可憐な美少女たちが紡ぐ物語は、時に痛みを伴えど、やはり甘く美しいものだったように感じる。あの二人の行く末をいつまでも眺めていたい。
盲目の天才画家「リルヤ」と天真爛漫な少女「ナツカ」を軸に描かれる物語であり、ナツカがリルヤの目と足になることで依頼人の「願い」を叶えていく。読み始めて最初に感じたのはグラフィック面でもなければ、文章でもない。背景音楽の美しさだった。
最初に褒めるところが音楽面なのはどうなのかとも思うが、とにかく場面に合った素敵なメロディを毎度届けてくれたので非常に印象に残った。元々好きな作曲家さんではあったが、こんなに気に入ったのは、ここ数年だとかなり久々だである。
さて、次に物語の内容について触れていくが、まず一貫してよかったと思うのはリルヤとナツカの二人が作り出す、どこまでも純粋で居心地のいい空気感である。一章、二章を読んでいる時間も悪くはなかったが、作品に入り込み始めたのは、やはり二人の馴れ初めについて語られる三章になるかなと。
はじめは厳しく警戒した態度を取っていたリルヤが、ナツカの独特な性格と感性に心を掴まれ、次第に砕けていく様は眺めていて実に気分が良かった。リルヤは好意をはっきりとは口にせず、ナツカもまたそれを求めない関係性がとても素敵。もっと過去の何気ない日常劇なんかを映してくれると尚嬉しかった。
四章以降の内容については、シナリオに関して言えばあまり面白くない方向に舵を切ったなと思ってしまった。振り返って二人の距離を縮めるためのエピソードとして考えるとまあ悪くはないのだが、切り口とテンポはやはり微妙だったように感じる。
ただ、結に関しては結構好きで、いつまでも上手側なリルヤ様に気持ちが弾んだ。その後のキス祭りも…いや本当にどこのゆりとぴあだよと叫びたくもなる。
また、エピローグもかなり好きで一番良かったと思うのが、二人の関係がきちんと一方通行ではないことが示されていた点。
「今の私が変われば、過去の私が変わり、そして、過去が変わると、今も変わる」
たしかにナツカはリルヤがいたことで成長し、変わることができた。彼女はそこに大きな感謝を抱いていたが、リルヤもナツカと出逢うことで変わったのだと。極めつけは「非効率な旅をしてみるのも一興」とか言い出すし、キスの時といい実はガンガン攻めてくるリルヤ様を見て幸せの笑みを浮かべてしまった。
総じて純度の高い百合を見せてくれたので、シナリオとしては物足りなさが残るが、それなりに満たされたかなと。今後の二人の行く末を見届けられないのは残念だが、これからも二人の恋をひっそりと応援していきたい。