ともすれば救いようのない話。しかしそれでも……。
関連小説や他媒体での話を見ても、作品世界は文字通り詰んでいて、最後の最後まで人類には救いなどない……そんな世界観で描かれたのは、ごく短い時間にも拘らず、人の一生すら変えてしまうほどの出来事だろうか。
屑屋にとっては、ゆめみとの出会いがそれだった。彼の人生からすると極めて短い出来事が、その人にとっては文字通り一生を掛けるに値するものとなる。星屋になった彼もまた、多くの人の一生を変えるほどの存在になる。星屋の元々の意思というものが、元々のきっかけの出来事が忘却され、変わっていったとしても、彼は多くのものを残した。
しかしその一方で、作品世界は徹頭徹尾非常である。第三者として作品世界を観察する我々読者からすると、本当に惨いと思うほどに。
それでも、彼らの行動や思いが無意味で無価値でないと思うのは、我々が人間だからであろう。ゆめみが屑屋を庇ったのが、たとえプログラムに導かれたが故だったとしても、彼女が屑屋を守ったことは変わらない。たとえプログラムがきっかけであったとしても、彼女の人の役に立ちたいという願いは本物だった。
勿論、これが人間同士の場合だったとしても同じことだ。無関係な第三者、客観的な観察者からすれば、無意味なことに思えたり、そこまで行かずともどうしてそれがそんなに大切なんだろうと思うことは確かにある。けれど他ならぬ彼らにとってはそれこそが存在理由だったのだし、一生を費やすに相応しいものだった。そう読み手に思わせた時点で、作者の勝ちである。
以上、蛇足であるが語らずにはいられず、思わず。