面白い部分ときつい部分が相まって評価するのに難しい作品
まずは各章をかなり大雑把にわけて、敢えて一言で浮かんできた印象を。
序章:良い雰囲気 1章:ホラー描写が良い 2章と3章:狂気 4章以降:種明かしと決着をつけるお話。
2章と3章は初見時も再読時もプレイするのが色々と辛い箇所でした。ある種のIfである3章の分岐等は、安堵できる展開と終わり方ですが、反面あの作品の中でこういう展開に果たして本当に進むことがあり得たのかどうか、と思ったりもしました。
この作品には哲学的な要素が散りばめられている。これについてはスパイスとしてよく利いていますし、物語を面白くしていると思う一方、結局の所何が言いたいのか未だによくわからないなぁと感じることも(もちろん、「幸福に生きよ」とかの趣旨は理解した上で尚そう感じる己がいるのも否定できないという意味です)。これで果たして適切に表現できているかは自信ありませんが、この作品について誰かと語り合うと最大公約数的なことでは一致できても、様々な細かな点では意見が微妙に噛み合わない。そんな感じもまたこの作品にはあるのかな、と。
この作品の終わり方自体、ある種「語り得ぬもの」について一つの明確な答えを出すのではなく、「沈黙」することを提示しています。言い方を変えれば、梯子は投げ捨てなくてはならない。終の空ⅡENDなどもおそらくそういう意図が含まれているのかな、と勝手に想像しました。
多少穿った見方をすれば衒学的にさえ見える作品ですが、物語自体は読ませる作品であり、読み終わった後はやや苦く重いながらも達成感と開放感をもたらす作品です。しかしながら読み手の勝手な意見としては、この作品から言語化出来ない多くのものを得た一方、それを表現することが難しい作品でもあります。本来なら沈黙すべきなのでしょうが、初見時も再読時もこういうモヤモヤを抱えていることを備忘録として綴りたくなった、という次第です。
総じて、この作品は面白い作品であると断言できる一方、自分には合わない部分・読んでて辛い部分もまた多いものでした。評価点と苦手な部分が渾然一体となっているように思えるため、一概にここがきつい・ダメ・合わないとも言えないのがまた難しい(※ここで言う「合わない」「読んでて辛い」とは、例えば私が陵辱描写が苦手だとか、3章のいじめ描写が見てて辛すぎるとか、レイプどころか獣姦はもうマジ無理…スキップしよう、というものを指すのではありません。)。おそらくそう感じる部分は、この作品のテーマ・メッセージ(あるいはそれらから滲み出る・窺える・背後にあるライターすかぢ氏の考えや発想等)なのかもしれませんが、具体的にそれが何か・なぜそう感じたのかを明確に言えるほどの能力が自分にはないのが恨めしい。