結局のところ、「カワカミモモヨ」という“怪物”の倒し方を一番知りたかったのは、この作品を書き上げたライター自身だと思う。 この作品のシリアスなルートをプレイした人はこう思わなかっただろうか? 「こんな真剣に戦わなくてもモモヨ1人で片付くんじゃないか?」と。 その疑問を抱かせない事こそが、この作品のシリアスパート成功のポイントだと思ったのだが、結局ライターは「カワカミモモヨ」という不条理ギャグ漫画の登場人物を「プレイヤーが納得する形で押さえ込む事」が出来なかった。 その結果、シリアスな展開に不条理ギャグ漫画の登場人物が居座る事となり、微妙に“アレ”な感じのシリアスパートが完成してしまったのである。 もしもこの“怪物”を押さえ込めていたら、シリアスルートの評価はまた違ったものになっていただろう。
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○ シナリオ評価 ○
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番号 評価 内容
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( 1) ◎ カワカミ大戦(最終局面)の盛り上がり(条件付)
( 2) ○ 色んな意味で予想を裏切ってくれたワンコシナリオ
( 3) ○ 共通ルートの秘密基地での衝突
( 4) ○ サブキャラクターに用意されたおまけシナリオ
( 5) ○ ちょくちょく挿入される「ミヤコぷちエンド」
( 6) △ 主人公に安定しない視点
( 7) × 最終シナリオ序盤の「負ける為の奇行ラッシュ」
( 8) × 暗すぎるミヤコシナリオ
( 9) × ガクト編でのチカの「やっちまった感」
(10) × モモヨ編でのヤマトのテンパリ具合
(11) × モモヨ編でのキャップ覚醒
(12) × 実はヤマト居なくてもいいんじゃない? というマユシナリオ
(13) × 共通で「明確」にばら撒かれながら最終シナリオまで音沙汰のないシリアスな伏線
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○ キャラクター評価 ○
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番号 評価 内容
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(14) ◎ 選ばれなくてもへこたれないミヤコの姿勢
(15) ○ ヤマト(主人公)がそれなりに有能・初期好感度が高い
(16) ○ 超絶倫主人公ヤマトの「俺の色に染めてやるぜ」なセックス
(17) ○ ヤマトが夢に絶望しながらも行動している部分
(18) ○ クリスの個別と共通のギャップ
(19) △ 「カワカミモモヨ」という“怪物”
(20) △ 多種多様なサブキャラクターたち
(21) × 賞味期限のあるキャラクターの存在
(22) × サブキャラに倒されるラスボス大本命シャカドウ・Theガッカリ
(23) × 見掛け倒しだったシャカドウ・The噛ませ犬
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○ その他の評価 ○
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番号 評価 内容
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(24) × 最後のアフターストーリー枠がスタッフルームだった残酷な結末
(25) × 個別音声OFFが出来ないミスマの声
(26) × 本編と関係ないOPアニメーションの内容
(感想) △ 真剣でやらない方が面白かった可能性
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× シナリオ評価 【詳細】 ×
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番号 評価 内容
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( 1) ◎ カワカミ大戦(最終局面)の盛り上がり(条件付)
評価が条件付になっているのは、この評価にゲストキャラクターが大きく関わっているから。
▽
カワカミ大戦最終局面。
本来なら味方として圧倒的な武力を振るうモモヨが最悪の敵として進撃を開始。
理不尽なまでに絶対無敵のモモヨが本陣に迫るなか、最後の守護者としてアゲハとオトメが立ち塞がる。
△
モモヨの絶対強者っぷりを思い知らされているプレイヤーにとって、絶体絶命の窮地に駆けつけるアゲハとオトメは、懐かしさと驚きを加味して最高に格好よく見えるだろう。
そして、そこから始まる最大最後の反撃は、熱い挿入歌にも後押しされ、この作品最大の見せ場と呼ぶに相応しい盛り上がりを見せる。
だが、ここに一つの問題がある。
オトメの存在だ。
幸いなことに私は「つよきす」をプレイしていたので、オトメという存在を事前に知っていた。
しかし、プレイヤーがオトメの事をまったく知らなかったらどうだろう?
