それなりに良い雰囲気が出ていて、質と量のある抜きゲー?あるいはギャルゲー?
まずこの作品は、いい意味でも悪い意味でも雰囲気やフレーバーの作品です。なんかオトナっぽい要素を散りばめたギャルゲー、抜きゲーと言っても、罰は当たらないかな? 上司にバーに誘われ、主人公自身が変わりたいと思う、という導入は良いのですが、思わず笑ってしまうくらいトントン拍子で上手くいきます。男児3日会わざればとは言いますが、うだつの上がらない青年が、気がついたら、いつの間にか性格も行動もイケメンになってやがる(実際、続編の2で出てくる男鹿君は、誰だよこいつレベルでイケメンリア充の気の利く兄ちゃんです)。ぶっちゃけご都合主義と言っても間違いではありません。ただ考えようによっては、そもそもこの作品は深く考えず雰囲気を楽しむことを第一に作られた作品にも思えるので、話を進めるのを優先したのかな、と。
全体としてこの作品は、オトナっぽい雰囲気を出すことには成功していると言えます。まずお酒の解説システム。面白い言動とキャラをした良い上司である浦富、同じくバーのマスターの心さんなどのおかげでしょう。後は会社を舞台にして日常が過ぎていくので(まぁそれもある意味ギャルゲっぽいと思う面はあるのですが)、学校・学園を舞台にした一般的なギャルゲとは一線を画しているという点で、新鮮な気持ちでプレイできました。
主人公がバーでヒロインらと会話をしながら、様々な酒を飲み、それらに関する蘊蓄が語られる……という雰囲気作りはよく出来ていますし、話の中で様々な酒が登場するのが、(詳しくない自分には)ちゃんと話の中でそれっぽく関連付けられているなぁと思いました。特に、ルート突入後でも他のヒロインや浦富らがバーにやってきては、会話に加わるというのがちゃんとあるのはポイントが高いです。
以下は、個別ルートについて
各ルート自体への評価は、高い順に。ともえ>アスカ>優里香、 紗夜子>美優
・ともえ:学生時代からの腐れ縁と同窓会に言った辺りから互いに意識し始め、なんやかんやで一線越えて、それでも段々と恋人になっていくシナリオ。髪下ろしたときや、学生時代主人公にだけ夢の話をするシーンや、END後でにやにやしながらバーのカウンターで待っているシーンなど、プレイヤーにこいつ可愛いなと思わせるシーンが多い(でも、仕事で悩んで甘えに来たときも、そんなこと知らねぇとばかりに平然とヤる主人公には笑う)。ジト目・にやにや・腐れ縁・意外と照れ屋で押しに弱い面がある、という良キャラ。
・アスカ:シナリオ及びキャラ共に、面白い・かわいい、と思う水準は超えていた。END後の再会シーンで、他人事のように仮託して語る恋人への「恨み言」を言うというのは、いいシーン。ただ一方でメインヒロイン格のこのキャラが、実は主人公と昔からの知り合いで、かつ未だ学生というのは、はて?と思った瞬間もありました。
・優里香:こちらのシナリオ及びキャラも、水準レベルだと思います。印象に残っているのは、いきなり主人公が彼女の頬に触れるセクハラをして、紗夜子にネタにされるくだり。それ以外にも、実家での料理人としての修行から生じる自己肯定感の低さ、それを乗り越えていく姿、というのは登場人物の年齢が高めのゲームならでは。
・紗夜子:シナリオは水準または普通レベルという印象。付き合い始めるまでの流れが好き。ただパンクロックをやっているときのシーンは、正直出落ちのような気もする。ただ、これまでの仕事と本来自分がやりたい仕事の間で悩み、最後に新たな一歩を踏み出す、というのは描けていたかと。
・美優:共通ルートや他人のルートに出てくるときの方が魅力があるように思える。家が厳格で門限とかにも厳しい、お見合い云々自体は、まぁいいとして(そういうのは学園モノでも結構あり、それを一応オトナの雰囲気を標榜する作品でやるのかという話は置いておく)、肝心の解決の仕方とかがテンプレレベルでしかないという印象。あと、父親の前で自分の性生活の話をいきなり告白しだすというのは(状況が状況とは言え)、少し引いた。
・サブヒロインについて:基本立ち絵がなく、Hシーンに初めて見た目がわかるようになる。サブヒロインたちも少ない出番で魅力があふれるようになっていると思う。(ただ次回作の2では仕様が変わったが)選択肢次第で、普通にヒロインの知らない所で浮気できるというのは賛否あるだろうなぁ、という印象。ただともえルートで出てくるアナウンサーのあたりなどは、まさに一夜だけという雰囲気が出ていて良かったと思う(断る時の会話も結構良かったと思える)。
その一方、自転車修理がきっかけで出会うルームシェアメイトのうち外国人の子の方は、(デレ◯スのラブ◯イカでも参考にしたかな?と思いつつも)、悪い意味で浮いているように思える。
しかしながらサブヒロインたちは基本、行きずりの関係であり割り切った関係である。むしろ彼女たちの存在もこの作品のオトナっぽいフレーバーづくりに貢献しているような気がする(オトナっぽい=一夜だけの関係なのかというのは思わなくはないけれども)。
総じて、気軽にプレイする分には楽しめるし、良い雰囲気を感じられる作品だと思います。