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amaginoboruさんの桜待坂Stories Vol.1の長文感想

ユーザー
amaginoboru
ゲーム
桜待坂Stories Vol.1
ブランド
ivory
得点
80
参照数
275

一言コメント

同じ町を舞台にしたオムニバス作品。ST1はヒロインと仲良くなった後のイチャラブと不安の描写が見事で、甘~いエロゲをお求めの方にはうってつけのエロゲです。一方ST2はソフトSMなエロがメインで、クオリティこそ悪くないものの個別ルートに♂×♂展開があり、間違いなく人を選びます。とはいえDL版でもお値段3K、パッケージ版なら3桁で購入可能な本作。ロープラ1本分と大差ありませんし、ST1目的なら損はしないかと思われます。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

◆ふにぷにシステムについて
昔のエロゲによくあった、画面クリックしてエロを進行させるシステムですね。おっぱいが
揺れたりチンポが前後したりとアニメーションもちらほら。お互いの感度ゲージがあって
いっぱいになると達するあたりもお約束。『SEXFRIEND』のエッチがコマンドからクリックに
置き換わった感じでしょうか。揉んだり引っ張ったりできるあたりは『Mi・da・ra』に
似てるかも。

この手のエロシーンは(出来にもよりますが)最初は楽しめるけど周回が面倒なものですが、
本作はシーンスキップを導入。一度やったシーンは飛ばせるのはメリットですね。ゲームが
短い上にほぼ一本道のため、あまり使い道はないんですけど。

2つのシナリオのうち、ST1は初セックスで難儀するシーンから始まり徐々に慣れていく
展開で。それを疑似体験できる本システムとの相性は良好ですね。『SEXFRIEND』のように
上手くいかない場合でルート分岐するのかは不明。多分しないと思います。
ただ私的には面倒があってもセフレのような、シーンに入れ込める何かが欲しかったなと。
適当に進めても何とかなっちゃうのでは、せっかくのゲームが勿体ないですし。

一方ST2はシナリオとシステムの連動性が薄くあまり意味がないような。普通のエロで
よかった気がします。



◆ST1『フレンド to Sweets』
OPまでは鉄板王道ストーリーを30分で見せられて困惑しました。
春休みのバイトでヒロインと出会う→捨て子犬イベント→飼い主探しで仲良く→見つかって
関係を続けたくて告白もどき→OP、という流れ。思わず「はやっ!」と声にしてました。

ですがそのまま王道とならないのが都築節。告白っぽいものはしたけど恋人ではなく、
かとて友達というには仲が良すぎる二人。関係を曖昧にしたまま体を重ね通い妻をはじめ、
と急接近した二人の甘い生活と関係の発展を書いた作品です。

とはいえ初プレイ時に目に付くのはやはりイチャラブシーンですね。この時代の作品に
しては実に甘々。エッチシーンも行為中だけでなく、直前のじゃれあいや事後のピロートーク
などにも配慮が行き届いており、二人の脳内ピンクな様子がこれでもかとばかり描写されます。
それにヒロインの由紀乃(名前変更可)がとにかく可愛いんですよ。彼女の事情も関係して
常に主人公にべっとりラブラブ。ぽやぽやふにゃ~な性格も愛らしく、さすがとらハシリーズの
生みの親ですね。ニヨニヨ&悶えゴロゴロさせて貰いましたw

そんな感じで序盤から胸焼けシチュの連発なのですが、一方で二人の生活空間を作りあげて
行く過程も見所の一つです。
通い妻というか半同居的な生活が始まるのですが、ご飯は最初コンビニなど出来合いで
済ませていたのが、友人キャラに習い少しずつ自炊をはじめ、パンとサラダ→卵焼き→
シチューと、失敗しつつもステップアップしていくんですよ。

この手の作品だと大抵どちらかが料理上手だったりするのですけど、そうではなく相手を
共に暮らす相手と見て、今後の生活を考えて二人でステップアップしていく描写を大事に
しているんですよね。それが成功時の達成感を共有し、想いの人(この場合家族といっても
いいかも)と一緒に食べる喜びにつながり、一緒に買い物カゴを持ちスーパーを回る
バカップルシーンへと繋げています。