オトメと同時に登場するアゲハは、プロローグやイベントにちょくちょく顔を見せるので問題はないが、オトメは事情が違う。
同ライターとはいえ他社の作品なので、立ち絵はおろか、フルネームさえ出す事が出来ないのだ。
そして、反撃開始の狼煙とも言える挿入歌はオトメの登場と同時に流れはじめる。
アゲハとオトメでは、明らかにオトメの方が本命なのである。
元ネタを知らなければ置いていかれるキャラクターが、重要局面でキーキャラクターを務めるという斬新なスタイル。
オトメというキャラクターを認識しているか否かで、この場面の評価は大きく変動するだろう。
番号 評価 内容
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( 2) ○ 色んな意味で予想を裏切ってくれたワンコシナリオ
山篭もりして武道の真髄に開眼、必殺技を体得するという勝利のフラグをへし折った珍しいシナリオ。
ワンコがクリスと激戦を繰り広げるまでは、クリス戦は無難にこなしてモモヨ戦が本番だと思っていた。
しかし、ワンコシナリオで言いたい事は、エピローグのワンコの台詞に全て詰まっていると考えると、完全な勝利のフラグがへし折れた事も、予期せずクリスに敗北した事にも意味があったと思えるから面白い。
全身全霊をかけた夢に敗れる・予期せぬ困難に襲われる・生まれながらの才能というどうする事もできない壁に阻まれる等々、それぞれのイベントを実生活に変換すると、こちらが応援されているような気になってくる。
主人公であるヤマトがあくまでフォローに徹し、問題を乗り越えるのがワンコ自身の決意というのもひとつの答えなのだろう。
ワンコ云々とは関係なく、カワカミ一族――この作品世界のパワーインフレを垣間見たのもこのシナリオである。
番号 評価 内容
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( 3) ○ 共通ルートの秘密基地での衝突
それまで和気藹々としているからこそ破壊力のあるイベント。
的確に地雷を踏み抜くクリスと、そんなクリスに投げつけられる「死ねよ」という直接的なミヤコの憎悪。
そこから始まる互いの心をナイフで抉りあうような鋭い言葉の応酬と、それまでの和やかな関係が表面的なものでしか無かったという事実が明らかになっていく展開は凄まじい。
若さ溢れるそれぞれの主張は評価の分かれる所だろうが、本来なら攻略対象としての魅力を損なわせてはいけないヒロインの憎悪を惜しげもなく晒すテキストは面白い。
各CVが実力派揃いなのも修羅場に拍車をかける。
番号 評価 内容
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( 4) ○ サブキャラクターに用意されたおまけシナリオ
短いながらも専用のルート、女のサブキャラにはエッチシーンまで用意してくれたのは嬉しい仕様。
クリアキャラクター数に応じてサブキャラシナリオがオープンされるというのも、飽きさせない工夫としては中々。
男キャラクターのシナリオにはCGが一枚も存在しないが、男キャラクターに専用ルートが用意されていること自体が珍しいので気にならなかった。
番号 評価 内容
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( 5) ○ ちょくちょく挿入される「ミヤコぷちエンド」
ミヤコ好きには堪らない仕様。
色々なルートの選択肢に紛れ込んでいて、選択した瞬間に問答無用でミヤコぷちエンドとして終了するハードM仕様。
押し倒されたり、草むらに連れ込まれたりと、どう見てもバッドエンド扱いながら、それっぽい選択肢が出るたびに押したくなってしまう巧妙な罠。
何だかんだでミヤコが幸せそうなのもポイント。
番号 評価 内容
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( 6) △ 主人公に安定しない視点
視点が主人公を離れてフラフラする事が多いので、慣れるまでは落ち着かない気分を味わうかもしれない。
離れた視点は特定の誰かの視点になるのではなく、キャラクターたちのやりとりを観察するカメラのようなモノになる。
会話のみだったり、3人称視点だったり、その時々によって変化する。
この視点変更は、すべての登場人物を動かすための工夫だと思うが、本来のカメラの持ち主(ヤマト)がその場に居なくてもイベントが進行するため、たまに主人公に視点が戻らないまま延々と時間が経過したりするのが厄介なところ。
そのため、賑やかな学園生活を描写できるという長所と、主人公の存在意義が薄くなるという短所を併せ持つ。
番号 評価 内容
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( 7) × 最終シナリオ序盤の「負ける為の奇行ラッシュ」
間違いなく軍師ヤマトの脳が沸騰していた瞬間。
▽
パターン1概要
「相手は麻薬の密売をやってるヤクザもどきだけど、
サブキャラ女に良い格好を見せたいという君の男気が素敵だから単独行動を許可しちゃうよ。
相手は何人いるか分からないけどグッドラック!
