レトロゲーマーが渇望した「名作RPGのいいとこ取りをしたゲーム」をツクールで本当に実現させちゃった傑作ですね。特に90年代、ハードだと16bit機~64bit機時代のプレイヤーなら、その完成度に製作者を拝み倒したくなること間違いなし。ただ本当に「昔のRPG」が好きな人向けに作られていて、「話を進めたいのに戦闘が邪魔!」「(力押しで進めて)戦闘が辛い...」「稼ぎがダルい」など、いわゆるJRPGの根幹システムが苦手な方は回避必須。戦ってなんぼのゲームです。(前半はネタバレなし。後半はバレありの所感)
◆概要
異世界から飛ばされてた主人公が「同じ飛ばされた人を勧誘して王国を作るでちー!」
なお話で至ってシンプル。バトルも8人制とやや特殊ですが基本からは外れない正統派な
作り。『ドラゴンクエスト』に代表される日本のロールプレイングゲームそのままな
作品です。
つまり戦って成長して話を進めるゲームなのですが、その細部は名作RPGをリスペクト
したかのような要素が多く見て取れます。ざっと具体例を挙げると
・8人を戦闘中に入れ替えて戦う → ドラゴンクエストIV
・仲間を増やして本拠地を大きくする → 幻想水滸伝シリーズ
・マップごとに強力な中ボスがいてボスも凶悪 → 世界樹の迷宮シリーズ
といった具合。後半出てくる新システムにもやはり著名なRPGのリスペクト要素が
登場しますし、敵や武器防具を見ても名作オマージュがあったりと多岐に渡ります。
「名作のいいとこ取りしたRPGやりてーなぁ」と願った方も多いでしょうが、それを
実際に実現した、ある意味RPGツクールを正しく用いたゲームといえます。
かといって単純にパクるのではなく、ゲームに沿った形で洗練されているのですよね。
例えば仲間要素なら「仲間になっただけ」状態にせずみんなにスポットを当てて
いますし、8人バトルも特定キャラだけで固定されないよう、敵にも味方にも丁寧な
配慮が行き届いています。
◆バトルバランス
ランダム要素を極力排し、工夫して戦術を詰めれば低レベルでも勝てるよう調整されて
います。理不尽な事故死も少なめでその辺へのストレスが心配な方も安心。理不尽のない
歯ごたえあるバトルが、キャラを選ばずに楽しむことができます。
今さらっと述べましたが、戦闘バランスはまさに白眉。同人フリゲーですが、本作
より絶妙なバランスが取られた作品は商用でも滅多に見当たりません。理不尽が少ない
ぶん歯応えは抑えめなものの、それでもいっぱしのRPGよりはよほど難しい、けれど
工夫すればだれでも倒せる見事な調整がなされています。
なので基本的にはセオリー通りの攻略で進めるのがベストですね。というか裏ワザや
抜け道的な邪道は大抵防がれていて、やろうとすれば苦痛になるのではないでしょうか。
実際アプデで6層超強敵の抜け道など、想定外の攻略は調整・削除されているみたい
ですし。無理に我を通せばゲームの妙を損なう事態になりかねません。
アプデによる調整はゲームを単調化させるため、私的にはあまり好ましく思っていません。
ですが本作に限っては制作者が「RPGの何たるか」を熟知されているため、その心配は
杞憂でしたね。バトルごとに彼我戦力の強弱をつけた、波のあるバランスにコントロール
されています。
その辺を「調整されすぎていて遊ばされている」「プレイヤーの介入余地が少ない」と
嫌う方も少なくはないでしょうが、ゲーム側に全てを委ねきることで初めて十全を発揮
するゲームである点はご留意いただければと。徹底的に調整されたバトルバランス。
それが本作のみが持ちうるユニークポイントの一つです。
経験値稼ぎが迅速に行えるのも嬉しいですね。基本として経験値稼ぎせずとも進める
バランスではありますが、その上で迅速かつ楽に稼げるよう配慮されています。ザコ敵の
排除速度が迅速だったり、王国経営パートで経験値をドカンと増やせたりと、システムを
用いることで楽々にレベリングできるのです。
それにダンジョンのドロップアイテムが常に豪華なんですよね。消耗品はもちろん武器
防具がふつーに落ちてますし、その場で覚えられる魔法書特技書もボロボロ出る。
単純にアイテムポイントを回るだけでワクワクできるのですよね。だからダンジョンの
周回もあまり苦になりませんし、経験値も自然と貯まっていきます。
たとえいらないアイテムだとしても、それぞれに付けられたヘルプメッセージが
面白くて不要にはならなかったりして。この辺は『テイルズオブファンタジア』や
『スターオーシャン』など、トライエース製のゲームがリスペクト元でしょうか。
あのノリで終始説明文が用意されているため収集も楽しく行えます。
実をいえば本作、戦闘を通じたキャラクターの成長要素はかなり低めです。レベルを
上げてもパラメータしか変わらず、ユニークスキルは序盤を除いてイベントで習得
します。だから「レベリング=キャラを育てる楽しみ」のカタルシスはほぼ皆無なの
