『レクイエム』『アンコール』はプレイ済み。ーー世界よ、これが、メディア芸術である。これは、もはや総集編ではない。『アンコール』本編にも匹敵するボリュームの新規シナリオである。大満足である。このシナリオと予約特典のタペストリーのために八千円を支払った価値は大いにあった。(プレイ時間は『シンフォニー』のみの時間。)
――ゲルダちゃん――ッ!
『レクイエム』『アンコール』の長文感想はすでに書いてあるので、そちらをご参照いただきたい。
久しぶりに『フェアレク』をプレイして、やはり、設定が秀逸だなと感じた。
絵本の主人公のコスプレをしてなりきる、夢見がちな女の子の心の中の深い部分に土足で上り込むような――背徳感と甘美さがある。
このような感覚を覚える作品は、私の知る限り、他に類を見ない。
そして、本作の『シンフォニー』では、さらに一歩進んで、いわゆる「黒歴史」の問題にフォーカスした内容となっている。
主に中学時代を中心として誰もが経験するであろう、「黒歴史」の問題を、「笑い話」としてネタ化するのではなく、
切実な精神上の問題として正面から取り上げたことは高く評価したい。
海原望氏、おそるべし、である。
『レクイエム』本編では、若干の苦言を呈させていただいた点であるところの、ラストシーンでのファンタジー性についても、その回答が得られた感があり、納得できる仕上がりとなっている。
尤も、欲を言うならば、やはり、「楽園から出た後」を描くべきではないかと思っている。(それはまた別の話、と言われるであろうが。)
一点だけ気になった点としては、灰色アリスが、ほぼ終始一貫して、敵として描かれることになった点である。
黒ゴス衣装、リストカット、妄想癖、毒舌、髑髏など、より「アンダーグラウンドらしい」衣装と属性を備えた彼女が、敵として描かれることには、若干の心情的な悲しさがあったことは否めない。
次回作では、ぜひ、黒ゴス衣装のキャラクターが仲間として大活躍するような物語を期待したいところである。
これからも、『フェアリーテイル・レクイエム』を超えるような、芸術的な作品を生み出していただきたい。
私は応援している。
製作陣に敬意を表したい。
P・S
原画の大石竜子氏の極彩色の美麗な絵柄は唯一無二の存在であり、ライアーソフトをはじめとする業界関係者には、この才能を埋もれさせないことが、使命であると言えるのではないのだろうか。
「大石竜子原画展」の開催など、その才能を広く世に知らしめるような企画が実現することを、切に願っている。