大丈夫、警察に通報すればそこでゲームセットになっちゃうから黙ってるよ!」
パターン2概要
「これから敵を包囲殲滅する準備をします。
まず、全員武器を持たないでください。
ええ、聞き間違いではありません。これからやるのは包囲殲滅です。
だから絶対に武器を持たないでください。
隠して持ち歩くのも駄目。丸腰です。
親の敵のように日本刀を握り締めている人も、置いていってください。
全員丸腰で突撃してください。ガンパレード!」
△
こんな感じの奇行が展開されるのだが、いかがだろう?
パターン1は、サブキャラ女に良い所を見せようとするサブキャラの男(戦闘力は常人よりちょっと上)が、ヤクザもどき相手に無謀な単独突撃を願い出た時のもの。
警察に連絡して安全にゲームセットというシナリオを思い描いていたヤマトが軽く考えて許可した挙句、念のために送った援軍が到着するのがやたら遅れるという素敵な偶然が連続するのが特徴。
当然のようにサブキャラ男はボコボコにされて入院する。
この事件が原因で主人公パーティーは、麻薬(っぽいもの)を売り捌く悪の組織との戦いを決意するのだが、どことなく微妙な空気が漂うのは、素直に警察に連絡すればそこで終わったという印象が強く残るからだろう。
これがシリアスパートへの突入イベントなのだから、この後の展開が怖くなるのも仕方がない。
パターン2は、悪の組織を一網打尽にしようとした時のモノ。
恐らく「街中で武器を持つのは目立つ。それなら、初めから持ってなければ目立たない」という逆転の発想から生まれた「軍師ヤマトのミラクル☆大作戦」。
激戦区に最強兵器モモヨを投入するとはいえ、どうして武装解除して危険地帯に突入したのかは説明されないが、気が付くと丸腰で配置についているというミラクル☆超展開なので納得するしかない。
この際、常に刀を持ち歩いているせいで友達が作れないマユッチまでちゃっかり武装解除しているのがポイント。着脱不可能だと思っていたので普通に驚かされる。
ここでも当然のように作戦は失敗し、主人公パーティーは敗北する。
とはいえ、これはシナリオ上、避けて通れないミラクル☆超失策だと思われる。
この敗北の流れに乗って悪の組織の幹部(ヒロインたちと対等に戦える存在)の顔見せ&対等な力の証明が行われるため、ヒロインたちが全力を発揮できる状態では不味いのである。
何故なら、ワンコシナリオで簡単に強くなる事を否定してしまったため、ここで全力を出して敗北したヒロインが短期間でパワーアップするという展開は使えない。
そのため、ラストバトルで一度負けた相手に勝利するというドラマチックな展開を発生させるには、わざとヒロインを弱体化させておく必要があったのだ。
この「軍師ヤマトのミラクル☆大作戦」は、ヒロインと悪役に因縁を発生させるのと同時に、「あの時は武器を持っていなかったから負けた」という明確で取り除きやすい敗因を与えるために行われたのである。
もっとも、それとこの展開を許容できるかは別問題である。
番号 評価 内容
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( 8) × 暗すぎるミヤコシナリオ
ミヤコというキャラクターは、ヤマトが居れば幸せだ。
そして、幸せな状態というのはシナリオの完結点でもある。
王道とも呼べる「主人公とヒロインが困難な問題に直面し、協力して解決、幸せになる」という奴だ。
では、初めから幸せになってしまった場合はどうすればいいのだろうか?