ですよね。
そこで稼ぎが単調になりそうなところを「稼ぎを苦痛に感じさせないシステム」を
徹底的に盛り込むことで回避しています。周回するメリットを明確にし、そのついでで
レベルが上がるように調整しているのです。その捌き具合は見事という他なく、調整
具合を見るためだけにプレイしても楽しめるほどです。
◆シナリオ
非常に緻密なゲーム要素に比べるとやや大味な印象ですね。こまけぇこたぁ気にしない
ザックリな展開が多め。といってもそれは批評空間内、つまりシナリオ重視のエロゲや
ノベルゲーと比べてのレベルです。
もとよりRPGはシナリオだけでお話を楽しむものではありません。バトルや育成、
コミュニティの発展にシナリオを乗せ併せ読むのが常道です。その点本作は王国の
発展要素や難関突破からくる達成感・一体感を存分に享受できるため、ゲーム要素に
乗せる物語としては及第点以上のクオリティといえます。
加えて仲間となるプレイアブルキャラがことごとく掘り下げられていて、物語こそ
シンプルでも王国の面々がいくらでもドラマティックにしてくれます。キャラゲーや
ノベルゲー顔負けレベルの書き込まれ方でみんながみんな愛おしい。不快感を催す
展開もキャラを嫌いになれない事情や他要素でフォローされてますし、登場人物が
皆愛されているのがよく分かります。
RPGなのに演出も大変に丁寧で、マップ上のトップビューと戦闘のフロントビューを
巧みに使いこなしています。「RPGだからこの視点」ではなく「この視点でどんな
演出ができるか」がしっかり考慮されているわけですね。そんな登場人物と演出を
ザックリながらわかりやすいシナリオに乗せた形です。以上を加味すると「キャラゲー
として秀逸なシナリオ」として楽しむのがベストかもしれません。
◆オススメしたい方、できない方
90年代の和製RPGが大好きな人はプレイ必須級です。私達が求めるRPGの完成形と
いっても過言ではありません。ただ難易度に関しては絶妙に難しいだけに、高難易度を
求める方には物足りないし、逆にバトルが苦手な方には難しすぎるレベルです。
なので難しいと感じたら迷わず攻略に頼っていいと思います。単独でクリアするには
(特に次元の塔は)厳しいバランスなので。プレイ済みの方に攻略方法を聞いちゃうのも
アリですね。ただいずれにせよ編成から装備に至るまでの回答はもらえません。答えを
導き出すのはあくまでプレイヤー本人。攻略の妙が損なわれることはありませんので
ご安心を。
一方高難易度スキーの方ですが、歯応えは諦めた方がいいかなと。難易度以外の要素を
楽しむ方向でぜひ。一応レベルを下げられる施設があって簡単に低レベルトライできるの
ですが、その上でなお不満が残るかと思われます。詳しくはネタバレ部分で。
逆にオススメできない方ですが、まずはRPGで名シナリオを見たい方。お話も十分
楽しめると前述しましたが、それはあくまでゲーム要素ありきの代物。急いで進め
お話だけを拾っても満足感は得られないでしょう。むしろ歯応えを煩わしく感じて
「先が見たいのにどうしてこんな難しいんだ。楽に勝たせて」となりそう。
またバトル要素が嫌いな方にもオススメしません。レベリングや稼ぎ周りに丁寧な
配慮がなされてはいるものの、それらはあくまで所用時間や楽しさに対する調整。
「周回やレベリングそのものをやりたくない人」には何の効果もありません。ゼロを
求めているのに0.5や0.3にしかならないのだから当然ですね。
以下ネタバレ満載。未プレイで読めば間違いなく味を損ねますのでご注意を。
本編が終わった時点でこれ書いています。以降もプレイしますが一区切りってことで。
お話よりもキャラの掛け合いが見たくてどんどん進めてた気がします。特に王国会議が
楽しみで発生させるためにシナリオや次元の塔がんばってました。宿屋イベントも
楽しいし、もちろん本編の会話も面白いしで最後まで楽しく遊ばせてもらえました。
ハグレ王国メンバーはホントみんな大好きなんですが、あえてイチオシを上げるなら
かなちゃんことかなづち大明神。シリアス時のイケメンなかなちゃん大好きです。
2章ラストの活躍や4章砂漠での離脱はアツかった。ヅッチーやプリシラも好きなので
妖精王国推しですね。ただプリシラの扱いはもーちょい良くしてあげてほしい...w
とはいえ誰一人と贔屓することなく、LVが凹んだキャラを中心に全員を起用して
いました。道場ブーストで常識的に戦っていればレベルが足りなくなることはないの
ですよね。マリオン戦だって派閥戦を影響力優勢まで持ちこんでいれば適正レベルに
まで上がりますし。寄り道した際の過剰なレベル上昇でむしろ悩んでいたクチです。
◆RPGが苦手な方に対する配慮
RPGというかゲームのお約束を知らないと、楽する手段に気づけず苦労しちゃうの
かなと。「仲間多すぎレベリング大変やん! → 道場ツクルヨー → よっしゃ
