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doutanukiさんの大番長 Big Bang Ageの長文感想

ユーザー
doutanuki
ゲーム
大番長 Big Bang Age
ブランド
ALICESOFT
得点
85
参照数
674

一言コメント

可処分時間のみならず睡眠時間とか人生の貴重な時間とかも奪っていった盗賊みたいなゲームでした。『戦国ランス』をプレイしたときも同じこと思ったのですが。とにかくヤバイです。時間泥棒というより時間強盗。時間が盗まれるのではなく、暴力的に強奪されていく。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

で、『大番長』の話ですが、「プレイすればわかるよ面白いよ」の一言で終わり、みたいな感じです。そうとしか言いようが無い。これは地域制圧に限らず、アリスのSLGやRPG系全てに言えることですが、トライアンドエラーというかPDCAサイクルがすっげー面白いのです。

たとえば初回プレイ時、ゲームのルールやシステムなどうろ覚えだから手探りでのプレイになりますよね。それでもまあ面白いんですけど、進めているとだんだん「こうプレイしたら良くなるんじゃないか」という改善点がアタマに思い浮かんでくるわけです。そしたら最初からやり直して、その作戦を実行するわけです。しかしそうしたらそしたでまた、「あそこをああするともっと良くなるんじゃないか」という発想が思い浮かぶわけです。なのでまたやり直して、それを実行するわけです。そうしたらまた(以下ループ)…………というサイクルが出来上がってるんですよ。いやこれは単に僕の場合は、というオハナシかもしんないですけど。とにかく、やってるとプレイ効率化の方法を次から次へと思いついて、それをどうしても試してみたくなる。序盤・中盤なら最初から再プレイして、終盤ならとりあえずクリアまでやってから再プレイして、その思いついた「プレイ方法」を実行したくなる。僕の場合ですけど、この『大番長』は最初にクリアするのに8回くらいやり直しました。まず学園編終わったところでやり直して、次に県内編終わった辺りで、次はナイトメアが強すぎたのでまたイチから、その次はナイトメア戦の途中でまたイチから出直したくなって、さらに次は護国院戦の途中で……と、プレイ中に「次はこうしよう」というのが思いついてしまって、そしてそれをどうしても試したくなって、だから再プレイしてしまう。その再プレイでも、新しいアイデアが・先のアイデアの改善点が思いついて、だからまた再プレイしたくなる、してしまう。そういうPDCAサイクルです。それが凄く面白く楽しい。『大番長』に関しては“特に”そうであると言えるかもしれません。これほどやり直したことはなかったから。

システム面・バランス面なんかは言うまでもなく素晴らしいです。特に敵の配置が面白い。最初(学園編)は、いかにも「悪」なアギトを敵に配置して、次の県内編は単に悪というよりも、ライバルというか自分を試す「力試し」的な相手として戦争寺や暴走族を配置して、全国編に進めば、駄目だこいつ早く潰してやらないとと思わせるPGG、「悪」というより「極悪」な酷さなのでいち早く滅ぼしてやりたいナイトメアアイズ、頂上決戦じみた対護国院―――というように、いかにもプレイヤーにやる気を起こさせるような配置になっている。いやホント、PGGとかナイトメアとか一刻も早く潰したくてしかたなかったもん。またシステムもやればやるほど理解できていくタイプの作りと懐の深さで、だからこそPDCAが加速するといえます。たとえば戦闘参加人数が少ないほうが一人あたりの経験値が多いとか、知った瞬間に一からやり直させることを決意させたし。や、説明書をちゃんと読めばいいだけの話かもしんないですがw とにかく盛りだくさんで、次から次へと飽きさせないです。

お話はひたすら前向き。強くなる、強く生きる、強く在る。それはそもそも、強くなろうと思ったからはじめられること。

  京子「私ね…本当は誰も恨んでなかった…ただ謝って欲しかった…それだけだったのに…なのに…こんな…」
  京子「…ママね、強くなかった…決めたのに…ゆうなが生まれたときに、強くなろうって決めたのに…」
  ゆうな「だいじょうぶだよ、まぁま。ゆうながいるもん」
  ゆうな「これからゆうなといっしょにつよいこになろ? ね、まぁま」

同じようなことは、たとえば絵梨花とかなななとか中里姉妹とかでも語られているけど。そういった強さ――を思いっきり発揮しているのがラストバトル(の狼牙のセリフとか)ですが――が根底にあって、だからこそ、こんな客観的に見れば地獄みたいな世界でも、ゲームプレイ自体はとことん前向きで在り続けられるんじゃないだろうか。