答えは2つ。
1つは、幸せな状態を維持したまま起伏のないシナリオを展開するというもの。
もう1つは、あえて幸せな状態から落とすことでシナリオを展開するというもの。
そして、ミヤコシナリオでは後者が選択された。
さらに悪いことに、ヤマト至上主義のミヤコは、ヤマトが居れば幸せを感じてしまう。
そのため、自動回復する幸せを邪魔するために暗い展開が連続するのは必然で、安定した幸せを味わうことは不可能なのである。
事実ミヤコルートでは、学園裏サイトという見えない悪意、母親が浮気性という消せない過去、ヤマトを恋人に迎えたことで始まる視野狭窄、孤立する弓道部での立場、徐々に崩れていく仲間たちとの信頼関係、やがて始まるミヤコ自身の暴走と、ありとあらゆる負の側面が顔を見せる。
そんな展開に加えて、ミヤコが苛められていた時代の過去回想に混入される「最近起きた現実のニュースから抽出されたと思われる生々しい要素(○○を自殺させる会など)」がやるせなさを加速する。
同様に抽出されたであろう学校側のアレ過ぎる言い分は皮肉なのだろうが、陽ではなく、陰の方向を向いたそれを笑う事はできなかった。
一連の暗黒展開の威力や凄まじく、このルートを始めにやると作品全体の方向性を誤解しかねない。
緩衝材として挿入されたであろう「キャップ冒険日記」も浮いていた。
最終的にはミヤコの成長という形で落ち着くものの、このルートは楽しめなかったと言うのが感想。
番号 評価 内容
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( 9) × ガクト編でのチカの「やっちまった感」
惚れっぽいガクトを誘惑して、本気になって告白した所でゲラゲラ笑ってバカにするという余りにもアレな仕打ち。
CV芹園みやの演技力も相まって、嘲笑を浴びせられている感が良く出ている。
何より特筆すべきは、このアレ過ぎる行為に走ったチカが、攻略可能なサブヒロインである事だろう。
その後、何だかんだでピンチになったチカをガクトが助けるので、ガクトの良い奴っぷりを見せようとしたのかもしれないが、記憶に残ったのは数分前にあの仕打ちをしたガクトに助けを求めるチカのアレっぷりのみ。
ガクトに関しても、あの程度の罠に掛かるのは微妙というネガティブな印象を抱いてしまった。
チカに関しては、元からボールすれすれの変化球キャラなので、ガクト編でのアレな行為を見てしまうと攻略意欲が減退する恐れがあるので注意。
番号 評価 内容
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(10) × モモヨ編でのヤマトのテンパリ具合
このライターの作品には、大なり小なり「青臭さ」が存在する。
それは学園の雰囲気であり、サブキャラクターの行動であり、大部分は作品にとってのプラスとして働くのだが、そうならない部分も当然のように存在している。
それが主人公の思考である。
モモヨ編での主人公は、一時期、学生特有の青臭い思考に支配されてしまう。
周囲の恋人話に浮かれてモモヨに告白することを決意し、告白する前から告白成功を確信するという暴挙に出るのである。
この時期の主人公の思考は、とても痛い。
それまでの主人公が比較的冷静な思考をしているのも酷さを助長する。
モモヨと付き合う事を(勝手に)確定事項としてミヤコに恋人同士の邪魔をしないようにと言いつけるなど、後で振り返ると当時の自分を殺したくなるような行動を取り続けるのである。
そんな浮かれた思考を延々と読まされるのは、人によっては拷問と呼ぶに相応しい。
他のルートでは目立たないが、モモヨ編では前面に現れるので注意が必要である。
番号 評価 内容
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(11) × モモヨ編でのキャップ覚醒
この作品における最大の蛇足。
カワカミ大戦終了後に突如として発生し、その翌日にはイベントどころかシナリオが終了するという謎のイベント。
モモヨに振られたシーンを再現、リベンジさせたかったのだと思うが、その代償は余りにも大きい。
最大のイベントであるカワカミ大戦終了後の余韻を台無しにし、モモヨへの告白を躊躇わせることでストップ高になっていたヤマトの株まで大幅に下げる事になった。
ドタバタの果てにリベンジさせるよりも、あの余韻を引きずったままエンディングに突入した方が綺麗にまとまったと思う。
番号 評価 内容
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(12) × 実はヤマト居なくてもいいんじゃない? というマユッチシナリオ
結局のところ、マユッチとオオワダさんの友情にヤマトはほとんど関与していない。
オオワダさんのベイ好き露呈から始まるラストイベントでも、結局はマユッチが自分でマツカゼとの別れを決意した。
ヤマトの役割は精神的なバックアップとフォローと割り切るべきなのだろうが、居なくてもそれほど問題にはならなかったと思えてしまうのが寂しいところ。
番号 評価 内容
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(13) × 共通で「明確」に張られながら最終シナリオまで音沙汰のないシリアスな伏線
この作品の共通シーンでは、最終シナリオ用のシリアスな伏線が「明確」に張られる。
伏線を張ること自体は問題ないのだが、最終シナリオ用のシリアスな伏線を「明確」に張る事には問題がある。
コメディを楽しむ前に、深刻そうなシリアスの断片を突きつけられても対処に困るというものだ。
表現してみるとこんな感じだろう。
▽
ようこそ、夢の国へ♪
……まあ、1年前まで処刑場だったんだけどよ。
心行くまで楽しんで行ってね♪
――ククッ、ここで悶えて死んだ人たちの分まで、な。
えへへ、クビキリブレードッ♪
△
どうしろと言うのか。
