システム及び演出が非常に斬新で、序盤から夢中になってプレイし続けた。シナリオについては不満も大いにあるが、久々に科学アドベンチャーに触れられた実感もあった。
もはや懐かしい響きになりつつあった科学アドベンチャーシリーズの新作であり、長きにわたる開発を経てようやく発売してくれた。今回の舞台となるのはコンピューター・VR技術が発展した近未来であり、主人公「高岡歩論」はホワイトハッカーとして活動している。そんな彼がゲームのように何度もやり直せる力を手にし、終末の時を避けるべく世界を書き換えていく。
主人公が手にしたアプリはそのままゲームの根幹を成すシステムとなっていて、プレイヤーが場面に応じてセーブ&ロードをすることでハッキングが成立し、物語が進行していくという作りになっている。サイバー的というか、その目新しいシステムにすぐ心を奪われてしまって、気付けば序盤からのめり込むようにプレイしていた。
また、演出にも力が入っていて、ロードする時の演出は勿論、ADVパートでも漫画風にしていたり、一枚絵に動きを入れることで立ち絵だけでは表現できない臨場感を生み出していた。この独特な演出の数々が本作の大きな魅力だと私は思っている。終盤、主人公が某キャラクターを殴りつけるシーンなんかは、よくぞこの演出にしてくれたなといった感じだ。
で、肝心のシナリオについて語っていくと、序盤~中盤にかけて、具体的にはCicada3301クエストをやっているあたりは面白かった。システムを最大限に活用させ、ミスをすると容赦なくBAD ENDに直行する作りがとても肌に馴染んだのだ。取り返しのつかない状況をいかにして回避するか、それが科学アドベンチャーシリーズの大きな魅力だと私は考える。
モモの正体が明らかになった際の高揚感も大きく、自分の好きなジャンルの話になっていくことを予感すると、先が気になって仕方なくなった。また、「STEINS;GATE 0」のキーとなっていた「アマデウス」の存在が本作でも登場する点も、ファンとしてはまあ嬉しかった。内容的にもかなりSTEINS;GATE 0の要素を取り込んだものだったので、プレイ済みだと一層楽しめるかなと思う。
といった感じで途中までは興奮とわくわくに包まれながらプレイしていたわけだが、終末を回避すべく行動していくパートに突入すると、途端に面白さが失われていく。本作のメインな部分でもあるので、そこが楽しめないわけないだろと!と希望を持って進めていたが、すごく単調なお話になってしまっていて、興奮は冷めるばかりだった。
また、単調な話を見せる裏で話をさらに拡大させていくのも悪手だったなと。結局、回収に間に合わず、無理やり幕を下ろしたような印象を受けた。本作を綺麗にまとめるにはもう五時間ほど必要だったように感じる。これだけ待たせておいてあのようなまくり方では、納得のいかないユーザーも多いだろう。
ただ、最後のポロンとモモのやりとりは非常に良かった。台詞もそうだが、モモが全く悲観していないのが良いなぁと。自分のことは覚えていないけれど、自分のために全てをかけて戦ってくれた、その事実だけは書き換えようのない真実であると、そう言いたげな彼女の表情を見て、私の気持ちも幾分か満たされた。
思い返すと尺不足もそうだが、やはり純粋にシナリオの面白さが足りなかったように感じる。ただ、読み始めはかなり楽しんでプレイすることができたし、懐かしの"彼女"にも再開することができたので、そこまで悪い作品だったとは思わない。また新しい科学アドベンチャーシリーズの制作が始まることを祈っています。