ブーストして楽したろ」とか「大ボス苦手だからTPアイテムいっぱい貰ったろ」とか。
王国経営がシナリオフレーバーでなくゲームとして機能しているんですよね。そこに
意識がいくか否かで難易度が大きく変動しそうです。
バトル自体も同様で、バフ積みワンパンや盾キャラの使い回しとか、敵大技をインビンや
ギロチンでいなしたりとか「RPGのお約束」みたいなのを知らないと超苦労しますよね。
特にイリスやマリオン。属性やバステも説明がないし、知らない方は当然味方のスキル
性能も試さないでしょうし、相当に厳しいんじゃないでしょうか。
なのに登場人物はファンシーというかコミカルというか、基本ゆるゆるじゃないですか。
そのアンマッチさが微妙に詐欺といいますか。ざくアクから想像するゲームの空気って
『マール王国の人形姫』『ポポロクロイス物語』的な雰囲気だと思うのですよ。けど実際
プレイしたらバトルバランスは『世界樹の迷宮』でボスにやられてhageみたいなw
もーちょい初心者の手を引いてあげるシステムが充実してたら更に良かったなーとは
思いました。具体的には「ローズマリーの戦闘講座・中級編」がこんな内容であればなと。
・状態異常の特徴と対処法(効果と対策、キュアスペシャルの使い方など)
・状態異常付与の強さ(付与スキルの説明、武器による付与、効果の実体験など)
・属性の説明(弱点と傾向、得意なキャラ、物理と魔法の関係性など)
・TPの貯め方(装備TPチャージ、スキルTPチャージ、被ダメ、アイテムでの回復など)
・バフの積み方(ヅッチーの魔神ライデンIビットタケミナカタ、ジーナの属性武器
禍神ハンマーチャンス、効果の実体験など)
・敵大技のいなし方(インビンシブル、ギロチンスカイ、フェアリーココイチバン、
大防御、心頭滅却、各種アイテムなど)
私達もこの辺は自分で見つけたりゲーム仲間から教えて貰ったりしたものですが、
それが大前提なバランスだなと(特に次元の塔で)思ったので。中でもウズシオーネは
陸だと弱い印象が強いのに実は有無で強ボス難易度が激変するという。罠すぎるw
まぁ「用意してない=自分で見つけてね」という作り手さんの意図なのでしょうね。
◆高難易度を求めるプレイヤーに対して
低レベルクリア用のシステムは用意されているものの、それ目的にあえてプレイする
必要はないかなと思います。というのも本作のバトルは、少なくとも本編+次元の塔は
既存ゲームの難易度を超えたり、あるいは新機軸のバトルが用意されているわけでは
ないからです。
それに本編クリアまでに急いでも50時間はかかる大作です。強敵を目的にそこまで
プレイするのは少々手間がすぎます。ざくアクを普通にプレイして気に入って、2周目で
低レベルを挑戦したい方であれば存分に楽しめると思うのですけどね。
初心者を顧みない私見を述べるなら、ざくアクはランダム要素がない時点で低難易度
だと思います。先手一掃できない相手からのバステハメやボスのランダム高火力を
いなす状況がほとんどないので。全滅してもノーペナルティだから死ぬのも怖くない
ですしね。敵を恐れず安心して遠出冒険できる。
イリスやマリオンにしてもパターンは決まっているから、最低限のメンバーと手順を
組めば絶対負けませんしね。運に任せる部分が一切ない。だから限界まで構成を組んで
「後は神に祈るだけ!」みたいな状況にならない。負ける確率、不利を被る可能性を
いつでもゼロにできるんです。
その対策としてレベル調整スイッチがあるわけですが、所詮は応急的な対策でしかなく、
元から高難易度を意識してデザインされたゲームではありません。そんな本作に歯応え
ある攻略要素を要求するのはちょっと違うのかなと。ゲームに対する自要求の過度な
押し付けは作品の長所、ひいては本質を見失いかねないので。作品のコンセプトを理解
して楽しむのがベターなのかなと思います。
◆音楽について
RPGツクール同梱の曲から他サイトから拝借した音源まで、的確なタイミングで
的確に用いられていたのが印象的です。同じ曲でもピッチを上げ下げして雰囲気を調整
したり、しまいには専用曲まで書き下ろして貰ったりと大変な手の込みようでした。
自前でなくてもここまでできるという見本ですね。
お気に入りは『オリエンタルピアノアタック』。主に8層派閥戦で流れるBGMで、アジアン
テイストとピアノバッキングが印象的なナンバーですが、使われたタイミングと状況が
曲調に実にマッチングしていたなと。
ざくアクの基本的な戦闘形式って無双か一対多なんですよね。敵組織に殴り込むときも
自キャラが敵をなぎ散らしていく形で、形式としては多対多なんですけどその実は無双
風味。逆にボスは強大な相手1体をみんなで打倒する形です。取り巻きがいるケースも
ありますが、やはりRPGとしての形式から踏み出してはいませんでした。
対して派閥戦は、ちゅー納言でんでこ戦や土蜘蛛マロフツ戦は味方8人で相手も多数
なんですよね。戦い方も部下を動かして後ろから支援するでんでこと、自らが率先して