シリアスな伏線を「明確」に張るよりも、コメディパートに隠蔽する方が正解だったと思う。
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× キャラクター評価 【詳細】 ×
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番号 評価 内容
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(14) ◎ 選ばれなくてもへこたれないミヤコの姿勢
この手のゲームにおいて、主人公に選ばれなかったヒロインは、どんなに主人公を好きでも綺麗に身を引くことが多い。
そのため、ヤマトに選ばれなくても諦めず、延々と待ち続ける――「ホトトギスが鳴くまで待つ」というミヤコの選択は面白い。
ヤマトの幸せを第一に考えて、あくまで機会を待つだけという辺りもヤマトへの想いの強さを証明している。
ルートごとにやってくるミヤコとの別れが、失恋の切なさを残すものではなく、ミヤコのたくましさとヤマトへの想いの強さを証明するモノなのは繰り返しプレイに嬉しい配慮。
番号 評価 内容
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(15) ○ ヤマト(主人公)がそれなりに有能・初期好感度が高い
登場する男サブキャラの多くが女子から変態、及びそれに類似する扱いを受けているため、真っ当に扱われている主人公の立ち位置が最初から高く見えるようになっている。
能力の面でも、頭の回転が早く、世渡り上手、普通に成績が良く、手先が器用で小細工・裏工作の類が得意とポイントを抑えている。
キャップという生粋のヒーローがいるので表立って目立つことはないが、参謀役やフォロー役といった裏方の部分では誰よりも輝くようになっている。
病的なヤドカリマニアという変態的な側面はあるものの、特定のルート以外では比較的頼りになる主人公である。
番号 評価 内容
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(16) ○ 超絶倫主人公ヤマトの「俺の色に染めてやるぜ」なセックス
「絶倫」という言葉ですら生温く、「超絶倫」という言葉こそが相応しい。
セックス傾向はSッ気炸裂の苛めっ子で、アナル大好きのド変態。相手をいつのまにか従属させているという謎のスキルを有す。
最終ルートで超絶倫が武器として使われたのはご愛嬌。
相手が気絶してもセックス続行、寮内放置プレイ、膣内射精後のペニスを即座に口で掃除させるなど、純愛モノ主人公としてはかなりハードなプレイを要求する。
処女を失ったばかりの相手の口に、平然と膣内射精後のペニスを突っ込む辺りに本性が垣間見える。
そんな中でも、当初は主導権を握り、フェラチオの要求にさえ激怒していたモモヨが、瞬く間に主導権を奪われ、最終的にはヤマトのわざと洗っていないチンコに嬉々としてしゃぶりつくようになっていたのは衝撃的。
セックス終了後に、テキストで「その後○○までセックスした」みたいなフォローが入るのも面白い。
思い返すと、ヤマトが最も輝いていたのはエッチシーンだったのかもしれない。
番号 評価 内容
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(17) ○ ヤマトが夢に絶望しながらも行動している部分
具体的な行動を起こす前に絶望して夢を諦めたとばかり思っていたので、ヤマトがノートにプランを書き込んでいた事には驚かされた。
番号 評価 内容
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(18) ○ クリスの個別と共通のギャップ
共通・他のヒロインルートでのクリスは、致命的な空気の読めなさを除けば、それなりに頼れる凛々しいキャラである。
そんなクリスが、自身の専用ルートに入った途端、ひとりで朝起きる事すら出来ない駄目っぷり露呈するのは新鮮。
正座して反省させられる一枚絵、「白目でムキー!」の立ち絵など、テキストだけでなくグラフィックでも完全に駄目な子扱いなのも面白い。
凛々しさから一転してのぽんこつ、というは素晴らしい転落劇。
番号 評価 内容
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(19) △ 「カワカミモモヨ」という“怪物”
何故、「カワカミモモヨ」は“怪物”へと至ったのか?
それは、この作品の「強烈な個性(イメージ)を持ったキャラクター同士を組み合わせ、その掛け合いから笑いを生み出す」という部分に大きく関係していると思われる。
特別な仕掛けを必要とせず、ただキャラクター同士を組み合わせ、掛け合わせるだけで笑いが取れるというこの手法は、同時にキャラクターを生き生きと魅力的に見せるという特徴も併せ持っている。
そして、この手法を巧みに使う事――笑いを生み出すに足るほど強烈な個性を持った独創的なキャラクターの創造こそが、このライターの持ち味ではないだろうか。
事実、私が過去にプレイした同ライターの作品を回想すると、思い出すのはシナリオではなく、強烈な個性を持ったキャラクターたちだ。
では、今回の「カワカミモモヨ」について考えてみよう。
キャラクターの個性は強烈であるほどに、他者と掛け合わせた時に笑いが取りやすい。
そして、その個性はテキストで表記されるよりも、プレイヤー自身の認識に根付いた方が効果的である。
RPGでポッと出のラスボスよりも、何度も苦しめられた中ボスの方が手ごわく感じるという「苦手意識」と似たようなものだ。
では、この作品をプレイした人間の持つ「カワカミモモヨ」のイメージはどうだろう。
若干の違いはあるだろうが、「暴君・絶対無敵・最強」という何がしかの圧倒的な力のイメージを持っている――植えつけられているのではないだろうか?
