初VRのアドベンチャーゲームをプレイ 技術の高さはさることながら、シナリオの出来に感動
ネタバレ注意
人間の性格はうまれもったものではなく、環境変数(外的要因)によって成り立っているというのが、
この作品の主張で、登場人物である幼馴染8人のアイデンティティーのついて深く描写されている。
また、幼馴染それぞれの共通点として、
本来こうでありたい、こうすべき自分の像に対して、それを否定するような自己性も存在している。
本作品の舞台が鏡に覆われた渋谷であったり、作中で冒頭に鏡が出てきたりなど度々鏡がシナリオに関わってくる。
自分自身と鏡に写った自分。
つまり、この作品ではアイデンティティーの二面性をテーマにしているのではないかと思う。
クロノス世界は、華怜の自殺という現実に対して登場人物それぞれの後悔から生じている。
それは助けたいという気持ちと、それは自己満足であって迷惑なのではないかという葛藤が邪魔してしまったものであったり、
政治的な理念から自己を抑え、いじめを見てみぬふりをしてしまったり、
そういった二面性に生じる乖離が、後悔の原因となっている。
幼馴染それぞれが二面性の自身を認識、向き合うことで、事態から目を逸らさない、思考停止しないで自らの本来の意思で行動し、シナリオが進行していく。
そういった幼馴染のエピソードの中で、華怜という人物がどういう人間なのかを知る。
華怜は一見クールぶっている様にみえるが、
何しても理不尽に親に怒られてきたといた過去があり、自分を閉ざしてしまいそれがクールな感じの原因となっている。
しかし、それは親に怒られたくないからというより、親に怒ってほしくないから我慢するという自己犠牲の優しさから生じている。
妹が死に、華怜の行動によって、
主人公は、ヒーローとして立ち直ることはできるものの、
他人を守るヒーローではなく、悪を憎むヒーロー(ロウ)が強くなってしまってしまう。
ただ怒ることに身をやつしてしまうのは、感情そのままで気楽なのかもしれない。
けど、そんな感情すら受け入れて判断する、二面性の自分を受け入れた上で考えることが大切なのだということを教えさせてくれる作品であったと思う。
クロノス世界は、一見ただ登場人物を閉じ込めミステリーのような怖い世界のように見えて、
実は登場人物の後悔から立ち直る機会を用意して救ってくれる奇跡のような世界だった。
総評
面白かった。
他人の内面までを理解する優しさを感じた。
良い世界だった。
シナリオはかなり練られており、深みがある。
考察の余地が程よく残されてるのもいい。
何よりVR作品であるということがすごい。
あまり関係ないけど、
両角視点とか下向くと巨乳で、新たな体験が得られた気分だった。