開。
 特に、10話の『貴族と平民』という構造から『魔族と人間』という構造が加わったり、20話の『過去(500年前)と現在』のお話であったり、最後の29話『現在と未来』と、物語そのものの構造が変わっていく面白さが本当に面白かったです。

・ずっと見ていたいと思うほど、愛着が湧く登場人物達。
 時には敵になり、時には味方となり、登場人物達それぞれが思惑、信念を持ち折り重なる展開。その掛け合いは最初から最後まで、終わった後もずっと見ていたいと想うほど素晴らしい物でした。
 特に、クオンガチLOVE勢の女性キャラ達がみんな面白すぎます。もう本当に何度ニヤニヤしたことか……。彼女達以外にも、それぞれの関係から成り立つ会話の掛け合いがもうもう本当に楽しくて仕方なかったです。

 なんていうか、作者から登場人物達への愛がすごいんですよね。
 それぞれの登場人物達同士の縁や関係性の築き方が本当に上手で、全員が全員とも出番や特徴がしっかりあって。特に最後の最後、みんなとの会話ができるRPG部分は、「もう本当に終わってしまうんだな」という愛おしさと寂しさを猛烈に感じるほどの愛しさがありました。

・SRPGのゲーム部分の、物語を邪魔しない遊びやすさのバランス性。
 ゲームオーバーになっても経験値が引き継がれる等、遊びやすい配慮も良かったです。またゲーム部分の、敵と味方の数、NPCによるバランス等も本当に上手だったと感じます。敵の配置1つ1つもすごいこだわりを感じます。

・ストーリー性の一部でもある、戦闘アニメーションの演出。
 一つ一つの技のアニメーションが物語性に直結してるんですよね。
 特に、サツカ戦の今まで見てきた技を登場人物達全員で連携するシーンはもうもう最高に盛り上がりました。


と、全部を挙げればキリがないほど魅力の詰まったゲームでした。
もっと細かく感想を書いてしまうと書き切れないと思うほどです。
その中でも、備忘録として書きたいと思うのは、最初と最後の台詞の『繋がる』部分です。

本作は、幼少期のクオンとカナタのやり取りから始まります。
その時の、幼少期のクオンの台詞。
──────────────────
【クオン】
『……私はちかう!
このトウガ国にえいこうと、はんえいをもたらし
そしてすべての人々に祝福を!』
──────────────────

そして、物語を終えて、500年。最後のシーン。
サツカは最後に言いました。
──────────────────
『私は誓います!人々に栄光と繁栄をもたらし
すべての人々に祝福を!』
──────────────────

この物語による人々の笑顔と幸せのために紡がれた、様々なものが、
まさしく『久遠の彼方の未来』まで、繋がれ、また繋がっていくのが分かる終わり方がもう、本当に、素晴らしすぎて、気持ちよすぎます。

この物語は、クオンや様々な視点を通して沢山の人生、縁、変化を体感しました。
魔法が使える特権階級の『貴族と平民』社会の構造。
人間にとって脅威であると決めつけられてきた眠り子による『人間と魔族』
同じ人間の国同士の争い。ファーブルトンの後継者争い。種族の争い。
それら全ての過酷さを体感しながら、クオンは『全ての人々が笑顔』でありたいと共存の道へと辿るお話であったと思います。
それは作中でも生半可なものでは無いと、最後まで多くの登場人物達から語られました。
理想論、現実的ではない、少しでも共存の方法を違えるとまた戦争状態になる。
実際に1話から体感してきた過酷さは、実際にプレイした通りです。
それでも、クオンは諦めない、多くの魅力的な登場人物達に支えられながらも成し遂げたのがこの物語であったと思います。

そしてその何が好きかって、この想いが実際に『500年後のサツカの世界』にまでしっかり繋がっているのが分かる終わり方なんですよね。
もしかしたら、かつてのサツカのもう一つの世界のように滅びるかもしれない。人類と魔族の差別を残したまま、戦争となるかもしれない。
こうした未来を回避して『全ての人々が笑顔であってほしい』という、実際に50時間プレイして体感したクオンの想いが、500年後のサツカの世界、きっとその先も『久遠の彼方の未来』にまで繋がれて行くような終わり方が本当に大好きでした。

500年前のカジェーダスの想いは、かつての友であるクオンの技と剣を強くしたい想いとなって繋がっていき。
そしてクオンの人々が笑顔であって欲しい想いは、500年後のサツカの、魔族と人間が幸せな世界へと繋がっていく。
いつまでも想いは繋がり続ける『久遠の彼方』まで。

こうした想いの繋がりを体感できる面白さ本当に好きでした。

50時間見事に溶けましたが、遊んで本当に良かったです。
もっと登場人物達の掛け合いが見ていたかったです。
なんならカルディナさんの子供や、サツカ、他クオンたちの子供たちみんなと冒険するお話とかめっちゃ見たくないですか……?
それぐらい大好きでした。
ありがとうございました。

PS.
一番大好きなキャラは……みんな大好きですが、一番だとメリさんでした。
またジャレビちゃんのいつも和ましてくれるのも大好き。
でもやっぱりみんな大好きです。