難しいこと抜きで面白い。
ストーリーに関して、難解な考察ゲーのようではあるが、実際にはそんなことを考えなくても十分に楽しめるゲームなのではないかと思った。主人公の変えられない運命を非常にあっさり（しかし深く）解決するラストで、普通の展開に飽きていた人間としてはこういうのを見たかったんだよなーと満足できる内容だった。世界観の説明も結構しっかりしている。テレパシーを一般人がわかる程度（しかもそれなりの説得性を持つ）の科学的数学的説明をしているのは好印象だった。一般のSF小説ならまだしも、ノベルゲームを作っている人がこういうことができる人はあまりいないのではないかと思ったからだ。SF要素のみならず、後半の恋愛部分についても一人称視点で書くのに最適なシチュエーションをそろえており、深く刺さるものがあった。
それ以外の要素については可もなく不可もなくといった程度。絵は、正直好きになれなかったし、Hシーンは絶望的にエロくない。道中の演出も一見凝っているようでそこまで凄いものには思えなかった。音楽はクラシック曲を転用したものが多く、そりゃあ名曲を使っているんだから当然よくなるわ、と冷めた気分になる。もうちょっとオリジナルなり、フリーなりの曲を使ったほうが良いとは思う。OPはなかなか良いと思ったが、ストーリーほど深くは刺さらなかった。
他所で言われているオマージュについては、知らなかったものもありあまり気にならなかった。だが、この内容でもしオマージュならば、元ネタを知っていた人が楽しめないのは当然かもしれない。