これは頑張る妹RPGである。 もし、あなたの大切な妹が不治の病であると知った時、どうするだろうか。運命を呪い、嘆き暮らすだろうか。運命を受け入れ、残された時間を大切に生きることを選ぶだろうか。この物語は、運命を否定し、いかなる禁忌に手を染めようともあがき続けた兄と、その想いに応えるため最後まで兄を信じ続けた妹の、戦いの記録である――。 エロゲー界においてニトロプラスと双璧を成すと言われるライアーソフト。私は未体験であったが、病弱で健気な妹がヒロインと聞いては、自他共に認める妹フリークとしては特攻せざるを得ないのであるッ!ビバ・妹!ビバ・リベルタ!
冒頭から涙がこみあげてきた。
そして確信する。
私は今、捜し求めていた至高の妹ゲーに出逢えたのだということを。
『強くなれ、ウラシル。』
この言葉には兄の妹への悲痛な祈りが込められている。
夢の中でだけ元気にダンジョンの中を冒険する妹の姿に、現実の悲惨さを思って思わず目頭が熱くなってしまう。
非常にキュートでRPGライクな原画の櫂人氏はすでにコンシューマRPGデビューを果たしており、この作品がもしかしたらエロゲー最後の仕事になるのかと考えればお宝作品になるのではないだろうか。
思えば、世の妹キャラクターには不憫な扱いが多い。
主人公の怒りを表現しドラマを盛り上げるためだけに敵役に殺されるといったような。
「鬼門妖異譚」「塵骸魔京」など、枚挙に暇がない。
あるいは、死亡はせずとも攻略不可能なサブキャラ扱いをされることは数え切れないほどである。
安易に妹キャラクターを死なせてしまう作品に対しては声を大にして言わせていただきたい。
「お兄ちゃんは常に妹の幸せを願っているのだ!」と。
私は命を大切にしないエロゲーは大嫌いである。
冒頭に挙げた原画と演出だけでもお腹一杯ではあるが、その他の要素にも触れておくと、
「世界を救う為にセックスしよう!」という設定はエロゲー界ではもはや定番である。「聖剣のフェアリース」「鳳凰戦姫舞夢」「ぬいぐるまー」等々。
ただ、「ヒロインの命を救うためにセックスする」というのは、ノルンの一点突破型低価格作品群を除けば少数派に入るかもしれない。
もっとも、DNAが云々というくだりはこの際突っ込まないでおくべきであろう。「セックスで妹の命を救う!」というシチュエーションこそが(エロゲー的に)重要なのである。(ただし、現実でも人の免疫機能を利用した画期的な新治療法として免疫細胞療法が研究されている)
声については、あの一色ヒカルさんが妹役!?という心配は杞憂に終わった。普通に萌える妹を立派に演じられている。
本作の最大の特徴であるRPG部分については、「マリーのアトリエ」と同様だと言って良いと思う。
非常に良くできているのだが、とにかく作業に時間がかかり、我慢が強いられる。
この点、俗に女性は男性よりも我慢強いと言われることから、女性向けゲームの特徴であると言えるのかもしれない。(本作はエロゲーではあるが。)
ちなみに、コンフィグで「画像効果」をOFFにするとゲーム速度が体感で2倍程度になると思う。試してない方はぜひ。
ただし、シナリオの終盤に不満がないわけではない。
展開はかなりシビアであるので、これからプレイされる方は相当の覚悟をした方が良い。
それでも、私的に妹ゲーランキング堂々の1位に輝いた。
製作陣に敬意を表したい。
さて、次は「加奈~いもうと~」をプレイする予定。
欝展開は「銀色」でもうお腹一杯で、それを理由に10年間も敬遠していたのだが、そろそろプレイしても良い頃かなと思う。
(10/19 追記)
本作が一般的なエロゲーと一線を画しているのは、主人公とヒロインの「恋愛」をシナリオ上の主軸としていないということです。
星の数ほどあるエロゲーのほとんどは、ジャンルの違いはあれど、「恋愛」およびその先の行為を主軸としていますが、
本作は、最初から最後まで、「兄と妹」という関係によって貫かれています。
ED後にウラシルがどこかの好青年と恋に落ちたとしても、セルは兄としてそれを甘んじて容認するだろうことが目に浮かびます。
兄妹の境界を越えた「恋愛」感情ではなく、あくまで「兄として妹の命を救いたい」という純粋な兄妹愛に突き動かされているからこそ、兄のセルに深く感情移入することができるのです。
これは、「恋愛」を描くことに終始する他のエロゲーでは味わえない部分でしょう。
(追記・OPについて)
私が最高に気に入っている鳥肌が立つOP曲の冒頭に出てくる独語の歌詞については、
他のサイトでもすでに訳されているので重複になりますが、私の方でも書いておきます。(原文転載はなしで。)
この歌詞からは悲壮な覚悟を背負った兄と妹の決意がひしひしと伝わってきます。
この『Dreht Sich!』は、最高の頑張る女の子・闘病ソングでしょう。
紛れもなく最高の名曲です。
『回れ!』
運命は変えられないって、
誰がそう決めた?
与えられた運命から逃れることはできないって、
誰がそれを受け入れた?
もし君と僕がまだこの馬鹿げた運命の螺旋の中にとどまっているのなら、
ためらうな! 迷うな! 立ち向かえ! 戦え!
ただひたすらに・・回れ!