そう、「カワカミモモヨ」というキャラクターは、「圧倒的な戦闘能力」という分かりやすい特徴を備えているため、同ライター過去作品のメインヒロインと比較しても強列なイメージをプレイヤーに植え付けやすいのである。
そして、「圧倒的な戦闘能力」という分かりやすい特徴は、プレイヤーに植えつけたイメージを強化する場所には事欠かない。
バカ騒ぎの中心に、不条理なオチに、場面の転換に、突発的なギャグに、困った時の最後の砦に、とコメディパートで「カワカミモモヨ」は大活躍する。
その活躍は鮮烈で、自分専用ルート以外でも「カワカミモモヨ」は異常なほどの存在感を発揮する。そして、そのたびにプレイヤーに植えつけられたイメージは強固なモノになっていく。
だが、この強烈すぎる個性――プレイヤーに植えつけられたイメージこそが「カワカミモモヨ」を“怪物”へと変貌させるのである。
高速移動・瀕死からの瞬間回復・宇宙まで到達するエネルギー波・空中浮遊・対超人用の必殺技――それらの理不尽としか呼べない技の数々を各ルートで繰り返し披露した「カワカミモモヨ」はいつしか、この作品内で無敵の存在へと変貌を遂げていく。
それも、「テキストによる表記で」ではなく、「プレイヤーの認識の強化によって」である。
上記のような理不尽な技の数々を見せ付けられた後で、「カワカミモモヨ」を常識の範疇に収まる人間としてイメージするプレイヤーは少ないだろう。
そして、その「プレイヤーの認識」は最終ルートにも引き継がれる。
では、あらゆるルートで強化された「カワカミモモヨ」のイメージを、最終ルートの短時間で払拭する事は可能だろうか?
もちろん、そんな事が出来るはずもない。
長い時間を掛けて強化されたイメージは、同じように長い時間を掛けて弱化させるしかないのだ。
そして、最終ルートで「カワカミモモヨ」は猛威を振るう。
それまでのルートで強化されたイメージのまま、コメディパートと同じ要領でシリアスパートを蹂躙するのだ。
どんなに深刻な事態でも「カワカミモモヨ」にとっては造作もない。
どんなに相手が強大でも「カワカミモモヨ」がいれば大丈夫。
シリアスパートを構成するありとあらゆる真面目な要素が、「カワカミモモヨ」というイメージの前に粉砕されてしまうのだ。
これが暴力の介入できないシナリオなら結果は違ったかもしれないが、暴力で解決できてしまうシナリオなのだから性質が悪い。
絶対無敵の「カワカミモモヨ」が動けば事件が解決、動かなければキャラクターとしての違和感が残る。
動くも地獄、動かぬも地獄。「カワカミモモヨ」はそこに存在するだけでシリアスを破壊し続ける。
事実、私がシリアスパートを微妙に感じるのは、「こんな真剣に戦わなくてもモモヨ1人で片付くんじゃないか?」という感想を最後まで抱き続けてしまった事が大きい。
それに対する策としてか、「カワカミモモヨ」の力を封印する技が登場するが、その効果は驚くほど短い期間で解除される。
それもそのはず、力を封印したままシナリオを終わらせるなんて事をすればプレイヤーから不満が出るだろうし、何よりルート終盤で力を解放すれば、その瞬間にすべては「カワカミモモヨ」のためのお膳立てと成り果て、遅れてやってきたヒーロー「カワカミモモヨ」が1人で事件を解決するというコメディが完成してしまうからだ。
そのため、最終ルートの「カワカミモモヨ」は「1人で事件を解決できるというプレイヤーの認識を引きずったまま特に活躍しない」という不思議な立ち位置で、シリアスパートの根幹を破壊し続けるのである。
加えて、「カワカミモモヨ」の力を封印する技を発動させるために、作品内で超人に分類される学長とリーが2人揃って「悪役」に騙されるという間抜けっぷりを披露するのが微妙なところ。
「カワカミモモヨ」には劣るものの、その超人ぶりを見せ付けてきた学長とリーが、あの程度の罠に引っかかるのは納得し辛いものがある。
結局、ライターは最終ルートで「カワカミモモヨ」のイメージを抑えられず、「絶対無敵のキャラクター」を放置するしかなかった。
作品を通して肥大化した「カワカミモモヨ」のイメージは、それを生み出した神たるライターでさえ制御できなかったのだ。
ライター自身の予想を超える強力なイメージをプレイヤーに植え付け、そのイメージによってシリアスパートを破壊した。
