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kazamiさんのカタハネの長文感想

ユーザー
kazami
ゲーム
カタハネ
ブランド
Tarte
得点
95
参照数
0

一言コメント

『女の子はお砂糖とスパイスと素敵なものでできているのよ』 ヨーロッパの美しい歴史ある街並みを背景に、心優しい人々の織り成す心温まる人間模様。そして、悲劇。丁寧に描かれる日常の中で、時折、じわりと目尻に熱いものがにじんでくる。確かに“女の子同士系”であり、ほのぼのとした童話的な雰囲気に終始しているので、刺激を求める人には向かないと思う。ちなみに、フランス菓子と言えば『マカロン』なのだね。今度、食べてみたい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作は、TRUEルートをプレイして初めて価値がある作品です。

夏休みの旅行を楽しみつつ、力を合わせて演劇の舞台を作り上げる過程を通じて、隠された歴史の真実へと迫ってゆく物語。

作中の一言一言が、あたかも演劇の台詞であるかのように紡がれます。

CG、音楽、声、シナリオ、そのどれもが良質であるが、特にテキストからは作者の人柄の暖かさがにじみ出ているように感じられます。

言うなれば、“女の子が見たいと思うシーンを詰め込んだ、少女漫画”といった感じでしょうか。
「女性にお勧めできるエロゲー」のナンバーワン候補と呼べると思います。

それにしても、ココは幼児のようで可愛らしく、とても癒されるのでした。
ココほどの癒しキャラは他の作品ではちょっと見たことがないですね。

ちなみに、「青の国」「白の国」「赤の国」という呼称は、フランス国旗のトリコロール(三色旗)をモチーフにしているのではないでしょうか。
青は自由、白は平等、赤は博愛を表しているとされます。
作品の物語に当てはめれば、自由の名の下に行動を起こした青の国、博愛の名の下に行動した赤の国、そして、平等の名の下に中立を貫こうとした白の国。
なんとも良い具合に当てはまるように思いますね。


――もはや運命的としか言いようがない。

「Forest」で物語すなわち小説にかける魂を垣間見、
この「カタハネ」では演劇にかける魂を垣間見た。
では、次は?
そうだ、音楽だ。
「シンフォニック=レイン」
次のピースはきっとそれだ。
それが音楽にかける魂を私に垣間見させてくれるに違いない。

まるで、散りばめられたパズルのピースを当てはめるかのように、
それぞれの作品が美しく結びついてゆく。
その導く先は……“芸術”という名の果てしない峻峰。

「Forest」「カタハネ」「シンフォニック=レイン」そして「AIR」……。
これらに触れ終えた後、私は少しでもその頂へと近付けるのだろうか。
 
このような鑑賞の仕方が成立し得る。
これだから、エロゲーはやめられないのである。
 
製作陣に敬意を表したい。
 
 
 
(以下、加筆)

「歴史の真実」をテーマにした作品は、他にもあるでしょうか?

私がいまゲームの製作を目指して執筆している物語も、歴史に題材を取っています。
ましてや、中世末期のフランスを舞台にしています。

我ながら、奇跡じみた幸運ですね。

歴史を調べる内に、執筆中も感じていましたが、

「歴史上、悪人とされている人物は、本当にそうであったのか?」

という疑問は常に付きまといます。
この作品を終えて、その思いをさらに強くしました。

もう一度、一から練り直しですね。