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doutanukiさんのパステルチャイム3 バインドシーカーの長文感想

ユーザー
doutanuki
ゲーム
パステルチャイム3 バインドシーカー
ブランド
ALICESOFT
得点
75
参照数
946

一言コメント

骨太重厚なSRPGを求めてる方には全然ですけど、もっとお手軽なゲームを求めてる方には悪くないんじゃないかと。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まずシステム面の話からすると。シミュレーションRPGというよりも、移動と射程の要素が加わったRPGと考えた方が良いのではないでしょうか。

たとえば、隣接するユニット同士で連携するとか(ファイアーエムブレム)、敵を背後や側面から攻撃すると威力や命中率が上がるとか(タクティクスオウガ)、味方を持ち上げて投げるとか(ディスガイア)、攻撃・防御・命中・回避などに補正が入る地形効果とか(ほとんど全てのSRPG)、そういった、シミュレーションRPGによくある要素が全くと言っていいくらいありません。また部隊を二つ以上に分ける必要があるマップはほぼゼロですし、大量に敵ユニットが現れるマップも1つ2つくらいしかないですし、その敵ユニットも結構点在していることが多いので、基本的にはプレイヤーサイドが敵の雑魚ユニットを包囲してボコれる配置・構成になっている。

要するに、ぶっちゃけ戦略性に乏しいのです。ヌルいとも言える。だからSRPGというよりも、移動と射程の概念が加わったRPGといった方が近いですし、そう認識した方が多分楽しいです。
しかしこれは逆に言えば、新しく覚えることは何もないし、難しいことも特にないしで、「もう今さらRPGやSRPGやるの辛いよ、新しいゲームルールとか覚えんのめんどくせえよ」なんていうロートルゲーマーには大歓迎なシロモノだったりします。そしてボクは説明書読んだりチュートリアルやったりするのすら超絶億劫でもうそれだけでゲーム投げ出しかねないクソロートルなので、こういうゲームは歓迎でした。弱点属性とバインド(FF7のマテリアとかFF6の魔石に近いもの)さえ気にかけてれば十分だし、逆にそこだけは気にかけないと負ける。この程度のヌルい戦略性が気楽で良かったです。適正レベル(クエスト開始前に表示されます)ぐらいまで育てて、弱点属性を気にして、戦闘においては単騎特攻みたいなことさえしなければまず勝てる。ちなみに、ザコ敵ですら間接攻撃や長射程攻撃持ちが多すぎるので、「敵の射程圏外ギリギリにいったん移動して~」みたいなSRPGの基本戦術やってられないくらいめんどくさくなるのですが、別にそんなことしなくても普通に勝てます。その辺の適度なヌルさが楽でいいなーと。もちろん、骨太なSRPGを求めている人には全然物足りないと思いますが。

ただ周回プレイは単純にめんどくさすぎるので、その辺はあんまり期待できないでしょう。てゆうかこのゲーム、強制戦闘が少なくギルドクエストでレベルを稼ぐっていう形態なんだから、キャラクターのレベルこそ周回時に引き継ぐべきですよね。そしたらかなりマシになったと思うのですけど。


ストーリーは……あれこれもしかするとバカゲーなのかも、と思わずにはいられないアトモスフィアが随所に。基本的に出てくる敵出てくる敵が、「さらなる敵に騙されてる・操られている・利用されている」でして、そのさらなる敵を倒すとそいつもまたさらなる敵に騙されてる・操られ(以下略)……の繰り返しで、ラスボスまで辿り着きます。またプレイヤー側は「こいつが怪しい・こいつが黒幕」と速攻で分かる(くらい情報量が多い)のに、主人公たちは全然分かってくれなくて、後半になり正体が判明したところで「な、なんだってー!」みたいなリアクションするのも非常に残念です。正体明らかになる前は、怪しいキャラが怪しい言動してるのを目の当たりにしても主人公たちは「どうしたんだろう」の一言で終わらせますしね。なにそれ、もうちょっと考えようよ気づけるじゃん! みたいな。てゆうかこういうのがバカゲー度を高めてしまっています。他にも細かいところ、特に、味方のフリをしてた敵の黒幕が「自分の悪事を事細かに書き記した日記」を残してたところなんかはヤバかったですね。しかもそれで正体が決定的にバレる。ここでもう「ああ、このゲーム(のストーリー)はアレなんですね」と半ば確信せざるを得なかった。

ただキャラは良いです。正直、クリアできた一番の理由は「キャラクターの魅力」。

ということで、ストーリーはアレなんですけど、戦闘システム周りはシンプルで楽ちん(その分戦略性は激薄)、育成システムやアイテム・装備周辺も難しいことや覚えることは基本的に無い等しく、比較的お手軽なゲームだったかなと。まあ正直、コンシューマで喩えるならば据え置きの大作ではなく携帯機向けのライトな作品、AAAタイトルではなく低価格ダウンロードタイトルという雰囲気ではありましたけど(ただしボリュームだけは異なる)。ガッツリ骨太重厚なガチSRPGを望んでるとがっかりすることこの上ないですが、普段SRPGやらない(あるいは面倒くさいのはヤダ)ので軽いゲームの方が良い、という方には悪くない選択肢なんじゃないかなーと。