切り込むマロフツとで異なりますが、ユニット一人一人を動かして組織として戦う、
それこそSLGのような雰囲気がRPGのフロントビューで感じ取れました。
そこにきて祭囃子な曲調です。お話自体は多少シリアスもありますが基本的には軽め。
重苦しい展開の多い本編の必死な戦闘とは異なり、勢力争いながらも江戸町喧嘩を
彷彿とさせる明るい雰囲気が、楽曲のやはり軽快なノリとマッチしていました。
(土蜘蛛勢はまぁ、ちょっと悪さがすぎた気もしますけどね)
本作はファンシーなキャラ造形ながらもシナリオが重めで、そのギャップに前半は
戸惑うことも少なくありませんでした。ハグレの迫害に妖精との確執、召喚士協会の
陰謀に己の正義を振り回す者と実に重い。「この愛らしいキャラなら、同じシリアス
でももうちょい軽い方がいいなぁ。」と、特に3章異世界までは感じていました。
その要求に8層は答えてくれました。王国vs別組織という本編と同じ展開を、今まで
とは反対の明るい空気で見せてくれたのが嬉しかった。それもキャラクター8人とボス
ではなく、多対多の雰囲気を引き立てていたのが更に良かった。『オリエンタルピアノ
アタック』はそんな「今までとは違う雰囲気」を表現できていたように思います。
ざくアク専用曲ではなく音楽サイトからDLできる曲らしいので、曲自体の感想と
しては的外れなのですけどね。同じフロントビューの戦闘でも、状況や雰囲気作りで
印象を一変させる手腕は実に見事でした。
◆ラストバトルについて
何が凄いってRPGツクールでここまでの演出を生み出した事ですよね。特別なことを
しなくても、デーリッチ視点から文字だけで伝えることもできたと思うんです。実際
商用を含めた大体のゲームはその形を取っています。みんなの祈りを結集する的な
流れですが『MOTHER2』や『ワイルドアームズ2nd』などが該当ですね。
そこをあえて視覚逆転させ仲間が増えていく様を見せることで、プレイヤーが今まで
見てきた風景を追体験させています。最初は2人だけだったのが、ハピコを助け、
ベロベロスを仲間にして、福ちゃんが来て、ニワカマッスルを勧誘して、ジーナを採用
して、ヤエちゃんと一緒に調査を初めて、雪乃を説得して......。
徐々に仲間が増えていく過程を、散々お世話になった奥義「オープンパンドラ」の
エフェクトと共に1枚絵として見せてくれる。常に一発逆転を生み出し続けた技で
ここまでの、しかし未だ道半ばの、デーリッチの道のりを見せてくれるわけで。
更にいえばタイトル画面ともリンクしてるんですよね。あっちも徐々に仲間が増えて
いって、ゲームを起動するたびに進捗がわかって嬉しくなる。デーリッチからハグレ
王国になる過程が視覚で理解できる。それをラストバトルで、しかもみんな全員の
スキルエフェクト付きで見せてくれる。建国への長い道のりを見続けたプレイヤーに
対するこの上ないご褒美でした。
そうやってラストで感動できるのも、道中が常に丁寧に作られていたからですよね。
ハグレ王国のみんなが躍動感あふれるキャラ作りがされていて、その苦楽をRPGという
ゲームに乗せて、プレイヤーが共に体験できるよう綴られていたからこそです。
ノベルゲーや小説でもテキストを主体に同じような展開は作れます。上述のとおり
同じRPGで演出を入れなくても、テキストやキャラの動きで「そういう展開だ」と認識
させることだってできます。でもゲーム上の楽しかった大変だった経験を、絵という
わかりやすい情報で追体験させてくれたからこそ、ラストバトルであそこまでの感動が
降りてきたのでしょう。
シナリオ・キャラ・ゲームその全てに手を抜かず、真摯に向き合い作り上げた作者から
送られた「thank you for playing」とも取れる最後の作りこみ。それがあのラストバトル
なのでしょう。『ざくざくアクターズ』がツクール製ながら最高峰のRPGと評される
所以はそこにあるのではないかと実感しました。
以下、魔王タワー以降のあれこれを追記。Ver1.32でのプレイです。
◆魔王タワー
次元の塔を更にゲーム寄りにデザインされた、ダンジョン攻略型のコンテンツですね。
ボスはもちろん雑魚も油断すると全滅するよう調整されていて、なかなかに楽しむ
ことができました。ただ本編&次元の塔でシナリオとバトルのバランスが取れていた
のに対し、バトルに大きく偏っていたのは気になりました。
制作ブログを拝見する限り同サークルの旧作「らんだむダンジョン」のシステムや
キャラとのコラボ企画らしく、旧作プレイヤーに対する「ざくアクキャラで遊べる
らんダン」的なコンセプトで作られたみたいで。ファンサービス的な趣で制作された
のでしょうね。
ですが旧作を知らない私にしてみればピンとこない話ですし、またルーチンや攻略の
パターンがセオリーから踏み出していないのですよね。前後衛のコンビネーション、
