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bitter_snow_fragmentさんの11eyes CrossOverの長文感想

ユーザー
bitter_snow_fragment
ゲーム
11eyes CrossOver
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
75
参照数
286

一言コメント

面白い作品なのだが、無視できない欠点も多い

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まずストーリー、設定については文句なしの作品でしょう。黒騎士たちの真の目的、ラスボスであるリーゼロッテのキャラクターも非常に評価できる点でしょう。主人公である駆についても、戦えない葛藤・幼馴染を守れない葛藤・守られるだけの葛藤等は描かれていましたし、戦闘可能になってからはちゃんと戦ってくれます。

しかしながらこの作品には以下のように決して無視できない欠点もあります。
・PSP版はロードが頻繁に入る。後述のようにただでさえ時間のかかるゲームでこれは痛い上、読み進めるのに支障がでるレベル。
・共通ルートの異様なまでの長さ:攻略ヒロインを選ぶ選択肢が中盤くらいにあるが、それも選んでも共通ルート部分は同じであり、真ルートにいくためには延々とスキップをする必要がある。
・仕方のない部分があるが、演出・SE・CGなどはほぼ似たようなもののため、戦闘は文章をしっかり読まなければ単調に見えたり、同じような展開に見えたりする。
・全員集まるまで赤い夜の度に戦闘があったり、仲間の能力お披露目とかもある。これが悪い方向に働き、序盤から中盤の終わりまで(具体的には草壁 操の登場まで)は、なかなか話が進んでいる印象がない。もっとも各キャラ同士の関係性を掘り下げ、愛着をわかせることにはつながっているし、文字通り仲間となっていく過程、仲間との日常もちゃんと描かれている。
・しかし、この間に主人公の葛藤、ゆかの嫉妬や悩みとかも入る(つまり心理描写等もかなり入る)。このため上記と相まって、益々間延びしている印象を与えてしまっている。
・そして主人公が戦い始めるのと長い長い共通ルートが終わるのがだいたい重なるため、主人公が戦うまでが長すぎて戦い始めるとあっさり終わる?という印象が形成されてしまった。できれば中盤くらいから前線で戦い始めてほしかった。
・各ヒロインのルートも、本当にイベントが変わるくらいなので、中盤のルート分岐選択肢からエンディングまでのけっこう長いストーリーを4キャラ分(ゆか、美鈴、雪子、菊理)見なくてはならない。既読スキップ機能しかないので本当にこれが辛かった。
・黒騎士の中でも出番に差がある(特に大ボスのゲオルギウス)上、主人公たちに各個撃破されていく印象。仕方のない面があるとはいえ、この点はどうにかならなかったか。
・栞ルートがない。栞の出番が少ない

しかしながらこういった無視できない欠点がある一方、評価できる点もまたあるのも事実です。既に書いたことも含む上、箇条書きですがとりわけ、
・序盤のホラー感、絶望感とくに赤い夜に切り替わる瞬間(もっともPSP版ではここで一々ロードが入るためそれが余り宜しくない)
・主題歌やBGMの良さ
・戦い始めてからの主人公の戦闘とアイオンの眼のチートさ加減(できれば徐々にアイオンの眼の能力を引き出していくようにしてほしかった)
・美鈴先輩の戦闘スタイル
・ゆかの病んでいく過程と病み具合
・賢久というイケメン
・リーゼロッテ:正体を表してからの言動等がツボ
・百野栞のキャラ(繰り返しになるが戦闘するのが遅すぎること、意外と出番が少ないことが残念)
・橘 菊理:特に個別ルートの描写も好きだが、真ルートでのヒロインぷりは、ゆかが可哀想になるくらい。
が高評価点です。

※PSP版の追加シナリオについて
・主人公が正直好きではないです。普段の言動等も苦手ですが、とあるルートでの平然と二股宣言は余計悪印象。
・というかこのシナリオぶっちゃけ入れる意味があったのだろうか。典型的な主人公たちの知らないところでとてもスゴイやつがいたんだぜとやるだけの、要はイタい二次創作臭が凄まじい。
・というかなんでこっちに香里ルートや栞ルートがあるんだ