それこそが、「カワカミモモヨ」が“怪物”たる所以である。
番号 評価 内容
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(20) △ 多種多様なサブキャラクターたち
スバルほどに頼りがいのある兄貴分は居らず、フカヒレほどに素晴らしい変態もまた居ない。
人数が増えた分、各要素と出番が拡散してしまったというのが感想。
ゲンさんやキャップなど魅力的なサブキャラクターも存在するが、そもそもの出番が少ないので完全に魅力を発揮できたとは思えない。
自クラスに加えて、他クラス、さらに外部にまでキャラクターを配置したのが問題だと思うが、スタンプラリーやカワカミ大戦での盛り上がりは、この人数だからこそだと思うので、一概に悪いとは言えないのが難しい。
番号 評価 内容
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(21) × 賞味期限のあるキャラクターの存在
例の総理の事。
既に賞味期限が切れてしまっているので、今プレイすると不思議な切なさを味わえてしまう。
正直な所、あれはやりすぎだと思う。
アニメや漫画、ゲームのパロディなら理解できずとも許容できたが、現実から引きずってくるのは微妙。
どうにも本物の顔がチラチラ浮かんで素直に1キャラクターとして楽しめなかった。
このまま現実からキャラクター性の強い人間を引き抜き続けた場合、現実の格闘家をゲーム内のキャラクターが倒すという悪夢が起こりそうで恐ろしい。
番号 評価 内容
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(22) × サブキャラに倒されるラスボス大本命シャカドウ・Theガッカリ
各ルートでちょろちょろ姿を見せ、「俺の本当の力は最後まで見せないぜ!」的なノリで去っていくラスボス候補シャカドウ。
そんな風に期待を煽り続けた彼がラスボスとして登場、絶対無敵のモモヨと戦うことを期待した人は多いのではないだろうか?
しかし、実際はサブキャラであるリーに一方的に倒されるというガッカリな結末を迎えてしまう。
何故、シャカドウはモモヨではなく、リーに倒されたのか?
それは最終ルートが、主人公パーティーを始めとする、ほぼ全ての登場キャラクターがそれぞれに活躍する「全員主役」という趣旨で描かれていたからだと思われる。
【最終ルート組み合わせ】
ヤマト 対 トウマ
ワンコ 対 エンジェル
クリス 対 アミ
ミヤコ 対 コユキ
マユッチ 対 マガツクッキー大隊
モモヨ 対 暴走タツコ
リー 対 シャカドウ・Theガッカリ
上記の組み合わせを見てもらえば分かると思うが、この中で一番強そうに見える敵は間違いなくシャカドウだろう。
イタガキ三姉妹の師匠なので彼女らとは別格、そして、数を頼みにしているマガツクッキー大隊とは比べるまでもない。
では、そんなシャカドウをモモヨが倒してしまうとどうなるか。
元から目立つモモヨが戦果ポイントの高いシャカドウを撃破すれば、当然のようにモモヨ個人が群を抜いて目立つ結果になり、「全員主役」というコンセプトが薄れてしまう。(モモヨ戦がメインとなり、他のヒロインは前座と成り果ててしまう)
だからモモヨの相手は、(特異性があるとはいえ)ワンコやクリスと同じイタガキ三姉妹でなければならなかったのだ。
そして、戦果ポイントが高いシャカドウは、元々がそれほど目立たないリーに倒されることで調整されたのである。
モモヨには届かないながらも高い戦闘力を誇るマユッチがマガツクッキー担当なのは、モモヨにやらせると一瞬で終わってしまうのと、イタガキ三姉妹に適当な相手が居なかったからだと思われる。
マガツクッキー大隊の数に加えてスピード撃破という条件を付けることで、マユッチの戦果が底上げされているのがポイント。
番号 評価 内容
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(23) × 見掛け倒しだったシャカドウ・The噛ませ犬
フォースの暗黒面に堕ち、ラスボス大本命だったはずのシャカドウ。
彼は何故、ああまで見かけ倒しっぽくなってしまったのか?
