様々な側面で懐かしさを感じさせられる作品だった。常に高揚感を味わえるタイプではないが、破片を残すことなく綺麗にまとめてある点が非常に良かった。
ドット絵と「都市伝説」というワードに惹かれてプレイ。結構大きな会社とコンビを組んだだけあって、発売日前後に宣伝をかなり目撃した。
ゲームシステムはいたってシンプルで、事件のあった現場で調査を行いながら、仮説を立てて関係する都市伝説を特定していくというのが主な流れとなる。このいわゆる捜査パートに対する感想としては「それなりに楽しめた」になるかなと。
現場検証や仮設検証は楽しかったのだが、SNS捜査パートが結構苦痛で、後半になると一話に何回もあったりするのが安直な尺伸ばしに感じてしまい、個人的には好きではなかったかなと。ただ、今の時代らしい斬新なアイデアではあると思う。
前述した仮設検証は昔懐かしいというか、ミステリーモノの作品にあったら嬉しいものなので、もっと増やしてほしかったまである。難易度もかなり優しく、私としてはもう少し意地悪な難易度でも良かったのだが、それを加味しても中々楽しかった。仮説検証に限らずそうだが、幅広い層を意識して作っている節があって、ミステリーが好きなユーザーだけではなく、もっと多くの人を集客しようという気概が感じられた。
といった具合で演出が若干くどいと感じる部分はあったが、ゲームパートはそれなりに楽しむことができたかなと。ドッド絵なのだがかなり現代的というか、そんな不思議な感覚が心地よかった。
次にシナリオについて、本作は全六話が用意されており、それぞれが違う都市伝説と関りを持つ。正直な感想を言えば、全てのお話が面白かったわけではないし、常に高揚感があったわけでもなかった。それでも良かったと感じるのは終盤の作り込みを評価しているからである。これまでのお話が終盤で一つの事実へと繋がっていくのは勿論好きなのだが、それ以上にミステリーを掲げる作品として、最後まで戦い抜いてくれたのが良かった。
本作は都市伝説…つまりはオカルトを各話で取り上げ、それを否定していく作りになっているわけだが、最後に残ったオカルト要素(千里眼など)まで綺麗に否定してくれたのが、私としては嬉しかったなぁと。
この手のミステリーモノでありがちなのが、最後だけ超常現象やファンタジー全開で幕を下ろすパターンだ。その作品がカジュアルな作品であればダメージは少ないのだが、真剣に捜査を重ねてきたタイプだったりするとその絶望感はとてつもない。
また、最終的に歩の勝ち逃げにしてくれた点も、作品的に言えば凄く自然で納得のいくオチだった。それまでのお話でもそうだったが、本作はあくまで解体を主としており、解決にはこだわっていなかった。序盤はそこに味気のなさというか、勿体無さを感じていたりもしたのだが、こういった形でまとめるのであれば大正解であったと私は思う。少なくとも逮捕できなくて悔しいと感じたユーザーは少ないだろう。ただ、そこに関してはまあ、あざみーのキャラクターへの好感度もかなり関係してくるわけだが。…みんな好きになるだろうあんなの。
キャラクターの話で言うと、あざみー、ジャスミンが好きなのは当然として、富入さんが凄く自分好みのキャラクターだった。おネエ口調の強面刑事とか癖が強すぎてそれだけで好きになってしまいそうなのに、実は凄く頼りになる大人で、しかも同僚想いだなんて要素を加えられたら、そりゃもうぞっこんになりますわ。
そういった意味でも六話の車内での会話のシーンは、地味ながら凄く価値のあるものだったように感じる。エピローグで凄く寂しそうな表情を浮かべながら、あざみーについて語っているのもポイントが高い。
あざみーの件に関して触れると、本人がペラペラと喋るのではなく、後語りで正体について語られるのが良いなと。正体に関しては協会に突入した時の五人の反応から察しがついたのだが、出し方が上手かったので温度差を感じることなく読み切ることができた。
終わり方的に続編を作ろうと思えば作れそうではあるが、思った以上に綺麗にまとまっていたので、単作で終わるが吉だと私は思う。
ようこそで始まり、ようこそで終わる。
実に綺麗な作品であった。