数年ぶりのヒット作
体験版の話題を偶然まとめサイトで見つけ、コンセプトに惹かれてやってみてからこれは当たり作品間違い無しだと迷わず製品版を購入しました。
体験版は抜粋版以外は本編とシナリオが全然違う物だったので、体験版も是非やってみてほしいです。
結論から言うと、製品版を購入して正解だったと思わせる久々の良作品だったと思います。
緻密な世界観と演出、丁寧な伏線の貼り方、回収、謎めいた部分を残すなど絶妙のバランスで成り立っている作品です。
シナリオやキャラクターについても非常によく練られていて上手く纏まっています。
特に、演出的な部分に無駄のない部分や意味のない部分という物が無いところがとても満足の行く物でした。
最近のエロゲーでも既に使い古されているようなネタを上手く組み合わせて、新しい物を作り上げているところも非常に良かったです。
シナリオやキャラ、世界観に関しては既にプレイ済みの方が多く触れているところもあって特に私個人として気になった、というか感心したエロゲーという作品その物のシステムなどを上手く世界観や設定に落とし込んでいるところをネタバレに触れつつ感想書いていきたいと思います。
以下ネタバレ
個人的に、特に感心したというかゲームをプレイし終えた後に感じたのがメタ的な要素を上手に世界観の中に落とし込んでいるところですね。
本編中、やたらとエロゲーなどについてキャラクターが発言するなどメタチックなところが見受けられ(例:エロゲーのキャラクターはなぜ告白後すぐにセックスするのか?それはエロゲーだから、と言ったようなやり取りや。主人公に対してエロゲーの主人公のように、などという発言)があるとおり、かなりシナリオライターさんは従来のエロゲーについての様式美だったり、演出的な部分に触れているところが印象的でした。
個人的には、この手のメタ発言はあまり本来は好きではないのですがこの作品に関してはそれも深読みすると実は意味のあった物だったのかな、と思わせる演出がいくつか見受けられました。
例1:主人公がやたらと登場人物の女性からモテる→テオドール・ベクトルというギフトを所有する人同士、症状の重い者に惹かれるという現象によるもの
例2:抜きゲーの特徴である、女性がやたらとエッチシーンで卑語を使う→登場人物が一人を除いて全員精神病質者(特にギフトが表面化している時やギフトの擬人化キャラの場合が顕著)
例2に関して、そう確信したのが華音のレイプシーンのみ華音はうって変わってそのような露骨な卑語をほぼ使っていない、という事ですね。
勿論、シチュエーション的にレイプだからということもあるかもしれませんが、黒山羊からの他キャラのレイプシーンではやはり他のエッチシーンと同様に犯されているヒロインの卑語はとても目立っています。
唯一、華音がエッチシーンで卑語を使っている場面があるのですがここでは現実の主人公が体が欠損しているのに対して、五体満足になっているので主人公の脳内空間での出来事、つまり華音のイメージも主人公(精神病質者の一人)の主観なのでやはり例2に当てはまる。
というように、エロゲーにおける現実と比較した際の不自然に感じられる演出的、シナリオ的な事情で組み込まれる流れや表現を、ゲームの世界観の中に落とし込んで説明しているあたりがとても細かい作りになっているな、と感心しました。
これに関しては、作中で実際に名言されているわけではないので私の深読みかもしれないのですが、こういった考察の余地が他にも沢山ある、というのがこの作品の非常に魅力的な点だと思っています。
最後に、エロゲーでここまで熱を持って没入しながらプレイできたのは本当に久しぶりでした。
エログロや残虐性のあるシーンもあるので、声を大にしておすすめできないのですが個人的には久しぶりに大きな話題になりそうなヒット作でした、と締めさせていただきたいと思います。