『ずるい』(誉)の一言に尽きる。掛け合いや、ノベルゲーならではの工夫等、これだけ水準の高い『自由さ』があるからこその作品なのが本当に。
前作等は未プレイの感想です。
※※※ネタバレ全開です※※※
プレイ終えた後の感想です。プレイ後にそのまま書いた感想です。
はい、完全に油断してました。死角から刺されました。最後の真実に、平衡感覚を失うような感覚を味わったのはものすごい久しぶりです。
とにかくこの作品に一番当てはまる言葉を出すなら『ずるい』の言葉です。(もちろん誉め言葉で)
最後はもちろんですが、もうもうもう全部ずるい。
まず何がずるいかって、最初から全部の話が面白いんですよね。
夫婦である重蔵と蛍の掛け合いしかり、周りの登場人物達しかり、みんなが魅力的。
また、一つ一つのセリフ回しや掛け合いで、『本当に信頼し合っているんだなぁ』って思わせてくれるような心地よさがふんだんでした。
展開もテンポ良く読めるため、次はどうなるのかと先が気になる緩急の付け方も上手い。
全画面表示のテキストの使い方、効果音の使い方もはじめ、楽しませるような工夫の仕方も上手い。
これら全てのレベルが素晴らしく高いから、1話~3話まで読んでいる間に、この世界観、登場人物達に愛着が湧いてしまって、幸せになってほしいと願ってしまいました。
特に、3話の最後、蛍と重蔵の間に幸せな子供が出来た時には、もうもうもう本当に素敵で、幸せな気分になっていました。
だからこそ。
だからこそ、4話の展開が本当に辛かった。
1話~3話まで、起承転結の転に壁があったとしても、ここまで絶望的な展開はなかった。
油断してたんですよね。
これだけ夫婦の幸せな関係性を描いてくれたんだから、危機があったとしても夫婦できっと乗り越えてくれるような、絆、信頼関係があってこそのお話が描かれるんだろうなぁって。
漠然と思っていたんですよね。
今まで、ここまでシリアスな情景を全く見てこなかったから。
完全に油断してたんですよね。
まさか蛍さんが、亡くなってしまうなんて思わなかった。泣いてしまいました。
どんな時でも、『蛍さんがいたからこそ』、『大切な人がいたからこそ』、生き抜くことができた重蔵さんが。
独りだったら死んでいた時でも、『大切な人を守る』と決めたからこそ生き抜けた重蔵さんが。
もう、あの夫婦の掛け合いが、見られなくなってしまう、絶望する重蔵さんの姿が本当に辛かった。
けれど、それでも、生まれた子供に、『蛍に誇れるような男なんだ』と、言えるような生きる目標を見つけた4話の最後が本当に素敵でした。
大切な人を失くしても、また新たな大切な人を守るために生きると決めたあの姿が本当に素敵で。
とても感動してたんですよね。
はい。完全に油断してました。
何度目の油断だよって。二段構えとは思わないですよ。
真実を見ました。
いや確かに、今思えばそうだなって部分はあったんですよ。
あの蛍さんを襲った衣笠の男は誰だったのか。
哲哉の『同じ傷を与える』と1話からほのめかしてた異能ってなんなんだったのかって。
それ以外にも、確かに、蛍の許嫁や、白庵の話等色々あったんですよ。
全部、全部全部、重蔵と哲哉の二人の話に集約してくるとは思わないじゃないですか。
重蔵から見てきた綺麗な世界の裏側が、こうなっているとは思わないじゃないですか。
哲哉が、悪霊自身となり、自分の臓器傷つけて伝染させたとは思わないじゃないですか。
あの、弥生ちゃんが、死んだ母を乗り越え必死になって、重蔵が蛍の死を乗り越え必死になって、全ての悪霊を退治した発端がこうなっているなんて思わなかったじゃないですか。
『闇を奔る刃の煌き』というタイトルが、【刃の煌きが 闇を奔る】
とかつての親友の哲哉に、『蛍雪』が突き立てられたと、
このタイトルはここ全てにあったのだなと、思うわけがなかった。
もう真実の話を聞いて、頭の中は「???????」状態で埋め尽くされました。
世界が本当にひっくり返るのはこういうことかと。平衡感覚を失うのはこういう感覚なのかと。
ノベルゲームでこの感覚を味わったのは久しぶりです。
もちろん、作中でも補足があったように、きっと蛍さんがいたら反論してくれたとは思うんです。
『哲哉からの視点のお話なだけで、他の見方もきっとあるはず』だと。
代わりにせめてここに愛する息子がいたならば。
けれど、あの時、重蔵は独りしかいなかったから。
いやそれでもきついです。めちゃくちゃきついです。
めちゃくちゃあの世界観、登場人物達が好きでした。重蔵と蛍の二人が本当に大好きでした。
いつまでもあの信頼関係を、見ていたかった。やり取りを見ていたかった。
あの二人が築いてきた信頼関係や、周りとの縁がとてつもなく大好きでした。
愛着が湧いてました。
だから、最後の真実が言葉を失うくらいきつかった。
もう本当にやられたの、ずるいの言葉ですよ。
ここまで掌の上で踊らされるとは思わなかった。
ここまで、この世界観を、舞台を、今まで培ってきたものを転換させることができるのかと。
これだけの体験をしたのは久々でした。
ただ、間違いなく言えるのは、最後の体験までも含めて、全部面白かったのは間違いないわけで。
間違いなく最初から最後まで飽きはなかったですからね。
それらも含めてすごかった作品でした。
自分はノベルゲームをやる時に、漠然と「~~~とか良いなぁ好きだなぁ感想に残したいなぁ」とか思ったりするんですよね。
今回の場合は、1話~3話までそれぞれ区切って感想書きたいなぁ~~~~って思うくらいには、それぞれが本当に楽しくて。
ここまで漠然と思ってた感想が最後に吹き飛んだのは久々でした。
いやもうこんなん味わったら、最初の方の話の感想を素直に書けないじゃんって……。
それだけ滅多にできない体験ができたと思えば貴重な作品であったと思います。
これも傑作の部類に入るんだろうなと思います。
ぜひこれは、前作や設定資料集も読まなければならない、と感じました。
以上です。
ありがとうございました。
重蔵と蛍を除いて、一番大好きなキャラは、小菊ちゃんです(かなや弥生ちゃんも大好きだけど……)