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masitonさんのScarlett ~日常の境界線~の長文感想

ユーザー
masiton
ゲーム
Scarlett ~日常の境界線~
ブランド
角川書店
得点
80
参照数
842

一言コメント

ゲームとしては短いですが、完成されたシナリオは上質です

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

シナリオが実質1本だけなので、ゲームとしての総プレイ時間は短くなります。
ただ、1本のシナリオとしての長さは決して短くはないです。

1つだけ即バッドエンドの選択肢がありますが、基本的に選択肢による分岐はありません。
これならいっそ選択肢を無くして、読ませることに集中させても良かったかも。
それでも充分、勝負できるだけのシナリオだと思います。

キャラは全体的に好きです。
特にギリセーフ時代の美月は、オンでしっかり・オフでだらしない、はっきり具合がかなりツボです。
新キャラの百合子は追加シナリオでしか出てきません。
プレイ時間が短いのも加味すると、<Intermission>を増やすか、
オフ部分のおまけシナリオがもっとあれば、だいぶ評価が上がった気がします。

シナリオ本編中でも、日常部分の描写が少ないように感じます。
それもあってか最終章<日常>までに、しずかと明人がどれほど親密になっていたのかが、少し理解しにくいです。
親密になる過程の描写が薄いので、セシブル島に送られた明人をしずかが追って来た時、
「いつの間にそこまで強く結ばれてたの?」というのが正直な感想でした。
ただそれでも、ここで流れる曲『Border』が反則的なまでに合っていることもあり、この場面は感動しました。

そして第4章(PC版の第3章)、<縁>は、好みは別にして物語として質が高いです。
しずかはイリカのクローンなので子供のころは当然瓜二つですが、大人になると微妙に違います。
ただの親子であるエレナとイリカの方が、よっぽど似てます。
不思議ですが、しずかは八郎が育てたので環境が変われば・・・ということですかね。
性格も、子供のころはとても素直だったのにどうしちゃったんでしょうか(笑)

システムは快適な部類です。
ただ1つ、タイトル画面から“START”で章の頭から開始する状態の時は、
自由にチャプターを見返せないのが不便です。
それから既読スキップが速いですが、何回も繰り返す作品ではないのであまり重宝はしません。