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kazamiさんのひとりのクオリアの長文感想

ユーザー
kazami
ゲーム
ひとりのクオリア
ブランド
10mile
得点
80

一言コメント

伝説の百合ゲー『カタハネ』のスタッフが贈る意欲作。女の子二人が出会い、仲良くなってゆく。その繊細な心理描写を描かせたらこの作者の右に出る者はいない――と言っても過言ではないかもしれません。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

『ひとり』の方のプレイ完了時の感想です。『ふたり』の方は未プレイです。

とにかく、繊細。
ガラス細工のような繊細な感性が結晶化したような作品です。

その繊細な心理描写は、J-MENT氏の十八番ですね。
思わず嫉妬を覚えてしまうほどの繊細さであります。

この作品の醍醐味は、二人の女の子の同棲生活とその結末、それに尽きます。

物語上の仕掛け(クライマックス)もないわけではありませんが、ラストシーンはむしろ淡白に感じられます。
それよりも、女の子二人の人間関係と繊細な心の機微、それこそがこの作品の唯一最大の特長であると思います。
『カタハネ』のようなドラマティックなラストを期待した人には、肩透かしに感じられることは否めないかもしれません。

これは個人的な考えですが、『カタハネ』コンビのお二人の作品は、「演出面」が弱いのではないかと感じられます。

たとえば、Key作品などは、演出過剰とも言われるほどの凝った演出で、「泣かせる」ことに特化した作品です。
Key作品を見習えと言うことなどはできませんが、音響、画面効果を含めた「演出」を強化すれば、より名作となりえたのではないかと感じております。

演出と言えば、やはり、「立ち絵」がないのは痛かったですね。
「立ち絵」があるとないとでは、臨場感が違ってきます。
本作をプレイして、「立ち絵」の重要性を再認識しました。

名作になりえるポテンシャルはあるにもかかわらず、演出などの面でブラッシュアップが足りず、名作になり損ねてしまった作品。
そのような印象を持ちました。

ちなみに、エロについてはそれなりにありますが、あまり期待しない方がよろしいかと思われます。
どちらかと言えば、プラトニックな印象を受けました。

なお、「次回作にご期待ください!」については、私も、「えぇっ!??」と思いましたが、本作はちゃんと一つの作品として完結していますので、別に気にはならないですね。

卑近な例では、『まどかマギカ劇場版新編 叛逆の物語』や、『謀略のズヴィズダー』なども、続きがあること前提の作品でしたし。

もっとも、続きがあるのであれば一日も早く見せていただきたい、とは思いますけどね。
期待してお待ちしております。