バステ祭り、属性変更、ザコ戦乱入、取り巻き排除しつつ攻撃etc...ラスボスも純粋な
属性パズルでしたし、レパートリーの少なさは残念でした。あ、ニシアケボノは斬新で
楽しかったです。
本編の戦闘は相応の歯応えこそあったものの、あくまでシナリオ主導のゲームデザイン
でした。代わりに次元の塔がやや高難易度でバランスが取れていたのですが、ここに
きてバトル一辺倒になってしまい、ハグレ王国の発展や異世界イベント、ラスボスの
演出などを好むプレイヤーには苦痛にもなりかねないなと。
それでもマオちゃん撃破でゲームが終わるなら「嫌なら放置」で済んだ話なのです
けどね。本編プレイヤーが最も楽しめる追加コンテンツの登場により、途中までとは
いえタワー攻略が必須になってしまったのが問題。けどそうせざるを得ない事情も
あったわけで難しいですね。水着イベントの項でもう少し触れたいと思います。
以上、ゲーム型RPGとしてバランスは取れていますし周回要素も多数で、クリア後の
コンテンツとしては申し分ありません。が、シナリオで楽しんできた新規プレイヤーは
不満が残りそうです。ただし水着イベントが後に存在していなかったら申し分なしの
エンドコンテンツですね。単品で見れば十二分に良質です。
◆水着イベント
キャラグラが凄まじいことに。本編グラも愛嬌あって私は大好きなんですが、飛躍的に
進化してますよね。女性キャラの水着は健康的にエロく、男性キャラも引き締まって
凛々しく描かれていて。この向上心があるからこそ、ざくアクのような傑作も生みだせる
のでしょうね。
システム面も3話は本編を彷彿とさせる経営型で面白さもそのまま。アプデ直後という
こともありイベント数こそ抑えめでしたが、新機軸の役職システムで十分フォローできて
いたように思います。キャラごとの能力値も「これはちょっと高すぎだろ」「もうちょい
高くてもいいんじゃない?」「知力1www」と楽しませてもらえました。
私的には本編でもう一つ出番の少なかったキャラ、あるいは未消化要素があったキャラの
その後を見られたのが一番嬉しかったです。中でもイリスは本編の空気っぷりを払拭
するかのように大活躍。上手く惹き立てられていました。新キャラのレプトスも本線を
絡めた活躍ぶりで好印象。登場人物を更に好きになれる追加コンテンツでした。
シナリオも本編以上に秀逸でしたね。マクスなんちゃらさんが微妙だったのに対し、
アリウープは外道にも理由のある、歪んだながらも筋の通った良キャラでした。
マリーに「大陸にはいない外道」と評されたメリュジーヌも背景を伺えば一方的に
責めたてられない難しい人物でしたし。唐突さの少ない丁寧なシナリオ運びは本編
以上にクオリティが高かったように思います。
そして会議&発展要素も復活。「ざくアク」一番の特徴ですからね。新しい場所と
既存のメンバーで改めて体験できたのは嬉しいかぎり。仲間探しも一部重要キャラを
除けば好きな順に勧誘できますし、自由度もだいぶ高く調整されていますね。
その重要キャラも終盤まで仲間にできない代わりに、シナリオ面で大活躍させていて
キャラ間のバランスも良好。バトルも上がりすぎたレベルでも楽しめるよう工夫されて
いて、あらゆる面で丁寧に作られた大規模コンテンツでした。
とまぁクオリティ自体は本編と同等以上で文句のつけようもないのですが、最初から
通しでプレイした側からすると、開始できるタイミングには問題があったかなと。
上述のとおり水着イベントは本編の延長線にあるコンテンツであり、エンディングの
直後に遊べて然るべき内容でした。しかし実装順の影響でプレイできるのは魔王タワー
金の門攻略後。推奨レベルも1話の時点で魔王門を攻略できる程度を要求されますし、
大本命の3話に至ってはEXマオの撃破も現実味を帯びてくるラインです。
会議やキャラの掛け合いに惹かれ、一方で次元の塔が乗り気でなかったプレイヤーは
決して少なくはないでしょう。そんな方々とって魔王タワーは正直苦痛だったんじゃ
ないかなと。「らんだむダンジョン」プレイヤー向けのコンテンツで、新参の方には
クリアしないとマオの魅力がわかりづらいのも難点ですね。
いくらレベル上げが楽とはいえ、本編以上に手強い敵相手に100ほど上げろといわれりゃ
及び腰にもなりますし、推奨以下で攻略可能といってもハクスラコンテンツを楽しめ
ない方がバトルで工夫できるとも思えません。建て増し増築がゆえの歪さが結果として
水着コンテンツからユーザを遠ざけてしまったように感じました。
とはいえ実装順からして仕方なくもあるのですよね。魔王タワーまで攻略した人に対し、
今更LV120~30程度のコンテンツを用意しても楽しんでもらえるわけがなく。段階的な
アップデートを踏んでいる作品ですから、既プレイヤーに配慮した設計となるのは
当然のことです。
ざくアクに対するテンションも大幅に異なります。魔王タワーまで遊びつくし、次の