それは、各ルートに顔を出さなければならないシャカドウの役割にある。
この作品に存在する「悪役」は、当然のように絶対数が決まっている。
【作品に登場する悪役】
トウマ一派
イタガキ三姉妹(+1)
シャカドウ
上記のうち、黒幕であるトウマ一派は最終ルートまで動けず、イタガキ三姉妹(+1)も最終ルートの戦闘に新鮮味を与えるために動くことが出来ない。
そうなってくると、動けるのは必然的にシャカドウただ一人。
そんな状況でライターは、各ルートで「悪役」による最終ルートの宣伝を決行する。
最終ルートを盛り上げるための行為だろうが、結果としてそれは完全に裏目に出てしまう。
各ルートでラスボスの風格を見せ付けては、最終ルートを臭わせて撤退するシャカドウ。
それが1ルート限定なら問題なかったのかもしれないが、ほぼ全てのルートで現れては「ラスボス臭」を漂わせていく。
挙句、マユッチルートに至っては、モモヨに次ぐ戦闘力を有する彼女に敗北した後で、真の力の片鱗を見せて驚愕させるという最大級の煽りまで披露してくれる。
そんな彼が、前項で上げたように戦果ポイント調整のためにリーに敗北するのである。
全ルートに渡って延々と続けられた煽りを考えると、シャカドウが見掛け倒し――噛ませ犬っぽく見えるのも仕方ないだろう。
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例えるなら、スパロボで何度もゲスト参戦(イベント戦闘限定)してくる謎のボスが、最終ステージでこれといって目立たない味方ゲストキャラクターとのイベント戦闘であっさり撃墜されるような感覚。
そして、敗北原因は整備不良という脱力系のオマケ付き。
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× その他の評価 【詳細】 ×
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番号 評価 内容
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(24) × 最後のアフターストーリー枠がスタッフルームだった残酷な結末
タツコ関連のシナリオに期待して、凄くガッカリしたのは自分だけじゃないと信じたい。
最終シナリオを残してアフターストーリー枠は残りひとつ。
それを見て最終シナリオのアフターを期待するのは当然だろう。
イタガキ三姉妹の新生活や、秘密基地を失った後のそれぞれの進路、秘密基地が取り壊されるまでの穏やかな時間など、気になる事はいくらでもあったと言うのに残念な結末。
FD要素だろうか?
番号 評価 内容
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(25) × 個別音声OFFが出来ないミスマの声
周囲のレベルが高すぎるのか、とんでもなくアレだった。
あのカタコトっぽさが演技なのか、素なのかは永遠の謎。
スタッフロールが別枠だったので面白登用なのかもしれないが、誰が得をするというのだろう?
ウケを狙って作品の質を落としたのではどうしようもない。
番号 評価 内容
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(26) × 本編と関係ないOPアニメーションの内容
OPムービーの終盤で、各ヒロインは対応する(因縁のありそうな)サブキャラ女と戦うのだが、そのすべてが「完全なイメージ映像」であり、本編とはまったく無縁のモノなのが微妙なところ。
このため、OPムービーを見て本編に期待を膨らませるとガッカリする。
番号 評価 内容
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(感想) △ 真剣でやらない方が面白かった可能性
コメディパートは楽しめたが、シリアスパートは微妙さが残った。
それもそのはず、モモヨの異次元戦闘力やクリス父が私的運用する特殊部隊など、いくらシリアスな世界観を構築しても、中に居るのが不条理ギャグ漫画の登場人物では破綻しない方がおかしい。
命を懸けた真剣バトルに、不死身のキャラクターが堂々と参戦していたら笑い話だし、なりふり構わず勝利を狙うのであれば、手っ取り早く最強キャラにお願いしてしまえばいい。
正直なところ、不条理ギャグ漫画の登場キャラクターには、ルールのあるスポーツ対決が限界だと思う。
カワカミ大戦、カワカミボールなど、ルールのあるイベントは素直に楽しめた。
そして、シリアス用に明確な「悪役」を作ってしまったことで、バカ騒ぎして気持ち良く終わりというのが出来なくなってしまっているのは厳しい。
バカ騒ぎの最中に、シリアス用の伏線を冷や水のごとくぶちまけられるのは微妙。
不条理ギャグ漫画のキャラクターでシリアスをやれば破綻するのは当然だが、シリアスパートを成功させるためにキャラクターの個性を弱めては、コメディパートの面白さが半減してしまう。
次がどうなるのかは分からないが、コメディもシリアスも中途半端な作品が出ないことを願う。
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