ただの日常生活の中にある楽しさを引き出し、相方と共有する楽しさを覚えさせ、そこから
イチャラブへ。恋人としての描写と共同生活のパートナーとしての描写、両方をバランスよく
書いているから、二人の仲の良さにも説得力があるんです。この辺のシーンを見て初めて
最序盤の矢継ぎ早な展開にも合点がいきました。あぁ見せたかったのはこれだったんだなと。

もちろん二人で共に生きていくとなれば楽しいや幸せばかりではありません。それが終盤の
お話繋がっていくわけですが、正直展開自体は王道で捻りはありません。ですが想い人と
過ごす際のネガティブな要素を的確に抽出し、とてもわかりやすく見せています。

特段難しいことではなく、とても当たり前なこと。しかしエロゲではよりインパクトある
困難に置き換えられがちな、話としては地味だけど大事なこと。実際シーンは地味で、大した
感動に繋がらないかもしれません。ですがそういった描写があるからこそ2人が更に近づいた
ことが理解できますし、プレイヤーもエロゲという架空の出来事ではなく、実経験レベルで
共感ができるため、それまでのイチャラブにも更なる説得力が生まれています。

そうやって二人の生活空間を作り上げ、関係を作り上げ、良いも悪いも共有しあえる間柄。
友達から恋人へ、そして語られはしませんがいずれは家族へ。その第一ステップが書かれた、
過程を大事にしたイチャラブゲー。だからタイトルは『フレンド to Sweets』なのでしょう。



◆花鳥楓月
日本画家の先生が主人公で4ヒロインにルート分岐。三十路半ばの主人公とはこの手の
エロゲにしては珍しいですね。選択肢やマップ移動でルート確定させるオーソドックスな
進行です。一応簡単ながらもバッドエンドあり。

ヒロインたちにSMを強要する夢を見る主人公。何故そのような夢を見るのか~的なお話
なんですけど、結局原因はよくわからずヒロインと結ばれてエンドに。幸せになれたのは
いいとして、夢の中の楓華は何者だったのかわからずじまいでした。日常のシーンが
テンポ良いので退屈することはなかったものの、ちょっと消化不良な感じです。

それより問題は観月ルート。ショタの穴を掘る完全♂×♂展開+ふにぷにシステムです。
コレ、どのターゲット狙って入れたのでしょうか。男の娘なぞが流行りだしたのはつい
最近で、10年前でこの手のシチュはフジョシのお姉様方のみが堪能されていたはずなの
ですが。何も知らないでフルプラを買った方はご愁傷様としかいえない。私個人としては
嫌悪するシチュではありませんが、進んでプレイしたいものでもないので微妙でした。
必然性があるならちゃんと楽しめたのですが、なくても何ら問題ないんですよね、この
シナリオ。

ということでプレイされる方は観月ルートは要注意です。他ルートは消化不良を除けば
普通のエロゲなのでご安心を。
ただ問題もあって、ST1と2両方全ルート消化するとST1のおまけシナリオが出現します。
つまりイチャラブの続きを見るには観月シナリオを越えねばならないわけです。
スキップするにもふにぷにシステムが邪魔しますし、スキップも一度シーンを終わらせ
ないと使えない。必然とプレイヤーは観月君のおにんにんをつつき加えて穴を掘るハメに。

更にこのおまけシナリオ、本編と同じぐらい出来がいいんですよ。由紀乃がおしっこで
恥ずかしがる様とか見れちゃいますし・・・この仕様は本作一番の欠点ですね。スキップを
使わせる、ST1クリアでロック解除するなど、何がしか対応策を入れて欲しかったです。
(ひょっとしたら楓華のみクリアで開放されるのかもわかりませんが)



以上、ST2も悪くないのですが、やはりイチャラブゲーとして見事なST1に目が行きますね。
冒頭に書いたとおりお値段もお手頃ですし、一昔前の塗りが気にならない方であれば
購入はアリかなと。特に鷹月さくら(夏野こおり)さんがお好きな方にオススメ。素敵な時間を
過ごせるかと思います。