コンテンツを全裸待機していたプレイヤーにとっての水着イベントは、それこそ最高の
内容だったことと想像します。追加要素を渇望していたところへの大ボリュームと
精密な作りこみですからね。さもありなんです。
一方で本編60~80時間をぶっ通しでプレイし、マリオン倒したところへタワーだ
水着だと追加された新規ユーザは飽食気味の方も少なくなさそう。そこへきてシナリオ
よりエンドコンテンツが先立つわけで、歪さはどうしたってぬぐえません。
私個人はハクスラ系RPGも楽しめるクチで、アイテム集めの周回もバッチコイです。
その私をもってして若干テンションが下がったわけで、新参者に対する敷居はちょっと
高いように感じました。水着イベント自体は文句なしの素晴らしい内容なのですけどね。
◆挑戦レベルについて
上では難癖つけてますがめっちゃ楽しみました。水着まで全部終わらせてアイテム
収集を再開しているところです。デーリッチのLVが150強で魔王タワー突入、175で
マオちゃん撃破、225で水着開始、275でアリウープ撃破といった具合です。マオ戦を
除いて高レベルプレイでしたが、十分楽しめたので無問題。
バトルバランスが緻密なゆえ適正レベルでの攻略を意識しがちですが、好きにプレイ
すればいいと思うんですよね。ゲームは楽しんでなんぼですし、無理に自身の筋を通す
よりも遊びたいように遊べばいいのです。それ即ち「ゲームを楽しむ努力」でしょうし。
てことでまずは一直線にマオちゃんへ。適正-50ほどで倒して「これ以上難しいボスは
登場しないな」と判断。「ハグレ王国建国の過程で強くなった国民たち」のイメージを
重視し、水着イベントはやや高めのレベルで取り組みました。逆にタワーの難敵や
超強敵は適正未満で挑んだケースのが多いですね。
とはいえボスルーチンは「まーこんなもんだよねぇ」という印象が強めでした。
イエティ、グーフィ、ハインド、ワニガメ、ジャーヴァス、ホエール団、サネアツ、
マオ、それ以外の順だったんですが、目を惹いたボスは前述のとおりニシアケボノだけ
だったので。適正レベルを踏まえたバランス調整は見事なんですけどね。
以上から低レベルで取り組む意義を見いだせず、水着イベントはシナリオ重視の
高レベルで挑むこととしたわけです。アイテム収集で周回し適正+20程でスタート。
結果育てたキャラの強さを体感し、しかし強すぎない程度で楽しめてこれまた満足
できました。敵や編成によっては全滅もしましたしw
逆に失敗したなぁと感じたのが蛇神様の後編。あれは適正レベルでないと引くか
進むかの駆け引きが楽しめませんね。また感心したのがメリュジーヌ戦やロムレス戦。
限度はありますが、レベル関係なく楽しめるバトルとして上手いなぁと。ただメリュは
RPG苦手な人だとハマりそうな気もして、なんとも難しいものです。
自分語りをして何がいいたいかっていうと、どんなプレイをしても取りこぼすモノは
あるのですよね。レベルを上げれば絶妙な駆け引きを失いますし、適正にまで落とせば
「建国メンバーの強さ」的なシナリオフレーバーが損なわれる。何より育ててきた
キャラ達の努力をフイにする行為ですからね。貧乏神のイベントはその意味で非常に
印象的でした。
だから「適正レベル~」とありますが、それはあくまでバトルを楽しむ適正であって
ゲームを楽しむためのマストではないのですよね。製作者の意図を汲み取るのは大事
ですが、ゲームを遊びきることはそれ以前の前提であり、そして制作者に対して一層
真摯であると私は考えます。
もちろん途中でのギブアップもプレイヤーの楽しさ優先ですからそれもアリです。けど
無理に筋を通して挫折するぐらいなら、好きなように遊びきる方がみんな幸せになれる
と思うのです。
その采配に対し本編は自由度を排することでコントロールされていましたが、
魔王タワー以降は完全にプレイヤーへと委ねられていています。よりシビアとなった
戦闘よりも、絞られたレアドロ率よりも、プレイ時期の判断がRPGとして何より
高難易度であるように感じました。とはいえ、だからこそゲームとして面白かったの
ですけどね。おかげで楽しむための筋道を自身で検討できたわけですから。
◆バトルに関する追加要素
ややレベル高めで攻略したため推測交じりになりますが、難易度は
「魔王タワー>次元の塔≧水着イベント>本編」
的な印象を受けました。水着イベントは敵の強さこそ本編以上ですが、ダンジョン型
コンテンツと比べると緩やかな調整だったかなと。超強敵もイベントバトル風味で倒し
やすくなっていましたし。(それでいて敵の強さを印象付けていたのは見事でした。)
今までに比べて手札が圧倒的に多くそして強いのですよね。いわゆる「最強武器」や
「専用装備」に属するアイテムが手に入り、回復手段も料理長システムで全体蘇生まで
手に入る。耐性装備を含めた入手難易度も緩く、シナリオ主導の形に回帰した形とも
いえます。
とはいえクオリティが下がったのではなく、方向性を転換させたのかなと。具体的
にはシビアなバランスよりキャラ個性を生かした調整になっているなと。新しく実装
された警備隊長・参謀長・運動長と本編までの相性を組み合わせることで、その
メンバーらしい戦い方が楽しめるのです。
例えばジーナとアルフレッドの姉弟コンビ。アンデットをなぎ倒すクエストの際に
アル君を警備隊長に据え、ジーナにスキル書「レーヴァテイン」を覚えさせ命中を多少
フォローすることでアホみたいな殲滅力を叩き出します。範囲40000を開幕連発する
のがめっちゃ気持ちよかったです。
他にはヤエちゃん&ゆきのんのキッカーコンビ。ヤエ参謀長をTP再生装備で固め、
雪乃は会心+やTPブースト関連を。スノーマン誕生!からヤエちゃんにTPパス&弱体
補助させると、再行動を含めたシュート連発モードに入ります。禍神込みでカタナ
2連で16万→ムラサメで19万とか。防御もスノーガーディアンで緊急回避が可能です。
雪乃は警備隊長と運動長どちらも強みがありますね。
あとは地竜ちゃん運動長&ポッコちゃんあたりも楽しかったですね。終盤になりますが
氷パも強烈。セドナIを撒いてアイスバーグからのアイシクルスタンプ→ホワイトブレス
→ジオ追撃がえげつないダメージ出してました。ミアを参謀長で入れて自動蘇生&魔力
2倍からの真ソウルも氷パと相性良さそう。魔王も降ろせますしね。
そんな感じでダメージリミットが外されているわけですが、コンビネーション前提
なんですよね。本編や過去イベで相性の良かったメンバーがシナジーを創出するのは
実に爽快です。しかも大学スキルと異なり、自分でコンボセットを組む必要があるのも
よかったですね。見つける楽しさ、組み上げる楽しさがありました。
突き詰めれば太陽Sクイックほどのダメージは出ませんし、使わなくても既存の戦法で
無理なく勝てます。けれど好きなキャラが大暴れできる環境を用意してくれたのは
やはり嬉しいもので、お気に入りのキャラを生かした戦法を組む楽しさは本編やタワーの
比ではありませんね。シナリオ寄り、キャラ寄りに調整された良質なバトルでした。
◆音楽について(水着イベント)
ジュリア隊長の「これがハグレ王国の戦い方だ!(意訳」からのティムール戦。従来の
楽曲とは全く異なるメタルビートに、テンション爆上がりになった方も多かったのでは。
私はめっちゃアガってました。
その後も始祖竜戦で同ナンバーが流れるわけですが、何度も聴くうちに「あれ、この
ギターやドラムの疾走感はもしや」と思い調べてみたらやはりSSH。この年になって
最高のRPGを埼玉最終兵器のアレンジBGMで楽しめるとは予想だにしませんでした。同じ
世代の方ならこの感無量な想い、わかっていただけるかと。
原曲はmozell氏の「アグナモニタ」。リュウビトの真実に迫るシーンにて使われ、水着
イベント楽曲の多くには同アレンジナンバーが用いられています。水着イベントは総括
すれば始祖竜とリュウビトの物語であり、その暗い過去と現在を表すにふさわしい哀愁
漂う楽曲です。「バトルオブアリウープ」も同様で、悲壮感とラスボス戦の勇壮な
具合が絶妙にブレンドされており好印象でした。
1つの楽曲を多数アレンジし世界観を固めるのは音を用いるメディアの常套手段です。
水着イベントの場合は先に楽曲ありきでリリース後に使用許可を得て使用した違いこそ
ありますが、リュウビトをより深く印象付ける効果として十分な働きをしていたように
思います。曲の質と作者の曲配置が共に秀逸だからこそですね。
その点でいえば、BGMで最も印象に残ったのはおもちゃ工場のBGMですね。イリスが
主役とあって専用バトルBGM「紅い鴉III」が久方ぶりに用いられていましたが、その
運用が実に上手い。ボス3連戦で「紅い鴉→オリエンタルピアノアタック→紅い鴉」と
繋げてイリスカッコイー!で〆ると思いきやまさかのカツエ乱入。BGMもざくアク
らしい流れに合わせ「dance in the dark」へと原点回帰。素晴らしい演出でした。
「dance~」は本編のここ一番でかかるボス戦曲で、印象に残るシーンで多数使われて
いますよね。ゼニヤッタ戦とかイルヴァ戦とか、決戦イベントのメニャ出陣直前とか
それはもう沢山。そんなゲームを代表する曲が追加イベントのここ一番で1回だけ
用いられるわけで、テーマ曲の使いどころをわかっていらっしゃるな!と。
「アグナモニタ」のようなゲームと紐づける楽曲を新展開では意図的に用いず、
しかし過去の展開にあった「その作品らしさ」を思わせる場面で一回だけ使用する
演出ですね。懐かしさと共に「らしさ」がより強調され、同時にエピソードとして
地続きであることを印象付ける、やはりシリーズもの作品ではお決まりの楽曲起用
方法です。
RPGに限った話ではありませんが、どんなに良質なテーマBGMだとしても不用意に乱発
すれば耳が慣れてしまい飽食気味になることもあります。印象付けるにしても出す
タイミング、あるいは出し惜しみする時期を見極めるのは重要です。その出し入れが
的確に行われているからこそ「アグナモニタ」や「dance in the dark」は殊更印象に
残ったのでしょう。
本編で賞賛した「オリエンタルピアノアタック」も同様ですね。ボス曲繋がりで
「紅い鴉III」と連携させたかと思えば、単曲で使われるのは本編と全くに同じ
見せ場、でんでこ戦マロフツ戦のような対神様戦です。水着イベントにおいても
役割がぶれることなく、的確な運用がなされていて嬉しく思いました。
◆シナリオとキャラについて
一部に唐突さや微妙があり「ん?」となった本編に比べ、整合性の取れた読みやすい
物語であったのが印象的です。特に敵役がしっかり敵をしていたのが良かったですね。
マクスなんとかさんは小物&矛盾しまくってましたし、ラスボスも少々特殊だったので。
王道な水着イベントの展開は安心して読み進めることができました。
本線とは別にサブクエストも多数用意されていて、大多数の登場人物が生かされて
いたのもグッド。本編や水着イベント1~2話で活躍したキャラ以外にスポットが当て
られていて、新たな魅力を引き出せていたように思います。イリスはその最たる
キャラの一人ですね。
ほのぼのエピソードというか、後ろ暗さを一切感じさせないシナリオが用意されていた
のも嬉しかった。オナガ族のエピソードは遭遇時こそ「あー例によって民族間の諍いが
起きるのかな」と思わされましたが、蓋を開けてみれば仲良しこよしの温かなお話で
ほっこり。ざくアクキャラでこういうのが読みたかったんですよね。オナガ族と一緒に
「どっ!」するローズマリーが可愛かったです。
実は魔王タワーのお話もお気に入り。攻略コンテンツゆえ会話量は少なめですが、
マオやルフレとハグレ王国の交流がコミカルに書かれていました。途中不穏な流れも
ありましたが魔王様が一蹴してくれましたしね。おまけ&クロスオーバーエピソードに
相応しい、気持ちよく読み終われる物語でした。
キャラ個々だと、やはり水着イベントでスポットの当たった面々が印象的です。本編の
感想で今後を危惧していたプリシラですが、水着イベントで一応の決着を見たように
思います。ヅッチーに袖にされているのは変わりませんが、そこへイリスを上手く
滑り込ませたなと。
ローズマリーにメニャーニャ、プリシラと秀才が天賦の才能に羨望することの多い
お話です(実際は彼女らのスキルも立派な才能で、隣の芝生を色眼鏡で見ている状態
ですが)。しかしマリーはもちろんメニャーニャに比べても、プリシラには羨望の
色が強く現れていた気がします。「キャーヅッチー!」ですしw
妖精王国とトルマリン亭を切り盛りするもヅッチーはうどん食って遊んでるわけで。
デーリッチ以上に自由爛漫でプリシラの努力には目もくれない。そこにきて実力を
認めてくれる天賦の才を持つ存在、ミアやイリスとの交わりを持ったことで、ヅッチー
以外の交友が見えてきたような。
特にイリスは「重油のような海の底から」でこれまでにない優しさを見せましたから。
あれはプリシラでなくても惚れる。次元6層でもそうですが、実力を持つ存在には
他種族でも等しく接するんですよね、イリスは。出し抜こうともしますけど。
重油エピローグでイリスやミアを勧誘するプリシラを見て、ようやくヅッチー以外にも
目を向けるようになって一安心できました。要はミーハーなんですよね、あの娘。自分の
力をより大きな能力を持つ誰かのために使いたい捧げたい、的な。その先としてイリスに
スポットを当てたのはとても自然な流れで上手かった。本編にも見劣りしないエピソード
でした。
他にはミアが印象的。事実上の裏主人公ですね。仲間やヘルに対する葛藤をアリウープの
苦悩と孤独に重ねたのは上手かった。レプトスだけでは届かない説得を、家族や仲間を
再認識した結社の良心であるミアが後押しするんですよね。アリウープ戦で会話が多い
のも納得でした。
ミアもプリシラと同じで、仲間になった後は上手くやっているようで問題が解決して
いなかったキャラですよね。水着イベントを通すことで十全ではないまでも、一つの
答えを出して決着が見たのが嬉しかったです。同時にラスボスへの想い入れも深まり
ましたしね。おばあちゃん可愛い。
他にもジュリアやゼニヤッタなど、終盤に参入したキャラは出番が少ないぶん物語で
いい役貰ってましたよね。その辺のバランス感覚もまた見事だったなと。扱いの難しい
マオを除けばみんなが万遍なく活躍していたと思います。ベル君やヅッチーなどがやや
影薄かったですけど、彼らは本編で大活躍してたので無問題。
とはいえエピソード上で語りきれていないキャラがいるのもまた事実かなと。
ツクールの容量関係でアップデートも残り僅かとのことですが、消化しきれて
いないキャラはゲーム以外でもいいのでフォローして貰えると嬉しいですね。